第八章 学園生活 後編
「起きてください、テネレッツァ様」
メイドに起こされて、朝の準備をする。
「きょうは、確か学園のちょっとした授業と部活動紹介じゃったな。後、勧誘が解禁されるのも今日か。」
「ふふ、テネレッツァなら昨日すでに勧誘されてますよ。」
アリューシアがテネレッツァが朝ごはんを食べているのを見ながらクロノアに言う
この人、なんでもう王城にいるの。朝早すぎじゃない?
そんなことを思いながら、朝食を食べ学園へと向かう。
「えー、今日は1,2時間目は授業をそして3時間目からは、部活動紹介及び園内散策とする。一時間目は数学、二時間目は国学だから忘れないように!以上。」
一時間目は、グラット先生の数学の授業だった。内容は四則演算の応用及び分数につてだった。
二時間目は、ダント先生による、国学の授業だった。内容は文字と片仮名と呼ばれる文字についてだった。
そして三時間目、
「今、渡した紙には、各々の部活動の紹介をしている場所が書いてある。昼からもやっているからじっくりと見てくるといい。では、解散。」
先生の合図でみんな教室を出ていった
「私たちもいきましょうか。」
私は相変わらず、アリューシア様に引っ付いている。まるで姉と恥ずかしがり屋の妹みたいではないか。
「どこから、回ろうか。」
アリューシア様がそう聞いてくる。私は地図のある場所を指さした。
「ん?ここに行きたいの?じゃあまずはそこに行ってみようか。」
そこは、魔法技術研究部だった。
「し、しつれいしまーす。」
魔法技術研究部の部室に着くと、ドアが開けられていたので、恐る恐る入ってみると
「あ、いらっしゃーい。部長―!入部希望者来たよー。しかも二人!」
元気そうな二年生の女子が挨拶をし、その後ろにいる部長らしき人に声をかける。
「お、今年は二人も来たのか。」
そう言って立ち上がりこっちに近づいてきたのは、さっきの女子よりも年上に見える背の高い女性だった。
「まずは自己紹介だね。私は、アローナ・テンペンシア。この学園の三年生で魔法技術研究部の部長をやっているよ。」
「私は、ラーナ・テンペンシア。この学園の二年生で副部長をやってるよ。」
「今日は来てくれてありがとねー。普段ならもう三人いるんだけど、今日は全員用事でいないから。私たちでこの部活について紹介するね。」
すると、部長は椅子に座るように促してきた。
「おっと、私たちも自己紹介をしないと私は、
アラクト・アリューシア・ルーズ・テンペンシア。一年生です。こちらは、テネレッツァ・テンペンシア。」
私は、アリューシア様にならって礼をした。
「静かな子なんだね。ぜひうちに欲しいよ。
では、この部活の紹介を始めようか。」
そういうと、アローナは説明を始めた。
魔法技術研究部
魔法について研究したりする部活。
おもに、テンペンシア王都学園文化芸術祭で自分たちの日ごろの活動や成果を発表したりしている。
部員は5人。
普段は毎日活動しているが各々好きな魔法を研究したり、同じ部の人と共同で新しい魔法の開発をしたりしている。
「まあ、こんなところかな。」
説明を終えたアローナは、紅茶を入れ始めた。
「入部届って、いつから出せるのですか?」
アリューシアがそう聞くと、
「え?今からでも出せるわよ。ラーナ、顧問のタルトナ先生を呼んできて、」
「はーい」
ラーナは、そそくさと先生を呼びに行った。
「じゃあ、その子が声を出せない理由を聞こうかな?」
アローナは、いきなりそんなことを言った。
「そ、それは、、、」
アリューシアは言いにくそうにしている。言ってしまえば、またいじめに遭うかもしれないからだ。
【大丈夫です。話さないとこの部活にも入れなさそうですし】
私がそう書いて見せると
「はあ、わかりました。お話いたしましょう。」
アリューシアはまたあの日のこと話し始めた。
しばらくして
「そんなところかな。」
「何を話していたんだい?」
いきなり後ろから声がかかった。
「うわ、いきなり後ろに立たないでくださいよー。びっくりするじゃないですか。タルトナ先生。」
タルトナ先生は、身長が高めのいろいろと大きい先生に見えた。
「この子たちが、入部希望者?私は、タルトナ・テンペンシア。この学園で、二学年の国学を教えているわ。よろしく。」
そういうタルトナにアリューシアが否定する。
「あ、私は違う部活に入部したいのです。今日はこの子の付き添いできたんです。入部希望はこの子です。」
一応、礼をしておいた。
「ふーん。なるほどね、って。あなた、テネレッツァじゃない?」
いきなり名前を呼ばれてびっくりした。
「あなたが進んでこの部活に入ってくれるなんて最高よ、今年の部活はあなたの取り合いになっているんだから。」
その言葉に私は疑問しか浮かばなかった。なぜ、アリューシア様ではなく私なのだろう。
というか、私より有望な子なんていくらでもいるだろうに。
答えが出ない疑問を頭に浮かべていると
「なんで私がって顔をしているね。それはそうよ。あなたこのテンペンシア連邦国の中で最難関のこの学園に平民が首席でしかも満点合格しているんだから、そりゃあ取り合いにもなるよ。」
その一言にアリューシア様が身を乗り出して言う。
「タルトナ先生、いまの「平民が」と言う言葉は撤回していただきたい。この子に対する侮辱ととられますよ。」
「おっと、すまんな。ついつい出てしまった。こんなことは滅多にないからね。」
「お願いしますよ、ただでさえ、この子の心は繊細なんですから。」
さらっと受けながして言う
「それはそうと、入部届だったね。はい。」
タルトナ先生は、鞄から一枚の紙を取り出して、私に渡した。
「君が、声が出ないということは知っているから安心して。この紙に必要なことを書いて明日私に出してくれ。そんな難しいことは書かなくて大丈夫だから。」
紙には、クラス、名前、入りたい理由などが書いてあった、そして
(親のサイン、)
どうしようもないことが書いてあった。
「あ、タルトナ先生、この子は親がいないのです。どうすれば、」
その一言にタルトナ先生は顔を曇らせた。
「そ、それは、何とかならないかい?親のサインがないと基本的に入れてはいけないんだけど。」
「何を悩むことがあるのじゃ。」
不意に扉の方から聞き覚えのある声がした。
「じょ、女王陛下。」
全員、膝をつき深礼をした、ただ一人テネレッツァを除いて。
「どうした、早く頭を下げなさい。」
タルトナ先生が焦ったように言うが
「構わん、なぜ自分の親に頭を下げる必要があるのかのう」
その一言に。タルトナ、アローナ、ラーナは絶句した。
「どういうことですか、この子は平民では?」
「いまからここで話すことは国家機密だと思って構わん。他にもらせば死刑だと思え。」
そう言うと3人は息をのんだ。そして、クロノア様は事の経緯を語り始めた。バダゴーラのこと、その後の一件など。
「そんなところじゃ、わかったか?」
タルトナ先生が
「わかりました。このことはこの部活だけの秘密にしておきます。」
クロノアは笑顔で頷き
「じゃあ、テネレッツァ。その入部届の紙を貸せ。今この場で書いて出そう。」
席にすわり、ペンを借りて中身を書き始めた。
ちょっとして、
「ふう、こんなもんでいいじゃろう。では、タルトナ、我が娘のことを頼んだぞ。」
「はい、確かに受け取りました。では今日から君は魔法技術研究部の部員だ。」
なんか、内心、めっちゃ喜んでいるようだった。
「私は、ほかに行きたい部活があるのでこれで、ではごきげんよう。テネレッツァ、頑張ってね。」
そう言うと、アリューシアとクロノアは出ていった。すると入れ変わるように
「やっほー。用事終わったから三人来たけど、ってなにこの子。」
入ってきた三人のうち一人が私に抱き着いてくる。
「めっちゃ可愛いんですけど。何この子。」
なにか、滅茶苦茶柔らかいものに挟まれてとても恥ずかしい気持ちになった
「その子は新しい新入部員だよ。」
三人が私の方を見て言う。
「じゃあ、自己紹介を。私は、ヤーラ・テンペンシア。二年生よ。」
「私は、パンドラ・テンペンシア。三年生です。」
そして最後に、最初に私に抱き着いてきた人が
「私は、ファーラン・テンペンシア。二年生だよー。よろしくね、新入りさん。」
私も自己紹介をしなくてはならないのだけど
呪いのせいでしゃべることが出来ないのでどうしたものか、と思っていると
「この子は、テネレッツァ・ローズ・テンペンシア。クロノア王女殿下の一人娘で、ある呪いで声を発することができないの」
みんな、顔を曇らせた。それもそのはずである。いないはずの女王の一人娘がやってきてしかも喋れないのである。
「テネレッツァ、今日はもう帰っていいわよ。
明日ゆっくり部活について話すわ。後、事情は私から話しておく。」
言われるがままそのまま帰ってしまった。
(ふう、今日も疲れたなあ。)
帰ると今日も今日とていろいろあったせいか
用事を済ませるとすぐに寝てしまった。
そして次の日
この日からは普通の授業が始まった。午前中は基本三科、午後からは選択教科の授業が始まった。
(ええっと、私は魔法科と貴族科、商業科だから、)
向かったのは三階の教室である
「よし、全員いるね。では魔法科の授業を始めるわよ。」
エリカ先生の授業が始まった。
最初は、魔法の基礎と詠唱についてだった、
「一学期の間は、この二つを重点的にやっていくからね。」
(この辺りは、ヴェリミーア母さんから、習ったから大丈夫かな。)
板書をしながら授業を受けていると、チャイムが鳴った。
「はい!じゃあ、今日の授業はここまで。しっかり復習しておくように。」
先生の号令で授業を終えると各々次の教室へと向かっていった。
(次の教室は。っと)
次の授業は貴族科なので、教室を探していると不意に声をかけられた
「あら、テネレッツァじゃない。そういえばテネレッツァも貴族科だったわね。じゃあ一緒に行きましょ。」
言われるがままに貴族科の教室へ向かっていった。
貴族科の教室に入ると、やはり中にいるのは貴族ばかりだった。
(うう、めちゃ気まずい。)
それもそうである。テネレッツァは、表向きは平民の子なのだから。さらに声が出ないということもみな知らない。
おどおどしていると、だんだんと視線が集まってきた。それに気が付いたのかアリューシアが私の隣に座り私を隠すようにしてくれた。
「まあまあ、そんなに緊張しなくてもいいわよ。ちゃんと私が助けてあげるから。」
ちょっとすると担当のファマス先生が入ってきた。
「では、貴族科の授業を始める。」
内容は、初歩的な貴族の階級や習わしについてだった。
「このように貴族の階級では、当主が一番偉く子息はその次である。さらにいかに上級貴族の子息と言えども男爵の方が立場としては上なのでそこを間違えないように。」
ファマス先生の授業は当然のことながら初めて聞くことばかりで中々にためになった。
「では、これで授業は終わりとする。今日は先生たちはこれから職員会議があるので6時間目は無しとなる。各自、自分たちの教室に戻って帰る準備をするように。以上」
それだけ言うとファマス先生は教室から出ていった。
「では、私たちも戻りましょうか。」
私はアリューシア様と一緒に教室に戻っていった。
「はーい、みんな席についているな?では帰りの会を始める。」
ダンク先生の合図で帰りの会が始まった。
「今日から本格的に部活動も始まる、各々、部活を怠ることがないように、以上」
先生の号令で帰りの会が終わり、生徒は各々部活動に行ったり、帰ったりしていた。
(じゃあ、部活に行こうかな。)
教室を出て、部室へと向かう。その途中で妙な気配を感じた。
(ん?気のせいかな?)
そして部室にある棟に向かう途中に事件は起きた。
(ぶはっ。)
どこからかいきなり水魔法が飛んできて私に直撃したのだ。
(うう、普通に痛い。)
どこから飛んできたのか全く分からず周りを見渡していると後ろから貴族の子息と思われる集団がやってきた。
「あ~、すまん、すまん。虫が飛んでいるから潰してあげようかと思ったら、平民のガキだったわ。」
その先頭にいる人物に私は見覚えしかなかった。
(クガン。)
ずぶ濡れになっているテネレッツァを見てクガンはあざ笑うようにいう。
「まあ、ゴミはゴミらしく地面に這いつくばっていることだな。はっはっは。」
その周りにいたクラスメイトも同じように笑っている
「クガン様に逆らうからこうなるんだ」
大笑いしながらその集団は去っていった。
(なんでこんなことを、、、)
私はずぶ濡れのまま部室に向かう。
「やっほー。来たねー。ってどうしたの!その恰好。けがもしてるし、それにずぶ濡れじゃない!」
たまたま部室にいた部長のアリーナ様がタオルを持ってきてくれて拭いてくれる。
「と、とりあえず保健室に行きましょう。そこならシャワー室もあるし、着替えもあるわ。」
私は、アリーナ様に連れられて保健室へと向かった。その道中での私に向けられる視線は様々だった。
心配、無関心、嘲笑、どれも私にとっては耐え難かった。
「マリア先生いますか?」
アリーナが勢いよく戸を開け先生の名を叫ぶ。
「もー。そんなに叫ばなくても聞こえてるってば~。」ゆるーい感じで出てきたマリア先生が私を見て固まる。アリーナ様と全く同じ反応である。
「ど、どうしたの!その恰好。とりあえず着替えてシャワーを浴びてきなさい。風邪をひいてしまうわ。」
私はマリア先生の案内で保健室のシャワーを浴びた。体を温めて出てくると、先生の持ってきた保健室の服に着替えた
「よかった、外傷はあまりないようね。服は干しておいてあげるから。明日その服を持って保健室に来てね。」
先生は話しながら私のけがを治してくれる。
すると、扉が勢いよく開かれ、焦った様子のアリューシア様が入ってきた
「テネレッツァ、大丈夫?」
ものすごく心配そうな顔をしている。
どうやら、私がボロボロになっているのを聞いて部活をほっぽり出してきたらしい。
「ごめんなさい。守ってあげられなくて。」
アリューシア様が私に頭を下げて言う。いかに身分が関係ないとはいえ、公爵令嬢が平民に頭を下げているのだから、こんな場面を他の生徒に見られたらまた何を言われるか分からない。
「まあまあ、テネレッツァも困っているし顔をあげなさい。」
マリア先生がアリューシアに顔を上げるように促す。
「それで、誰にやられたの?」
アリューシアとアローナが怒った顔で聞いてくる。
【クガン様達だと思います】
アリューシアはやっぱりといった顔をしている。
「どうしますか?マリア先生」
先生としてはもちろん報告すべきことではあるが、迷っている。
「報告したいところだけど、証拠がないのよねぇ。 「僕はやってません。そいつの虚言では?」 と言われたらそれまでだし。」
どうしたものかと悩んでいると魔法技術研究部の人たちが入ってきた。
「早速やってきたわね。ほんとに最低な奴らだわ」
副部長のラーナが入ってくるなりぶちぎれている。
だがアリューシアだけはどうも腑に落ちない顔をしている。
「どうしてこんなにも早くこんなことをしてくるのでしょう。まだお互いほとんど知らないはずなのに。」
それもそうである。1ヶ月、2ヶ月経った後ならまだしもこんなにもはやくからこんなことをしてくるのはおかしい。
「それは多分、あれのせいだと思う。」
マリア先生が一枚の紙を出して見せた。
そこにはこう書かれていた。
【部活対抗魔法武術祭】
いわゆる各部活・委員会対抗の大会みたいなもので優勝チームには豪華な景品が贈られるほか、王国の貴族及び王族が見に来るのでみんな必死らしい。
「今年は優秀な生徒がたくさん入ったからね。みんな優勝するために必死なのよ。」
マリア先生が困った顔で言う。
「理由はほかにもあるんだけどね。」
そう言いながら魔法技術研究部のみんながこっちを見てくる。
(え?なに?私なにかやった?)
何もわからず困惑しているとアローナが苦笑しながら説明してきた。
「今年はね。テネレッツァ争奪戦だったのよ。」
(え?)
私はその一言に驚きが隠せなかった。
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