第16話:トートとシヴァ、そしてナイルの歴史の灰
「RETURN: EDEN」をお読みいただきありがとうございます!これは私が初めて世に送り出す物語です。笑いと、ちょっとした驚きをお届けできれば嬉しいです。どうぞお楽しみください!
オリンのグループが輪廻のポータルに落ちた後、エデンの間は徐々に人がいなくなった。 運命の展望台では、知識の神トートがまだ羊皮紙の本をパラパラとめくりながら座っており、先ほど灰になったナイルの歴史データの山を惜しんで眉をひそめていた。彼の隣では、破壊神シヴァが空中に浮かんであぐらをかき、第三の目を少し開いて、18年後のエジプトのタイムラインを見下ろしていた。 「お前はまだ、あの小僧の20年分の歴史書を惜しんでいるのか、トート?」シヴァは温かく響き渡る声で言った。 「惜しまずにいられるか?!」トートはテーブルを叩いた。「繁栄し、輝かしい王朝、才能に溢れ賢明な王、それがたった一粒の塵のせいで崩壊したのだぞ!」 シヴァは微かに微笑み、4本の腕を優しく振って、きらめく時空のマトリックス図を描いた。 「もう一度よく見てみろ。もしあの日、オリンの7秒間のくしゃみがなかったら、タイムラインの21年目に何が起きていたか?」 トートは眉をひそめ、マトリックス図をじっと覗き込んだ。知識の神の鷲の瞳が、突然激しく収縮した。 第一の真実: 過去20年間の平和な外観の下で、腐敗した貴族と神官の派閥が密かに徒党を組み、王位を転覆させるための血みどろの内戦を起こすことを企て、国家の食糧供給の80%を買い占めていた。 第二の真実: 国境の外にいる強力な外敵であるヒッタイト帝国は、30万の軍勢を集結させ、金メッキの財宝を略奪するために、首都テーベになだれ込んで大虐殺を行う準備をしていた。 オリンが自己破壊しなかった場合の元の結末: 何百万ものエジプトの平民が、外国の侵略と内戦による血の海の中で虐殺される。 「これは……これはどういうことだ?!」トートは呆然とし、パピルスのペンを落とした。 シヴァはゆっくりと説明した。 「あの年に煮えたぎる油の釜と100トンの石柱が倒れたことで、腐敗した反逆派閥はわずか7秒で正確に100%全滅したのだ。城塞の崩壊は、外国の軍隊にその貧しさを嫌悪させ撤退させ、意図せずしてエジプト民族全体を絶滅の災難から救った。人々は華やかな拠り所を失い、自ら鍬を手に取り土を耕し、不毛の砂漠で水の一滴まで分かち合う方法を学び直すことを余儀なくされたのだ」 「破壊……そして再生」知恵の女神アテナが後ろから歩み寄り、その目は称賛に満ちていた。「あのオリンという小僧は、自分がとてつもない大罪を犯したと思っているが、現実には、運命の手が彼のくしゃみを借りて『大再建』を実行し、千年の癌を徹底的に浄化したのだ」 トートはひげを撫で、唇の端を理解したような笑顔に曲げた。 「そういうことだったのか……あの子は、自分が引き起こしたと思い込んでいる借金を背負うために、背中を曲げているのだな」 「彼には言うな」シヴァは目を閉じた。「魂が純粋な労働の手で泥の底の痛みを本当に味わった時のみ、真の皇帝となるにふさわしい」 「だが、砂漠で若死にさせるわけにもいかんな」トートは微笑み、光る羽を軽く弾いて下界へ落とした。「時折、砂の突風や、地下水脈、あるいは導きの鳥を借りて、彼に少し『ヒント』を与えてやろう……我々神々が今でも、最も打たれ強い定命の者たちに密かに祝福を授けているのと同じようにな」
エデンの間の輪廻の法則は、罰を逃れるために「他人の体にパラシュートで降下する」ことや、他人の殻を乗っ取ることを決して許さなかった。下界に降りたからには、厳格に手順に従わなければならない。生まれたての赤ん坊として転生し、母親の胎内から出てきて、誕生の産声を上げるのだ! 大聖殿での恐ろしい爆発の後、ナイル川の熱い砂の上で18年が経過した。 その18年間で、エジプトは完全に変わった。もはや統一された王朝はなく、砂漠は絶えずあちこちへ移動する何百もの遊牧民の部族に分かれた。 そして、長く続く18年間、孤児の少年オリンは砂嵐の中で雑草のように育った。彼は生まれた時から赤い砂の遊牧民のキャンプに売られ、来る日も来る日も使い走りをし、お嬢様のアエリアにいじめられ、なぜ自分の運命がこんなにも不運なのか理解できないまま、あらゆる仕事を命じられた。 ちょうど18歳になるその日まで……。
ヒュン……ドカン! 摂氏50度の夏の真昼、ワニのフンが混じった水の重いバケツを2つ運んでいたオリンは、足を滑らせて花崗岩の岩に額を強打した。 極めて強い電流が背筋を走り抜け、彼の神の意識の記憶の封印をすべて目覚めさせた!
ピロン!ピロン!ピロン! 【エデンシステム:物理的蓄積の18年後に自動的にアクティブ化】 【アイデンティティ:7秒ファラオ・オリン — 完全に覚醒!】 【主従のカルマ負債契約:直ちに有効!】 【総カルマ負債:-500,000 ポイント】
オリンは頭を抱え、目を見開き、荒い息をついた。 「ま……マジかよ!全部思い出した!俺様は18年前にくしゃみをして王朝を崩壊させたファラオだ!この18年間、俺が残飯を食って、あの銀髪の小娘に仕えなきゃならなかったのは偶然じゃなくて……このクソ忌々しい奴隷の刑のせいだったのか?!」
ピシャッ! オリンが気を取り直す間もなく、鋭い革の鞭が彼の足元のすぐ隣の砂に真っ直ぐに振り下ろされ、土埃を巻き上げた。 「目覚めたの、この怠け者の奴隷?!」 オリンは石の尾根を見上げた。 アエリア――18年間の子供時代を通して彼を拷問した、あの高圧的な少女――は、今や20代の勇敢で誇り高い赤い砂の女リーダーへと花開いていた。高く結い上げたプラチナブロンドの髪は砂漠の風になびき、健康的に日焼けした肌は太陽の下で輝き、バランスの取れた体には体にフィットした革の鎧を纏い、腰の両側には湾曲した双剣を差していた。彼女の紫色の目は鋭い視線を放ち、手にはオリンの「戦犯」時代と本質的に結びついている革の鞭を持っていた。
ビリビリッ! オリンの首にあるカルマの負債の鎖の首輪が電気を帯びて鳴り、二人の間の絶対的な主従関係を思い出させるかのようだった。 アエリアは少し口角を上げ、オリンの態度が変わったのを見て楽しそうに目を輝かせた。 「ふん、その戸惑った顔を見なさいよ……全部思い出したんでしょ、元7秒ファラオ?過去18年間、私は族長の娘としての屈辱に耐え、毎日焼けつくような太陽の下で武術の練習をしなければならなかったのに、あんたは水を運んでフンを掃くだけでよかったんだからね!契約は開かれたわ。今日からあんたは正式に私の『専属のパシリ』よ。ワニの檻をピカピカに掃除しなかったら、今夜の夕食は抜きだからね!」
数歩離れた場所で、コール――今や半トンの岩を運んでフェンスを作っている筋骨隆々の戦士――がすきっ歯を見せて笑った。 「ハハ!目が覚めたか、オリンの兄弟(Bro)よ?俺は18年間ポーターとして転生して、背中が折れるほど荷物を運んできたんだ、今度はお前が苦役の苦痛を味わう番だぜ!」 その隣では、分厚い眼鏡をかけ、葦のペンを持った王室書記官オルロが、粘土板に熱心に文字を刻んでいた。 「記録:奴隷のオリン、覚醒が15分遅れたため、自動的に500カルマポイントの利子の負債を追加」 「オリン先輩、がんばって!あたし、今こっそり野イチゴを摘んできたの。後で半分隠しといてあげるね!」生意気で食いしん坊なジビーが小走りでやってきて、鈍く錆びた鉄のシャベルをオリンの手に押し付けた。
オリンはシャベルを見て、それから真っ赤な口を開けているナイルワニでいっぱいの、濁って悪臭を放つ沼を見て、二筋の涙を流した。 「なんてこった……赤ん坊からやり直すために生まれてきて、偉大な英雄に成長すると思って18年間も頑張ってきたのに、借金を返すためにフンをすくう生活に戻るなんて!」
エデンの間の時空展望台では、知識の神トートと破壊神シヴァが微笑みながらその再会を見守っていた。 トートはひげを撫で、運命の書をめくった。 「災害から18年後、腐敗した反逆派閥は全員死に、外国のヒッタイトの敵は荒廃を見て略奪に来ることもなく、人々は労働し、自立することを学んだ。しかし、約20年間100トンの岩によって固く塞がれている地下水脈が、赤い砂の部族を絶滅の干ばつへと追いやっている。そろそろこの小僧に、幸運なチャンスを与える時だな」 シヴァは微かに頷いた。トートは光る羽を軽く弾き、それを輪廻の雲の間をすり抜ける神聖な風へと変えた。
下界では、オリンが背中を丸め、ワニの檻の底で悪臭を放つ泥をシャベルで次々とすくっていた。 彼が疲れ果てて倒れそうになったちょうどその時、異常な砂漠の風が吹き抜け、乾燥した崖の細かい砂を吹き飛ばした。同時に、どこからともなく真っ白なトキの群れが飛んできて、ワニの檻のフェンスのすぐ隣にあるひび割れた石の溝にとまり、くちばしを使って崖の奥深くに張り付いている鮮やかな緑色の根の束をついばんだ。 オリンは立ち止まり、瞳孔を収縮させた。 「待てよ……この乾燥した砂漠の真ん中で、なぜワニの檻の隣の石の溝にだけ、青々とした根が生えているんだ?」 彼は近づき、シャベルを使って足元の泥を掻き出した。 過去18年間の生存経験と覚醒した記憶が組み合わさり、オリンに即座に悟らせた。ワニのフンに湖底の有機質の泥と砂漠の砂が混ざり合うと、完璧に水分を保持する土壌層が作られるのだ! さらに、過去18年間、ワニが行き来して泳いでいたことで、意図せずして過去の封印された千年の水を蓄えた石灰岩の壁に真っ直ぐに続く深い地下の溝を掘っていたのだ!
「先祖の導きだ!」オリンは歓声を上げた。「水は消えたわけじゃない、柔らかい崖の後ろに閉じ込められているだけなんだ!ワニの力を借りてボトルネックを突破するだけでいい……」 一秒たりともためらうことなく、オリンはシャベルを振り回して狂ったように掘り始めた。彼はワニの泥を使って扇形の保湿堤防を作り、その後、ロバの肉の切れ端を使って巨大なボスのワニを巧みにおびき寄せ、柔らかい石灰岩の崖の亀裂に真っ直ぐに突進させた。
バキッ……バキッ……ザザーーッ! ボスのワニの頭が腐った岩の層を突き破った。 深い地の底から、翡翠のように澄み切って冷たい地下水脈が空中に激しく噴出し、オリンが作ったばかりの保湿砂床の間を縫うように流れる小川へと広がった。 過去18年間、砂の下で眠っていた野草や砂漠のヤシの種が突然水をたっぷり吸い、芽を出し、蕾をつけ、あっという間に焦げた谷全体を青々とした緑で覆い尽くした! 「神の水だ!真水が出たぞ!」歓声が空を揺るがした。何百人もの部族の民が小川のそばにひざまずき、泣きながら両手で冷たくてさわやかな水をすくって飲んだ。
アエリアは石の尾根に立ち、鞭を持った手をだらりと下げ、オアシスが蘇る光景を紫色の目でショックを受けたように見つめていた。彼女は谷を見下ろした。そこでは、オリンが冷たい水の中に立ち、泥まみれになりながらも、太陽のように輝く笑顔を見せていた。 彼女の心臓の鼓動が、少しだけ跳ねた。
ピロン! オリンの首にある鉄の首輪が黄金の光を放った。 【隠し実績:砂漠のオアシスの血脈を復活させる】 【功徳:部族全体を絶滅から救った】 【ペナルティ軽減:+25,000 カルマポイントの清算に成功】 【残りの負債残高:-475,000 カルマ】
アエリアは石の階段を下り、鋭い視線で混乱を隠そうとしながら、もぎたての甘いイチジクをオリンの方へ投げた。 「ま、まあまあね……過去18年間、あんたを養ってきたのは無駄じゃなかったってことにしてあげる。さっさと食べて、後で植物に水をやるために水を運び続けなさい。少しチート級の功績を立てたくらいで、召使いの生活から逃れられるなんて思わないでよ!」 オリンはイチジクを受け取り、芯まで甘い一口をかじり、満面の笑みを浮かべた。 「女リーダーの仰る通りに!毎日俺の借金から数万カルマポイントを引いてくれるなら、それで構わないぜ!」
砂嵐の中で生き残るために奮闘していた人々の集団から、アエリアの赤い砂の部族は正式に中央砂漠の唯一の水源の血脈を握り、新たな帝国の台頭に向けた最初の基礎を築いた!




