異変
~フェンリル王国・ジンハウス・ジンの書斎〜朝
ジン「2人には農村街付近に迷い込んだサソモンを退治してほしい」
ナナミ「サソモン退治!」
アン「僕とナナミだけで大丈夫でしょうか。心術だってまだ完璧じゃないですし」
ナナ「アンおにいちゃん!ナナミの魔術を見くびってるでしょう!こう見えてもナナおねえちゃんの所で修行しているんだからサソモン退治なんでヘッチャラだよ!」
ジン「ナナミ、あまり軽んじていると予期せぬ出来事に発展する。サソモン退治とはいえ、任務に気を抜いてはいけないぞ」
ナナ「ごめんなさい・・・」
ジン「まぁアンの言うことも一理ある、だが私は2人の実力を見込んで依頼を受けてきた」
アン「ジンさん・・・」
ジン「もし自信がないのなら、私も」
アン「大丈夫です!いけます!」
ナナミ「アンおにいちゃんがナナミの実力を認めてくれたんだ!そうでなくちゃ!」
ジン「では2人とも頼んだぞ」
2人「はい!」
アンとナナミがジンの書斎から出て行った。
ジン「ビリーすまないが後は頼んだ」
ビリーが書斎の物陰から出てきた。
ビリー「何が”実力”を認めているだ」
ジン「実力を認めているのは事実だ。ただ初めてのナナミとアンだけでの任務だからな」
ビリー「心配ってことかまったく・・・お前は過保護だな」
ジン「私よりビリーの方が尾行得意だろう」
ビリー「まぁな」
ジン「報酬と美味しい料理を作って待ってるよ」
ビリー「期待してるぜ」
~フェンリル王国・農村街A〜昼
ナナミ「それでナナミね!ナナお姉ちゃんに新しい魔術を教えてもらったの!」
アン「凄いなナナミは!」
ナナミ「それでそれでね」
ビリーは茂みに潜み、尾行がバレないようにした。
ビリー『盛り上がっているのはいいが、そろそろ任務地だぞ』
アン「ナナミそろそろ静かにしたほうが、パソモンに気付かれる」
ナナミ「あ、そういえばこの辺だったね」
ビリー『お?アンのやつナナミとのお喋りに引きつられて任務の事を忘れていると思ったが、案外しっかりしているな』
早朝空は晴れていたが、陰りを見せだした。
ビリー『今日雲域が怪しいな、雨でも降るのか』
~フェンリル王国・農村街B〜昼
アン「あれは目標のサソモンだよな」
ナナミ「たぶん」
アン「さてサソモンの数は10体ぐらい・・・奇襲するかそれとも正面から・・・」
ナナミ「ナナミに任せて!アンおにいちゃんは下がっていて!」
アン「ナナミちょっと!」
ナナミ「アンおにいちゃん疑ってたでしょ???ナナミ、アンおにいちゃんが思うよりずっと強いんだよ!」
ナナミはサソモンの前に飛び出し大声で叫んだ。
ナナミ「おーい!サソモン!こっちだよ!」
サソモン「●▲■!!!」
サソモンは10体ほどと聞いていたが、後ろから続々と現れた。
アン「聞いていたより多い・・・」
ナナミ「いくよ!エレファントファー!」
水で出来た巨象がサソモンの群れに突進した。
ナナミ「いけいけ!」
エレファントファーに踏まれたサソモンは消滅していった。
サソモン「●■■!?」
アン「すごい・・・」
ナナミ「まだまだいくよ!いけ!エレファントファー!」
ナナミは更に2体目のエレファントファーを生み出し突進させた。
一体さらに一体次々にサソモンは消滅していった。
アン「ナナミすごいよ!」
ナナミ「そうでしょ!そうでしょ!」
エレファントファーの突進をよけ、ナナミに向かってくるサソモンがいた。
アン「だけどナナミ油断しちゃダメだよ」
アン「」
アン「刃断」
アンはナナミに向かってきたサソモンに空気波を放ち消滅させた。
ナナミ「アンお兄ちゃんもすごい!」
茂みからビリーが観察していた。
ビリー『ナナミもアンもまた一段と強くなったな。前回の盗賊撃退の時にしっかりお前らの事を見ていなかったが若い分成長が早いな』
ビリー『それにナナミがまとめて攻撃し、こぼれた分はアンが退治する。咄嗟に出来た陣形とは言え攻守ともに完璧だな』
ビリー『これは俺が助けに入ることもないって・・・雨ついに降り始めたな』
サソモン「!!!」
ナナミ「うそ・・・エレファントファーが消えた???」
ナナミ「へへへ??これがジンお姉ちゃんがいっていた不足の事態?」
ナナミ「でも残念・・・!私の魔術はこれだけじゃないんだから!ウォレット・・・あれ魔素が???」
ビリー『おい・・・何だか様子が変だぞ』
サソモンの数体がナナミに全速力で突っ込む。
アン「ナナミ!!!逃げろ!っくっそ!」
アンは別のサソモンと戦っており、すぐに助けられない状況だった。
ビリー「キスター!・・・って魔素が・・・なんだよ!ナナミ!!!」
ビリーは茂みから飛び出しナナミを助けようとしたが距離的に間に合う距離ではなかった。
サソモン「●▲■!!!」
ナナミ「っ!ナナお姉ちゃん!」
アン「させるか!!!」
ナナミが攻撃される寸前でアンが飛び込み、ナナミをかかえ、サソモンの突進をさけた。
ビリー「アン!」
ナナミ「アンおにいちゃん・・・」
アン「ナナミは僕の後ろにいて」
アンは寸前で戦っていたサソモンを心術で消滅させ、間一髪の所でナナミを助けたのだ。
サソモンは落ちいた木の棒を取り、数体まとめてアンに殴りかかってきた。
アン『心素はナナミを助けるためとはいえ、さっきのサソモンにコントロールせず一気に使ってしまった・・・今から練り直すのは体力が持たない』
アン「・・・こんな状況でも村長に鍛えられた剣術はまだ残っている!!!」
サソモン「●▲■!!!」
アンはサソモンの攻撃をかわし、サソモンを一体、さらに一体切り消滅させた。
しかし最後の一体は惜しくも肩に攻撃があたってしまった。
アン「っく」
パソモン「●▲!」
ビリー「・・・!」
ビリーは自前のナイフでパソモンに攻撃し、消滅させた。
アン「ビリーさん!どうしてここに!」
ビリー「ジンの計らいで念のためにお前たちを見守っていたんだ」
アン「そうだったんですね、ありがとうございます」
アンは膝をつき、ナナミと同じ目線で言った。
アン「ナナミ大丈夫?怪我はない?」
ナナミ「アン・・・おにいちゃん・・・怖かったよ!!!」
ナナミは泣き始めた。
ナナミ「ごめんなさい!ナナミがナナミが油断したばかりに!!!」
アンはナナミの頭を優しく撫でた。
アン「ナナミは何も悪くないよ、それにナナミに怪我無くて良かったよ」
ナナミ「でもアンお兄ちゃんがぁぁ!!」
アン「これぐらい大丈夫だよ!それより雨が酷い・・・風邪をひく前にジンハウスに戻ろう」
ナナミ「うん・・・」
ビリー「・・・俺は少しこの辺を調査して帰る」
アン「分かりました、でも気を付けて下さいね」
ビリー「大丈夫だ、俺にはこれがある」
ビリーはナイフをちらつかせた。
アンとナナミは雨隠れを着てジンハウスに戻った。
~フェンリル王国・ジンハウス・ジンの書斎〜夜
ジン「ナナミは?」
アン「部屋で寝ています、よっぽど怖くて疲れたんだと思います」
ジン「そうか・・・アン、ナナミを守ってくれてありがとう。それとすまなかった」
アン「あやまらないで下さい!ジンさんは何も悪くないです!」
アン「魔素が練れなくなる不測の事態が発生するなんて誰も想像できませんよ!それにこんな現象聞いたことありませんし!」
ジン「あぁ勿論そうだが、2人を危険な目に合わせたのは私の責任だ」
アン「それは・・・確かにそうかもしれないです」
ジン「・・・」
アン「ただジンさんに謝られても僕は納得出来ません」
ジン「アン・・・」
アン「初めての任務ってことでビリーさんに尾行させたり、僕の怪我を手当てしてくれたり、バレット団長に今回の件をすぐに報告して周りに注意喚起させたり、ジンさんは出来る限りの事はしているじゃないですか」
アン「それなのに何で自分を責めるんですか!」
場は沈黙した。
アン「・・・ご、ごめんなさい!ついかっとしてしまって。僕はただジンさんに自分を責めて欲しくなくって」
ジン「ありがとうアン、アンの気持ちも汲み取れないとは隊長しっかりだな」
アン「それも・・・」
ジンは書斎のデスクから立ち上がり、アンの唇を人差し指で抑えた。
ジン「それ以上言わなくてもアンの気持ちは分かっているよ」
ジンは笑顔で言った。
ジン「ありがとうアン」
ジンは人差し指を退けた。
アン「ジンさん・・・」
ジンとアンは他愛ない話をした。
アン「すいませんついつい長居しました、では僕はそろそろ!」
ジン「あぁおやすみ」
アン「おやすみなさい」
アンはジンの書斎から出て行った。
~フェンリル王国・ジンハウス・ジンの書斎〜夜
アンと入れ違いでビリーがジンの書斎を訪れた。
ビリー「えらく長かったな」
ジン「アンは本当にいい子だな・・・助けられたよ」
ビリー「まったくだな・・・お前にそっくりだよ」
ジン「私は・・・そんなこと無いさ」
ジンは一間おいて言った。
ジン「今日は助かったよ、ビリー」
ビリー「何もしていないさ、肝心な時に魔素が練られなかったからな。おそらくナナミと原因は一緒だ。それに魔術を使わないとナナミを助けれる距離におらず、アンに重荷を背負わせちまった・・・本当に最低だったよ」
ジン「・・・」
ビリー「まぁ本題は俺の話より魔素の話だな・・・何故練られなくなったのか」
ジン「・・・そうだな」
ビリー「アンとナナミが帰った後、俺は普通にあの場所で魔素を練る事が出来た。最初は雨が降っていたから練れないと考えたがそんな事は無かった。雨は普通に降ってたしな。つまりは短時間の間だけ練れなかったってことになる」
ビリー「まぁ雨が降っていると魔素が練れなくなるなんて聞いたことないしな」
ジン「流石の考察だなビリー」
ビリー「ありがとよ、でもまだ一つあるぜ」
ビリーは真剣な顔でジンに向かって言った。
ビリー「そしてジン、なによりお前の態度がいけ好かねぇ」
ジン「・・・」
ビリー「何故お前がここまで落ち込む?そして謝る?隊員を危険な目に合わせた隊長の責任からか?それか慈悲を重んじる一個人のジン・オスカーバーンだからか」
ジン「・・・」
ビリー「いや違う、その落ち込み方は何か知っている落ち込みかただ」
ジンは書斎のデスクから立ち、書斎の窓から空を見た。
ジン「やはりビリーには隠し通せないな」
ビリー「何年お前の相棒していると思ってるんだ」
ビリーは呆れながら言った。
ビリー「最近突然黙る事が増えただろう?バレバレだ。」
ジン「流石だな」
少し沈黙が続いた。
ジン「はぁ・・・」
ビリー「言えないか?」
ジン「・・・」
ビリー「夜中にナナが来ていたがそのことか?」
ジン「知っていたのか」
ビリー「俺を誰だと思ってる」
ジンは重い口を開いた。
ジン「・・・時期が来たんだ。」
ビリー「時期???なんのだ?」
ジン「・・・すまない」
ジンは何か切り出そうとしたが、また固く閉ざした。
ビリー「言いたくなければ言わなくていい、だがな・・・」
ビリーはまた真剣な顔で言った。
ビリー「俺はジン小隊を危険に晒す真似は許さねえからな」
ビリー「それはジン、お前を含めてな」
ジン「ごめん・・・ビリー・・・ありがとう」
ビリー「なんかあったらいつでも言ってくれ、俺はお前の相棒だろう」
ビリーはそう言ってジンの書斎を出て行った。
ジンは書斎の椅子に再度腰を掛けた。
ジン「ごめん・・・みんな」
ジンは机に伏せて涙ぐんだ。
月光はジンのデスクにあるムスカリを明るく照らした。




