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からくり競艇〜ホームレス、魂のフルスロットル〜  作者: 水前寺鯉太郎
第4部:銀河の航跡

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54/58

第54話:銀河専用機『星屑の泥龍(スターダスト・マッド・ドラゴン)』

1994年11月。賞金王決定戦グランプリを目前に控え、乾健児は住之江の試走ではなく、翼の秘密ガレージに籠もっていた。

常滑での激闘により、これまでの機体『銀鱗・泥龍』は銀河マブイの超高熱と骸の重力攻撃によって、フレームが飴細工のように歪み、修復不能な状態に陥っていた。

「……健児、覚悟はいい? 今度の機体は、あんたの銀河を『流す』ためのもんじゃない。あんたの銀河を『加速』させるための凶器よ」

翼の目の前には、これまでの競艇の常識を覆す、白銀の液体金属のような光沢を放つ新機体が鎮座していた。


翼が黒崎家の全財産と、支倉創の遺した極秘データを注ぎ込んで完成させた最終兵器。

その名は、『銀河・星屑の泥龍プラチナ・スターダスト』。

超伝導マブイ・カウル:銀河マブイの熱を100%推進力に変換する。

ハル・コア・リンク:アンドロイドとなったハルの神経系を直接ボルトオンし、ハルの「感情」をモーターの回転数に同期させる。

属性特性:『超越オーバードライブ』:17,000の制限を一時的に解除し、宇宙の膨張エネルギーを模倣した爆発的な加速を生む。

「……健児、この機体はあんたの命を吸うわ。ハルの心臓(マブイ石)と、あんたの右腕が一つにならない限り、住之江の第1マークでバラバラになる」


アンドロイドとしての肉体を得たハルは、自らの背中にあるインターフェースを見つめた。

「……おじさん。僕、怖くないよ。この機体の一部になれば、僕は本当の意味で、おじさんの『翼』になれるんだから」

ハルがコクピットに深く沈み込み、機体と神経を接続する。

「……リンク、開始。……血管に海が流れてるみたいだ。……おじさん、僕を感じて!」

機体が白銀から淡い琥珀色へと発光し、ガレージ全体が銀河のような重力場に包まれた。乾は震える右腕をステアリングに添えた。その瞬間、ハルの体温と、宇宙の鼓動がダイレクトに脳に流れ込んできた。


深夜のテスト走行。

乾がスロットルを開いた瞬間、機体は「加速」というプロセスを飛び越し、一点から次の点へと「転移」したかのような挙動を見せた。

新形態――『銀河・泥龍超越ギャラクシー・マッド・オーバードライブ』!!

「……っ、速え! 速すぎて景色が白銀に塗りつぶされやがる!」

「おじさん、もっと! もっと僕を燃やして! 12月の住之江で、太陽を追い越すんだ!!」

翼が見守る中、機体は住之江のコンクリートの壁を「光の残像」で削りながら、あり得ない速度で旋回を繰り返した。それはもはやボートではない。銀河を駆ける一筋の流星だった。

5. 終章:黄金の1億へのカウントダウン

「……完成ね。これが、からくり競艇の終着駅」

翼は油まみれの顔で微笑んだ。

だが、その様子をモニター越しに眺める影があった。

マブイ議会の本拠地、住之江。そこには、乾の『銀河』を迎え撃つために、議会が総力を挙げて建造した「もう一つの最終兵器」が完成しつつあった。

「……乾健児。その光、住之江の闇ですべて飲み込んでやろう」

1994年12月。賞金王決定戦。

黄金の1億円と、からくり競艇の未来を懸けた、史上最大の「星の衝突」まで、あと7日。

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