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レッサーシャドウ  作者: 氷山坊主
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山賊の砦~レッサーシャドウの武力

 砦にいる山賊たちを次々に討ち取っていくウェアル。


 砦の修練場に立てこもった連中に対してすぐには仕掛けず、こらえ性がなくなるのを待ち。

 そいつらが扉を開ける瞬間に奪っていた槍を投じてボスの周りにいる幹部格を討ち取る。


 さらに竜爪獣のスルードを使ってロープを張らせ、息巻く山賊が駆けてくるのを転倒させた。

 転がる連中を踏み砕きつつ疾走して山賊の群れに突入する。


 『旋風閃』で強化されたその疾走を止められるものはいなかった。


 「囲めっ!、囲んで押し包め!!」

 「う・・・あっ」


 何とか我に返った山賊が指示をとばす。だが立て続けの奇襲で死がばらまかれたのだ。

 その惨状にほとんどの山賊たちは呆然自失となって動けずにいる。

 そんなカカシ同然の連中をウェアルは短剣で容赦なく切り裂いていった。


 「ヒッ、ヒィッ!?」

 「チィッ!どけっ、腰抜けどもが!」


 頼りにならない連中を押しのけて腕のたちそうな男がレイペアを抜き構える。

 それをウェアルが視界のはしにとらえた時には細剣の切っ先が迫っていた。


 しかし必殺の突きが届くことはない。


 「なっ!このわたべぇっ!?」


 "ギウッ"


 倒れた山賊の亡骸を取っ掛かりにしてスルードが修練場の地面すれすれに霊糸をはっていく。それは蜘蛛の巣というには稚拙すぎて粘着糸すらない。


 だがウェアルが疾走する際はむき出しの地面に伏せて潜む。ウェアルの合図や山賊の駆け足に反応して展開される糸罠。それは少ない明かりでは見つけるのも困難な結界に等しい。


 「助かる、スルード」


 鬼蜘蛛のスルードに感謝の言葉を述べつつ、ウェアルは転倒した山賊剣士の側面に移動してから脇腹を蹴り砕く。その一撃は腕の立つ賊を確実に葬った。


 だが慎重さを重視したその挙動で殺戮の連なりにわずかな間があく。その刹那に怪しい腕輪をつけた男の大音声が響きわたった。


 『てめえぇらぁぁ!死にたくなければ武器を振り続けろぉぉぉ!!!』


 魔力のこめられた声に応じるように腕輪の輝きが増す。間を置かずして山賊どもの瞳に赤いモノが宿り身体の筋肉が膨らんでいった。


 「・・・少しまずいか。スルード避難していろ」


 「・・・ッ」


 相棒に声をかけつつウェアルは短剣をふるい続ける。そうして魔力の声による命令が終わるころには集まった山賊の半数以上の息の根を止めた。


 「なっ!?てめっ!」


 「未知の魔術に様子うかがいでもすると思ったか?貴様らの腕前で目の色が魔術によって変わったら狂戦士に変える暴走系だと当たりをつけるのは簡単だ。

  素人術者には持て余すオモチャだったな」


 口ではそう挑発しつつもウェアルは聴覚によって山賊連中の呼吸を解析し続ける。目の色だけでは魔眼持ちのアンデットまがいを急造する魔術という可能性もあった。

 腕輪の効果が《狂戦士化》だと賭けて、変化中に攻撃できたのは呼吸を聞いていたから。

 魔力頼みで身体強化をした昔の自分に呼吸音が類似していたから勝負に出られたのだ。


 もちろんそんな手の内を明かす理由はないが。


 「貴っ様ぁー。いい気になっていられるのも今のうちだけだぞ!」


 「そうでもない。魔術に頼り切った賊どもの狂戦士なら何とかなるさ」


 "ギャオゥ、ギギッ"


 そう言うウェアルの足下にはスルードがいつの間にか来ていた。その腹の下には魔術の触媒をかき集めていた。それを利用すべくウェアルは『旋風閃』を解除して両手で印を結んでいく。


 『イタチ爪』


 術式を構築して旋風を巻き起こす。その強風はスルードが集めた砂を舞い上がらせ、天井で加速の渦を作ってから狂賊たちに吹きつけた。


 「「「グッ!?」」」


 戦いのみの狂戦士たちに砂の爪が襲いかかる。生存に必須の反射行動を放棄した連中の目は見開かれたままで。急造の戦鬼たちはたちまち視力をつぶされのたうちまわった。

 


 「即席の狂戦士ではこんなものか。あと残ったのは貴様だけ・・・・・」


 そこまで言いかけたウェアルの視界に頭目らしき腕輪をつけた男はいなかった。その視線にはわずかに開いた扉があるのみ。

 そして扉をふさぐように顔をかきむしったり、ウェアルに武器を向けようと努力する山賊連中がいた。


 「これは逃げられたか。念のために備えておいて正解だったな」


 そうつぶやいてウェアルは慎重に残党たちにとどめを刺していく。侮って足下をすくわれるなど具の骨頂だった。



  

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