遅すぎた早計
〜フェンリル王国・ジンハウス〜昼
ジン「アンすまないがナナの所にこれを届けてくれないか」
アン「いいですよ」
ジン「ありがとう助かるよ」
アン「これは本ですか?」
ジン「あぁ、前ナナに借りたんだ。昨日急に返して欲しいと伝書鳩を送ってきたんだ。私が行ければいんだが、どうしても外せない用事があってな」
アン「難しいそうな本ですね!」
ジン「古文書だからな」
アン「古文書って・・・昔の事が書いている本ですよね」
ジン「そうだ、昔のこの地域の事が書いてあるんだ。私も読むのに苦労したよ」
アン「ジンさんが苦労したんなら、僕には読めなさそうですね!」
ジン「あっといけないこんな時間か、すまないが私は宮殿に行ってくるよ」
アン「はいじゃあ僕も」
アン「あっジンさんこの袋も持っていくんじゃないですか?」
ジン「すまない、ありがとう」
アン『なんだこれ赤い服?』
〜フェンリル王国郊外•ナナの家〜昼
アン「ナナさんの家ってこの辺だったよな」
??「あらジンではなくアンが来ましたか」
アン「あっナナさん!」
ナナ「久しぶりですねアン、その感じ心術を教えてもらって自信でもつきましたか」
アン「えっ!どうして分かるんですか?」
ナナ「ナナミから聞いていますし、前回帰る時と表情が変わっていたので」
アン「流石ですね」
ナナ「本を届けてくれたのですね」
アン「はいジンさんに頼まれて返しにきました」
ナナ「ジンも人に頼まずに自分で返しにくればいいものの」
アン「どうしても外せない用事があるらしいです」
ナナ「全くジンときたら・・・それよりアンありがとう」
アン「僕は暇だったので、それよりナナさんはどこかに出かける予定だったんですか?そこに荷物おいていますが」
ナナ「えぇ私はハーブを摘みに行こうと思ってた所だったんです」
アン「あの美味しいハーブティの材料ですか!僕も一緒に行ってもいいですか」
ナナ「あらアンもハーブティが好きになりましたか」
アン「前ナナさんにいただいたハーブティが美味しくて・・・」
ナナ「いいことですね。では一緒に行きましょうか」
アン「はい!」
〜フェンリル王国郊外•フェンリル山・近隣〜昼
アン「ここってフェンリル山ですよね」
ナナ「えぇ、アンはこの辺に来るのは初めてでしたか?」
アン「言われてみれば来た事はありませんね」
ナナ「まぁ何もないですからね」
ナナ「でもこういう所に美味しいハーブが育ってるんですよ、それと」
アン「それと?」
ナナ「魔物も多いですが」
前方からパソモンが10体近く現れた。
アン「パソモン!しかも多い」
パソモンがこちらに向かってくる。
ナナ「行きますよ」
アン「ちょっとナナさん危ないです!」
ナナ「アン心配いりませんよ、何も問題ありません」
そういうとパソモンは全て消滅した。
アン「え?」
ナナ「さぁ行きますよ」
アン「今のって・・・魔術ですか?」
ナナ「えぇ」
アン「どんな魔術なんですか?」
ナナ「それはまぁ秘密です」
アン「秘密ですか・・・残念です」
ナナ「まぁ永年魔術について研究していたら、こんな事も出来る様になっただけです」
アン「流石大魔術師・・・」
〜フェンリル王国郊外•フェンリル山・麓〜昼
ナナ「ありましたよハーブ」
アン「一面がハーブ畑だ!」
ナナ「必要分摘んで帰りましょうか。今日はアンもいますし、少し多めに持って帰れそうですね」
アン「こんなにハーブが多いといい匂いがしますね」
ナナ「帰ったあとのハーブティーのために励みましょう」
ハーブを摘みながらアンはナナに質問した。
アン「思ったんですけども魔術って好き所にワープしたり、このハーブを一瞬で家に持って帰れる魔術ってないんですか?」
ナナ「あらアンはそういう魔術欲しいですか」
アン「僕は・・・魔術の才はないであれなんですけど、ナナさんなら出来るのかなって」
ナナ「私の知る限り魔術はそこまで融通がきかないですね。そんなことが出来るのなら魔術の分野は進化し、全人類は使える様になっていると思います。しかし現状使えるのはごく一部の者のみ。魔術の可能性を世界は知っているんでしょうね」
ナナ「この世界で魔術の必要性は戦いにおいてのみ、魔術がなくとも生活できますからね」
アン「確かに言われて見ればそうですね」
ナナ「心術もまた一緒です、魔術が使えない者が編み出した一つの力。まぁこちらは身体を増強すると共に傷の回復を促進することも出来ますが」
アン「えっ心術ってそんな事も出来るんですか!」
ナナ「心術の中でも高等技術のゆえ出来る者は限られてますが、ジンの師匠は出来ると聞いています」
アン「魔術も心術も深くまで考えたことはなかったですけど、結局戦いの道具なんですね」
ナナ「一言で言うとそうなりますね。ただ魔物から村を守る防衛力に使えたり、進路を妨害する障害物を撤去できたり一概には言えないですがね」
ナナ「この世界がそれを望んでいるかは別の話ですが」
アン「難しいですね」
ナナ「これは失礼しました!若い人と話すことがないので私の考えをついつい話してしまいましたね」
アン「いい勉強になりました!改めてナナさんの凄さを分かりました」
ナナ「照れますね」
ナナ「話している間にもいい感じに摘めまし帰りますか」
アン「そうですね!ハーブティーが楽しみです」
アン「そういえばジンさんが今朝伝書鳩が来たって言っていましたけど、伝書鳩を飼ってるんですか?」
ナナ「いえあれは魔術です、片道切符伝書鳩です」
アン「そういうことは魔術で出来るんですね」
ナナ「魔術の応用と考えていただければいいですよ」
〜フェンリル王国郊外•ナナの家〜夕方
ナナ「アンお待たせしました、出来立てのハーブティーです」
アン「ありがとうございます!あぁ凄くいいにおいです」
ナナ「やはり取り立ては鮮度が違いますから」
アンはハーブティーを飲んだ。
アン「落ち着きます・・・」
ナナ「摘んだかいがありました」
アン「すごく気になっている事があるですけどもナナさんに聞いてもいいですか」
ナナ「どうしたんですか?」
アン「ナナさんとナナミって本当は姉妹じゃないんかって」
ナナ「私たちが姉妹ですか!」
ナナは笑いながら言った。
アン「ナナミはナナさんの事が大好きだし、それぐらい仲良く見えるので」
ナナ「では親子だったらびっくりしますか?」
アン「親子ですか!?」
ナナ「ふふ・・・冗談ですよ」
いつもひょうきんな表情をしているナナが少し強張った表情をした。
ナナ「ナナミは元々捨て子だったんですよ」
アン「えっ」
ナナ「私がフェンリル王国に来て間もないころ森で1人の女の子が佇んでいました。何を聞いても無表情でハイしか言わなくて、でも名前だけはナナミって言ったんですよ。それから私は家に連れて帰りナナミの世話をしました。時間はかかりましたがそのかいあって少しずつ口数も増えてきました」
アン「・・・」
ナナ「しかしナナミは過去の体験を、小さいながらも鮮明に覚えており、日に日に苦しんでいました。そこで魔術で記憶の封印と変更を行いジンの所に預けました。新しい人生を送れるように」
ナナ「ジンの所なら、安心して暮らす事が出来ると考えたので」
アン「その過去の体験って・・・」
ナナ「性的暴行ですね、全く酷い話ですよ」
アン「・・・」
ナナ「でも不思議ですね。時間が経ってナナミに会いにいったのですが、その時少し魔術の話をしたら、ナナミも覚えたいと言い始めて、よく私の所に来るようになりました。私と暮らした記憶も封印したはずなんですが、でも嬉しい話ですよ今でもナナミに慕われて」
アン「ナナミのこと、、、全然知りませんでした」
ナナ「これは私とジンの秘密ですからね」
アン「なんで僕に言ったんですか?」
ナナ「タイミングでしょうか。アンには伝えておいた方がいいと思いまして」
アン「・・・・」
ナナ「ビリーに伝えたら顔に出て大変な事になりますし」
ナナ「今日は難しい話を多くしましたね、とりあえずハーブティを飲んで落ち着きましょうか」
アンとナナはハーブティーを飲んだ。
アン「すみません、その・・・だまってしまって」
ナナ「いいんですよ」
ナナ「知っていて接するか知らずに接するか、それはまた別物です。しかし今のナナミは明るく元気な子。ジン小隊を引っ張るお調子者」
ナナ「そんなナナミに明るく元気でいて欲しいです。このまま変わらず・・・だからアンににもナナミの事を改めてお願いしてもいいですか?」
アン「ナナミ・・・はい!」
ナナ「アン、ありがとう」
アン『ナナミ・・・うん俺が落ち込むのって変だよな!いつもどおりにしていよう!』
アン『それがナナミのためだ』
ナナはいつ開いたか分からない本をパタンと閉じた。
ナナ「なるほど、やはりそういうことだったのですね」
アン「ってもう読んだんですか!」
ナナ「えぇ。造作もないことです」
アン「いつ開いたのかすらも気付かなかったです」
ナナ「気になっていた事があったのでとても満足しました」
ナナ「フェンリル王国に来て数年しか経っていませんが、この古文書は早く読むべきでした」
アン「古文書なんて何処で見つけたんですか?」
ナナ「フェンリル山近くの遺跡で見つけたんです。読む気力がわかず、そのまま放置していたんです」
アン「そうだったんですね」
アンとナナは少し談笑し、アンは帰路についた。
〜フェンリル王国・ジンハウス〜夜
ジン「アン今日はありがとう。今日はアンの好きなビーフシチューだ」
アン「ありがとうございます!」
ビリー「おいおいなんで今日はアンの好物なんだ」
ジン「アンにはナナの所にお使いにいってもらったんだ」
ナナミ「ナナミ!ビーフシチュー大好き!ありがとうアンお兄ちゃん!」
アン「うん!」
〜フェンリル王国・ジンハウス・ジンの自室〜深夜
ジンの自室に伝書鳩が入ってきた。
ジン「やはり来たか」
〜フェンリル王国・ジンハウス裏手〜深夜
月光がジンとナナを照らした。
ジン「来ると思っていたよ」
ナナ「この古文書は早めに読んでおくべきでした、やはり私の早計ではなかったのですね」
ナナ「馬鹿げていると思わないんですか?」
ジン「そうだとしても私の決めたことだ」
ナナ「私は貴方のそういう所好きですし説得はあきらめていますが、他の皆さんがどう思うか分かっていますか」
ジン「そんなこと・・・分かっているさ」
ナナ「分かっている人の言葉だとは思えないのですが」
ジン「・・・・」
ナナ「貴方がそんな状態ですし、ナナミの事はアンに伝えました」
ジン「ありがとうナナ」
ナナ「はっきりいいますが、私は貴方がどうなろうともどうでもいいんです。ただナナミを悲しませたら私は貴方を許さない。それだけは肝に命じていて下さい。」
ジン「あぁ」
ナナ「では・・・ジンさようなら」
ナナは暗闇に消えた。
月光がジンを照らした。
ジン「わたしは、」




