悩む
翌日、有梨香は病院へ行くため朝から学校を休んだ。私は授業なんて上の空、黒板より有梨香の座席ばかり見つめて悩んだ。
キャットフードは昨日から私のバッグに納まったままなので、まるに会いに行く準備は整ってしまっている。だけど、いまだに決心がつかない。
まるのハゲた頭を撫でて表情をやわらげていた有梨香と、有梨香に撫でられ気持ちよさそうに目を細めて小さく鳴いていたまるが、私の頭の中を何度も埋めつくす。私にも、誰かを喜ばせる能力があればいいのに。
放課後はあっという間にやってきた。ゆっくりと帰り仕度をする。歩幅を狭くして教室を出るまで時間をかける。一段一段、慎重に階段を降りる。昇降口では丁寧に靴を履く。
校門を出ると、私の足は自然と止まった。帰宅するなら左、公園へ行くなら右へ歩き出さなければならない。
どっちに行けばいいんだろう?公園までの距離がやたらと遠く感じる。私が会いに行くより、1日食事できない方がまるにとって幸せなんじゃないかって思う。それでも、左へ進もうとする足は持ちあがらない。いつまでもここに立っていても下校する人の邪魔になる。
「……でも、ほら……とりあえず、コンビニに行けるかな?……うん、コンビニは牛乳以外も売ってるんだし……」
ちょうどシャーペンの芯がなくなりそうだったことを思い出した。雑誌の立ち読みもできるし、新しい商品を探す楽しみもある。コンビニは何でもあるんだから。
自分の足に話しかけると、右の道へのろのろと動き出した。
つづく




