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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~美樹さんの訪問2~

 私がパクパク料理を食べてくれるロンに見とれているうちに、美樹さんはもう台所に戻って洗い物を始めた。


 慌てて戻った私に「洗い物少しだけだから大丈夫だから、その分ロンの世話をお願いするわ」と言われた。


 「ロンの世話?」ロンが食べ終わって、それでお終いだと思っていたら、ロンはまるで小さい子供のように口の周りに食べかすを付けて、床にもいっぱい散らかしていた。


 床をペロペロ舐めようとするので、それをさせないように「マテ」を言い、雑巾で床を拭き、その間にいつの間にか口の周りに着いたほうは自分で舐めとったのか、きれいになっていた。


 美樹さんは洗い終えたボールに今度は溶かしたバターと小麦粉と砂糖を入れた。


「クッキー!?」

「ご名答!」


 二人でおしゃべりしながら作っていて、ふと後ろを振り向くとロンがきちんとお座りをして私たちを見上げていた。

 きっとまた僕の御馳走を作ってくれていると思っているのに違いなくて、期待感に満ちた目が痛い。


 オーブンで焼くまえに美樹さんはすぐにボールを洗うと「しょうがない子ね」と言って、レシピを書いたノートを見て、ロン用のクッキーを作ってくれた。

(ロン用のクッキーはバターの代わりにサラダ油を使って砂糖は入れない)


「一回1粒、一日3粒までよ!」と、これは私に対しての注意事項。


「おやつとかあげると喜ぶけれど、与えすぎると結局ロンの健康に良くないから」

「了解しました!」と、私は軍隊の人みたいに美樹さんに敬礼して返した。


 焼き上がったクッキーを兄と母を加えた四人で食べた。

 ロンは、いつ僕の分をくれるのか期待に満ちた目で私たちを見ているけど、今はあげない。

 私たちが食べている最中に食べ物をあげると、食べている間じゅうもらえると思ってしまう。


 そしてもっと重要なことは、犬はもともと群れで行動していた動物であること。

 群れでは、その序列の順番に餌を食べるのが決まり。

 ペットとして家で飼われる犬も、飼い主の下にいるようにしないと、しつけを覚えずにわがままな子になってしまう。

 だから群れの序列に従い、私たちが食べ終わってからロンの分をあげた。


 なるほどロンは私たち家族の中で普通に暮らしているといままで思っていたけれど、ロンは人間として一緒に住んでいるのではなく、私たちも自分と同じ犬だと思って暮らしているのだと思った。


 だから私たちが、ちゃんとしたリーダーシップをとってあげなくてはならない。

 リーダーの居ない群れや、二人のリーダーが仲たがいしている群れで過ごすのは犬にとっても難しいものとなるだろう。


 そしてリーダーは常に強くてはならない。


 この強いというのは決して力のことではない。

 常に毅然とした態度でリーダーとしての自覚を持たなければならないのだ。


 そうしないと、散歩中に飼い主を守るために、他の犬やその犬を連れた飼い主や他の人を威嚇いかくするような犬になってしまう。

 リーダーによって常に守られている犬は、決してそのようなことはしない。



 クッキーを食べ終わると、美樹さんは少し兄の部屋で遊んで、それから兄に送られて帰っていった。


 二人が帰ったあと私はお母さんに、美樹さんのことを聞いた。

 お母さんは上品できれいな娘さんねとだけ言った。

 きっと母自身を含めて過度な期待をしないように努めているのだと思った。

 けれども私が聞きたかったのはそう言うことではない。

 だから直球を投げた。


「美樹さんって、秋子お姉ちゃんに似ていない?」と。

 正直私は記憶が幼すぎて、学校案内のパンフレットに印刷された秋子お姉ちゃんの写真を見て、その容姿が美樹さんに似ていると思っただけ。


 お母さんにそのことを話すと「ああ、そう言えば!」と言い、初めて見たときからずっと親しい誰かと似ていると思っていたことを打ち明けてくれた。


 そしてここからが最も重要な話。

「ねえ、お兄ちゃんって秋子お姉ちゃんと、仲良かったの?」

 お母さんは笑い出して、仲がいいというよりも今の千春とロンのように、秋子ちゃんがあっちへいけば駿もあっちへ行き、台所でお料理を手伝ってくれていればそれを近くでずっと見ていたわ。と、教えてくれた。


 やはり兄にとって秋子お姉ちゃんは初恋の人だったのだ。

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