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レッサーシャドウ  作者: 氷山坊主
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アラクネの腹~失意と狂喜

 アラクネ竜爪獣。竜牙兵の下位互換であるクリーチャーの肝となる発想コンセプトはコストダウンだ。


 〈竜の牙〉の代わりに〈竜の爪〉を材料とする。

 伝説にある戦闘、農作業のどちらもこなすドラゴントゥースウォリアーの頭脳をランクダウンさせて。代替として狩りをするアラクネの思考と、術者の指示を霊糸によって伝導するようにした。


 蜘蛛のモンスターにとって標準装備な糸生成、糸吐きの能力まで除去して、低コスト化を図ったのに。


 「結局、できあがったのは限定的な局地戦でしか使えない子かぁ」


 シャドウの一族にとって有用ではない使い魔と飛爪武具のセット。そして霧葉はその竜爪獣よりもっと使えないシャドウである。

 いくら切り替えよう。姫長様、聖賢の御方様たちはこの失敗で霧葉を罰することは無いと言質をいただいていても。期待に応えられず、資産を浪費したという思いは拭えない。


 「この糸どうしよう」


 消費した資産の中で、霧葉を悩ませているもの。資金、時間に竜爪など無数にあるが。


 最も頭痛の種となっているのはアラクネ竜爪獣に【積まれた霊糸】だ。


 低コスト化を目指しているアラクネ竜爪獣にとって。食事など論外で、糸の生成など高コストの極みである。

 よって“糸の巻き取り・射出機構”のみを腹の内部に収納して。


 鋼糸・霊糸は工房で【製作】されたものを竜爪獣に搭載している。


 〔大丈夫、ダイジョウブ。貴女のネメシスアラクネ(りゅうそうじゅう)が実用化されたら、騎士団にも利益をもたらすんだから〕


 そう告げて霊糸を提供してくださったお館様に瓜二つの妹君。シャドウ一族とはライバル関係とも言える陸戦師団を率いるイセリナ・ルベイリー様の笑顔が怖い。


 「ここで考えても仕方ないか。今は山賊ボスにとどめを刺さないと」


 そう声に出して霧葉は雑念を振り払う。そうして竜爪獣につながる霊糸に魔力を送った。



 


  アジトの隠し通路から脱出すべく、グムスは配下の山賊を囮に一人でその入口を開く仕掛けを作動させた。


 だが岩肌に偽装したその扉がゆっくりと動き始めたとたん。両足に激痛がはしり、グムスの視界は暗転する。


 「ガァァァ!『ガイストアーマー!!』」


 とっさに切り札の死霊魔術を発動させて、身体強化と死霊兵の装甲を併用する。それにより両足の痛みはやわらぐものの、グムスの巨体を支えることはできなかった。


 「なっ、ぎっ、キサマら・・・」


 倒れたグムスに複数の斬撃が叩きつけられる。その正体は考えるまでもなくあの魔女が連れてきた蜘蛛の怪物どもの足蹴りだろう。

 その攻撃を死霊の装甲でグムスはしのぐ。同時に術を連発し続けるのと同様に魔力が削られ消耗を強いられる。そんな防壁の中で修羅場をくぐってきた巨漢は疑問の嵐に翻弄されていた。


 「バカな。こんなコト有るはずがねえっ!」


 背後から攻撃する。二匹でタイミングを合わせて襲いかかる。ここまでは群れる獣、モンスターなら当たり前にこなすだろう

 しかしそれらに加え、ブーツ上の膝裏ひざうらを狙う。グムスに隙ができる脱出路の扉が開く瞬間に襲撃するクリーチャー(つかいま)などいるだろうか?

 術者の女はアジトの奥にいる。この化け物たちは命令で動いているくせに、優秀なハンターなのだ。


 「クソッ!クソッ!クッソガァァ-!!」


 ネクロマンサーの魔法戦士であるグムスはアンデットモンスターを使役しない。その魔術は死霊を糧に基本的な魔術を増強したものだ。

 その最大の理由はアンデットの知能が低い。“人殺し”の指示はこなせるが、素速いモンスターには動きが追いつかず。

 何より手下のヒトと連携させると間抜けをさらし。略奪・暴行が終わる前に殺しを行うとする。


 「見つけた、見つけたぞっ!この蜘蛛どもの頭を奪えば。俺様のアンデットの兵たちを・・・!」


 頭の回るアンデットと鍛えた山賊を連携させた軍を作れる。

 その武力をもってすれば、グムスが闇ギルドの頂点に立つという野望も飛躍的に進むだろう。


 

 「なぁッ!?」


 そんな夢想にひたっていたグムスの右手をナイフのような蜘蛛の脚が貫く。

 地面を這いつくばって移動すべく伸ばした手指。グムスの身体を引っ張るために、装甲のからからわずかに伸ばした手指を容赦なくえぐられる。


 「これだっ!これが俺様が求めていたものだっ!!」


 しかしグムスの頭に激痛に対する怒りはない。あるのは歓喜のみ。

 爪クモを捕らえようと無事な左腕を伸ばし、その肩を攻撃されようとひるむこともなく。


 「よこせっ!ヨこせっ、ヨゴセェ~~~~~!!」


 赤かった血がけがれでにごっていく。それ以上に思考が妄執の狂気に染め上げられていく。


 だが望んだモノを前にしたグムスにとってそれはどうでもいいことであり。


 真の仕掛けに気付くことなく、蜘蛛たちの爪に埋もれていった。

 

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