パニック
緑色のマンションが見えてきたころには、牛乳はぬるくなった。昨日と同じように静かな公園のベンチへ直進しようとしたら、先客がいることに気づいた。それも、人間じゃない。
「い、犬ぅっ!?」
犬に首輪がない。飼い主らしき人影もない。野良犬だ。
瞬時に恐怖が全身をめぐる。
野良犬は長い前足で砂場を掘っていて、こちらを見てない。私は一目散にマンションの植え込みに隠れて縮こまった。
なんで野良犬がいるの!?昨日はいなかったのに!?どうして今日、ここへ来ようなんて考えたの!?しかも手足の長い大きな犬だなんて!怖すぎる!!砂場を掘って何してたんだろう?遊んでるのかな?もしかして、何か埋めてた?まるは?
ハッとした。そうだ、まるの姿をまだ確認してない。
「っ、やだっ、もしかして……」
そっと、植え込みから顔を半分だけ出してのぞく。
野良犬は砂掘りを続けている。犬のまわりにまるの姿はない。ベンチの下にトマト柄のダンボールがあった。たぶん、まるは今もあの中にいるんだろう。犬の気配を感じた賢いまるは、あの中で身動きせず、息をひそめているに違いない。
大丈夫だよね?怖がってるかな?あぁ、どうか、まるが無事でありますように。野良犬がまるに気づかずどこかへ去ってくれるよう、ひたすら願う。私はじっと待った。それしかできない。
でも、どうしよう。野良犬が砂場を出て、クンクンと地面のニオイを嗅いでうろつき始めた。
ダメ!そっちへ行かないで!ベンチの方へ、一歩一歩近づく野良犬に、心で怒鳴っても届かない。
野良犬はベンチにたどりついてしまった。
どうしよう、どうしよう!?私に何かできる?こういう時、どうしたらいいの?わからない。私、何もできない。
つづく




