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からくり競艇〜ホームレス、魂のフルスロットル〜  作者: 水前寺鯉太郎
第4部:銀河の航跡

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第56話:鏡像の咆哮、住之江の二重螺旋

住之江SG・賞金王トライアル2日目。初日を圧倒的な1着で終えた乾健児の前に、そいつは現れた。

ピットの喧騒が嘘のように静まり返る中、第12レースの待機室に座っていたのは、自分と全く同じ顔、同じ体格、そして同じ**「白銀の紋様」**を右腕に宿した男だった。

「……乾健児。お前が積み上げてきた『銀河』、その輝きは少し眩しすぎる」

男の名は**「零号レイ・ゴー」。マブイ議会が、乾のこれまでの全レースデータ、そして奪取した黒崎龍平の細胞から作り上げた「完璧な乾健児」**。

彼には、ハルのような豊かな感情も、翼への信頼もない。ただ、議会がプログラムした「勝利への最適解」だけが、冷徹なマブイとなって溢れ出していた。


第12レース。乾は1号艇、零号は2号艇。

乾がスロットルを開くと同時に、ハルが機体を通じて異変を察知する。

「おじさん、気をつけて! そいつのマブイ……おじさんと『逆位相』だ。ぶつかったら、二人の力が打ち消し合って、消滅しちゃう!」

零号の属性は**「銀河の鏡像――『反転リバース』」**。

乾が放つエネルギーと全く同じ強さの「負のエネルギー」をぶつけることで、乾の攻撃をすべて無効化し、空間そのものを凍結させる。


「全艇、起動エンゲージ!!」

コンマ02の同時スタート。乾が『銀河・泥龍超越』で第1マークへ突っ込む。しかし、零号は乾の旋回軌道をミリ単位でトレースし、乾が水を蹴る瞬間に、逆回転のマブイ波動を叩き込んだ。

属性変質――『鏡像・零の地平ゼロ・ホライゾン』。

白銀の光と、漆黒の影が激突する。

二つの力が干渉し合い、住之江の水面に巨大な「無響空間」が生まれた。加速が止まり、慣性だけで滑る乾の機艇。

「……っ、ハル! 出力が……吸い取られる! 全く加速しねえ!」

「おじさん……あいつ、僕たちの『心』までコピーしようとしてる……。冷たい……冷たいよ……」


零号の旋回は「完璧」だった。無駄を一切削ぎ落とした、美しくも残酷な最短ルート。

だが、乾は笑った。

(完璧……? 笑わせるな。俺とハルのレースは、いつだって『間違い』だらけだったぜ!)

乾は、ハルのアンドロイドとしての「体温」を、銀河のマブイに無理やり混ぜ合わせた。計算不能なノイズ、予測不能な熱、そして翼への想い。零号の計算式には存在しない、**「不純な人間性」**という名の不協和音。

新境地――『銀河・混沌のプラチナ・カオス』!!

乾の機艇から、制御不能な「不規則な火花」が飛び散る。零号の『反転』は、この不条理な熱を打ち消すことができず、計算エラーを起こして失速。乾はその隙を突き、泥臭く、しかし力強く、零号のサイドを抉り取った。


結果は、乾が1着。零号はコンマ差の2着。

ピットに戻った零号は、自分の震える右腕を見つめ、初めて「疑問」という名の感情を瞳に浮かべた。

「……何故だ。データは私が上回っていた。……お前のマブイには、何が混ざっている?」

「……『重さ』だよ、零号。……俺たちが背負ってきた、泥水の重さだ」

乾はハルを抱きかかえ、黄金のカップへと一歩近づいた。

だが、議会トップの影はまだ動かない。彼らにとって、零号の敗北さえも「データの収集」に過ぎないのだ。

住之江グランプリ、運命の最終予選(3日目)へ。

ハルの肉体が限界を迎えようとする中、乾健児は「自分自身」という最大の壁を超え、真の頂点を目指す。

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