第43話:枯れ社のお狐様
町全体が分厚い暗闇に沈んでいた。街灯は完全に消え、冷蔵庫は霜が溶けて水浸しになり、町中の路地から住民の悲鳴が響き渡っていた。
ハルトは木剣のアエリアを肩に担ぎ、50kgのコールの鉄の足枷を引きずり、太った猫のジビーを小脇に抱え、パタパタと飛ぶ札ノートのオルロと共に、峠の頂上にある水力発電ダムのエリアへと真っ直ぐに向かった。
中央制御室に足を踏み入れた途端、目の前の光景にハルトはあやうく後ろにひっくり返りそうになった:
背が低く、緑色の肌で、背中に亀の甲羅を背負い、頭頂部には特徴的な水を入れた皿を乗せた河童の水怪が、額に手ぬぐいを巻いていた。やつは所長の回転椅子に堂々と座り、片手に冷やしたキュウリスムージーを持ち、もう片方の手でメインブレーカーをガチャン!と勢いよく下げたのだ!
— 「山の麓の村人全員に告ぐ!今すぐ『極上味噌ダレ付き・冷やし新鮮キュウリ』を500kg、制御ステーションに献上しろ!5分遅れたら、電波塔の電源も落としてネットサーフィンできなくしてやるぞ!」 — 河童の声が放送用マイクを通して大音量で響き渡った。
ハルトは風雷の札をサッと引き抜き、木剣のアエリアを制御コンソールにバーン!と叩きつけた:
— 「ダムの番人のくせに、キュウリの恐喝に手を染めるばかりか、住民の通信電波まで切るとは!亀の甲羅を引っぺがして灰皿にしてやろうか、このバケモノ?!」
河童はビクッとしたが、ハルトが木剣を担いで太った猫を抱えたただの18歳のガキだと分かると、即座に挑戦的な冷笑を浮かべた:
— 「ふん!乳臭い陰陽師のガキめ!ダムの制御権を取り戻したいのか?河童一族の暗黙の掟に従え:相撲の土俵に上がれ!もし俺を押し倒せたら、ブレーカーを戻してやる!」
— 「やってやるよ!ハゲ頭のバケモノなんざ怖くねえよ!」 — ハルトは羽織の袖をまくり、制御室の真ん中にある砂の円(土俵)に足を踏み入れた。
ハルトの脳は超光速で計算した。彼はチームに囁いた:
— 「伝説によれば、河童の唯一の弱点は頭の上の水皿だ。皿の水を全部こぼさせれば、即座に霊力を失って降参するはずだ。作戦はこうだ:ジビーがキュウリを投げて囮にし、俺がコールの足枷で踏ん張りを利かせ、アエリアで横薙ぎに斬りつけて皿を傾ける!」
— 「了解!」 — 全員が声を揃えた。
世紀の相撲の取り組みが始まった!
— 「はっけよい……のこった!」
河童は咆哮を上げ、装甲ブルドーザーのように突進してきた。
ジビーは機転を利かせ、供物台から新鮮なキュウリをくわえ、河童の背後にビューンと投げた。食欲で目がくらんだバケモノは、エサに食いつこうと振り返って一瞬動きを止めた。
— 「今がチャンスだ!」
ハルトは咆哮を上げ、霊力を練って空中に跳び上がり、超クールな両足蹴り(ドロップキック)で河童の水皿を傾けようとした。不運なことに、彼は片足に50kgのコールの鉄の足枷が引きずり下ろしていることをすっかり忘れていたのだ!
アンバランスな重量により、ハルトは完全にバランスを崩した。河童の頭を蹴る代わりに、ハルトの体全体がヘリコプターのプロペラのようにぐるぐると回転し、自由落下して……ダムの「緊急放水レバー(最大レベル)」に真っ直ぐにお尻から激突したのだ!
ガチャン……ゴォォォォォ!
ダム決壊の警報サイレンが谷中に耳をつんざくように鳴り響いた!巨大な放水ゲートが勢いよく開き、最大圧力の何百万立方メートルもの水が噴出し、夜闇を引き裂いた!
渦巻く水流の圧力が河童を吹き飛ばして宙に浮かせ、頭の皿の水を完全に弾き飛ばした。バケモノは空気が抜けた風船のようにしぼみ、床にへばりついて両手を挙げて降伏した:
— 「許して……許してください!頭の水が枯れました!降参します!もう二度とやりません!」
しかし、本当の災害はまだ始まったばかりだった!
ハルトの戦犯行為による巨大な放水柱は、町の下流へと真っ直ぐに押し寄せた。停電事故の危機は防げたものの、濁流は村長の5ヘクタールの大根畑を水没させ、近所の物干し台を吹き飛ばし、泥水が公共の温泉浴場へと流れ込んだのだ!
翌朝、町全体の電灯は再び明るく輝いていた。河童は大人しく封印の首輪をつけられ、罪滅ぼしのために毎日発電タービンの水車を漕がされることになった。
しかし、土御門神社の境内の真ん中で、ハルトは地面にへたり込み、両手で顔を覆って、虚空に浮かび上がった通知ボードを見ながら涙も出ないほど泣いていた:
【水力発電ダム事故処理結果報告】
任務:河童を調伏し、電力網を復旧する → 完了。
稲荷様からの前払い報酬:+10,000 カルマ。
外的損害の罰金: 水没した5ヘクタールの大根畑の賠償:-4,000 カルマ。温泉浴場の泥の撤去のためのショベルカーのレンタル費用:-7,000 カルマ。
本件の財務総括: マイナス -1,000 カルマ!
(システムが自動的に資金を控除します……現在の総資産:59,500 カルマ)
— 「ああああ!任務をやってるのに、お金がどんどん減っていくってどういうことだよぉぉぉ?!」 — ハルトは悲惨な声で絶叫した。
— 「誰がカッコつけて飛び跳ねて、放水レバーの上に座れって言ったのよ!」 — 剣のアエリアが腹を抱えて笑った。
— 「俺の足枷は重いって言ったのに、お前が飛びたがるからだろ!」 — 鉄の足枷の中からコールが文句を言った。
仲間たちがギャーギャーと口喧嘩をしている中、オルロの札ノートが突然、奇妙な灰色の光を放った。紙のページが自動的にゆっくりとめくられ、そこにはもう、くだらない借金の数字はなく、代わりに悲しげで異常に停滞した霊力回路の図が浮かび上がった。
ハルトは動きを止め、見上げた:
— 「オルロ……どうした?」
オルロの声が突然低くなり、普段とは違う深刻な口調を帯びていた:
— 「ハルト……システムが今、山の裏手にある彼岸花の森で、完全に消えかかっている枯渇した霊気をスキャンした。そこには、人間に100年近く忘れ去られた荒れ果てた古い神社がある」
— 「また妖怪が悪さをしてるのか?」 — ハルトは目を細めて尋ねた。
— 「いや……」 — オルロは静かにため息をついた: — 「霊的なデータによれば……そこには『白狐(三尾の白狐)』がいる。彼女は仕事をサボっているわけでも、供え物を横領しているわけでもない。この100年間、彼女は最後の残されたわずかな生命力を使って、ある定命の者の魂を庇護し続けているんだ……そして、彼女の霊力は永遠に消え去ろうとしている」
神社の境内の空間が、突然静寂に包まれた。ハルトはいつものふざけた表情を引っ込め、木剣のアエリアの柄を固く握りしめ、霧に包まれた山の方へと視線を向けた……




