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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~修学旅行3(一日目、奈良)~

 集合時間前に駅に着いたのにもう女子はほとんど来ていて、これから行く修学旅行先の話で盛り上がっていた。


 まだクラス順に並んでいないらしくクラスのみんなが何所にいるのか分からないで困っていると「千春~!」と、里沙が呼んでくれた。


「里沙、おはよう!」と、近付くと里沙が私の様子に気がつき「あらーっ。結構激しくやられたもんだねぇ。朝からごちそうさま!」と言って笑った。


 里沙ちゃんは私とロンが、しばしの別れを惜しんでイチャイチャしていたのだと思ったらしい。

 ロンが私に心残りがないように嫌われようとしたなんて誰も想像できないと思った。


 集合時間が来てクラスごと、班ごとに整列して先生を先頭に縦2列でぞろぞろと駅構内に入っていく。


 私の隣には里沙ちゃん。

 三年間いっしょのクラスで本当に良かったけど、その二列前を歩く班長は吹奏楽部の部長江角くんで、この班になったのもきっと里沙の仕業。


 もー、里沙ったらまだ江角くんが私を好きだと思って、くっつけようとしているんだと思った。

 ちょっと小悪魔ちっくな里沙のそういうところも好きなんだけど、私はそうそう思いどおりにはなりませんよ。


 新幹線に乗って最初はトランプとかで盛り上がっていたけど、なにせ昨日の晩遅くと今朝早くから散歩に行って、そのあともいろいろたいへんだったから途中から眠くなり、静かな席に移動して眠ってしまった。


 目が覚めたときには、今日の目的地である京都が近いことを車内アナウンスが伝えていた。



「おいっ」

 まだはっきりしていない頭に、急に男の人の声が届いた。

 ぶっきらぼうな呼び方が兄に似ていて思わず「兄ちゃん?」と呟くと、咳払いが聞こえ、そのあと「もう着くぞ。準備しろ」と言う声に「うん」と素直に応えて棚に上げた荷物を取るために起き上がって驚いた。


「えっ江角くん!?なんでここに?!」

 唐突な私の言葉に、江角くんは少し怒った口調で「お前が、空いていた俺の席に勝手に座って眠り込んだだけだ」と言った。


 私は、この席が江角くんの席であることさえ分からないくらいぼーっとしていて、そして寝てしまったのだ。


「ごめんなさい」と謝ると無視された。

 後ろで里沙ちゃんがクククッって笑いを堪えている声「もーっ!里沙!知っていたのなら教えてよね!」


 京都駅に着くとクラスごとにバスに乗って奈良に向かうのだけど、その前にトイレなどの休憩が入るので、そのわずかな時間を利用して私たちはあるお楽しみの写真を撮って遊んだ。

 お楽しみは聖地巡礼!

 この京都駅は、吹奏楽部を題材とした小説をもとにアニメ化された作品の舞台になっていたから。

 京都駅の大階段の前で写真を撮った。


「こっちも忘れちゃならねえぞ!」

 写真を撮っていると伊藤くんに声をかけられて気がつくと、アニメに出てきた駅ビルコンサートのステージがそのままあった。

 もちろんそこにはアニメのキャラクターたちは並んでいなかったけれど、本当にそういった舞台があることに驚いてみんなでいっしょに写真を撮った。


 休憩時間も終わり、クラスごとに点呼を取り、外で待機しているバスに乗り込み奈良に向かった。

 奈良では法隆寺を見て、そこからバスに乗り東大寺で降りて、そのまま東大寺から奈良公園を通り春日大社を見てまたバスに乗り京都の旅館に泊まるルートだった。


 寺社巡りのルートだったけれど、どの建物も素晴らしくてすてきだったけれど、私がいちばん楽しかったのは奈良公園でシカと遊んだこと。

 ほんと人懐っこくて、なでさせてもくれて感動したけど、ここにロンがいたらどのような反応を見せるのだろうと思うとさらに楽しかった。


 大きなシカを見てロンはビックリするのだろうか?

 それとも、いっしょに遊ぼうとするのだろうか?


 私が思うロンの行動は、私たちと同じようにシカを見て「可愛い動物がいるな」とキョロキョロと見て歩くだけのような気がする。

 だってロンたらお散歩中によその犬を見ても「あっ、犬がいる」と思っているような、まるで私と同じ反応しかしないんだもの。


 わんわんと吠えてシカを威嚇したり追いかけたりする?

 それはぜったいにしない。

 だってロンは自分が大きくて強いこともわかっているから、相手が攻撃して来ない限り決して自ら相手を威嚇するような真似はしない。

 三年間いっしょに住んでいて、そんなロンの姿なんて一度も見たことはない。


 シカを見ていて、今度はロンといっしょに来れたらいいなって、しみじみと思った。

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