まるのお母さん
食事するまるを眺めていたら、ふと違和感を覚えた。
「そういえば、親猫は一緒にいないの?」
「まるしか見てないわ。この辺りカラスや野良犬がいるらしくて襲われたのかもしれない」
「そうなんだ……」
「あたしが学校にいる間にまるも襲われたらって思うと心配でさ、授業に集中できないんだよね」
「有梨香がまるのお母さんみたいだね」
「そんな感じ。だからついキャットフードも買っちゃってさ」
そうか、もしかしたら有梨香が元気なかった理由は、骨折して腕が使えなくて不便だからっていうよりも、まるのことが心配でたまらなかったからだったんだ。
まるを優しく見守る有梨香は、まるの頭をもうひと撫でしてからキャットフードの大きな袋をバッグから取り出した。しゃがんでいた私のひざ上にそれを乗せる。
「明日は沙弓がまるのお母さんやってね」
「え……えぇっ!?ど、どういうこと!?」
「あたし、明日は病院行くからここに寄れないの」
「……」
「今日やったみたいにミルクとキャットフードをあげに来てくれたらいいから」
私は判断を間違えるから、間違いのないように、提案されたら何でも従おうと思ってる。でも、今は簡単にうなずいていいんだろうか?
私にまるの世話ができるとは思えない。まるを食中毒にさせて苦しめるかもしれないし、私を嫌がるまるがこのダンボールから飛び出して逃げていくかもしれない。でも、できないって断れば有梨香を悲しませるかもしれない。
ど、どうしよう。有梨香かまるか、私はどっちを傷つけるんだろう?
つづく




