~ロンと雪遊び3~
美樹さんのおかげでペンションに帰るころには初心者コースなら普通に滑れるくらいに上達した。
夕食の前にお風呂に入った。
ホテルや旅館にある大浴場には全然及ばないけれど、家族単位で入れるくらい広いお風呂に美樹さんと里沙と私の3人で入る。
里沙は中学校の校外学習のときに他の友達と一緒にお風呂に入ったけど、美樹さんのような年上の人と入るのは何となく少し恥ずかしい。
里沙の胸が私より大きいのなんて「おっきぃ~!」なんて言って勝手に触っちゃったりするんだけど、美樹さんの胸は恥ずかしくて直視できない。
それでも気になって見てしまった美樹さんの胸は、里沙より大きくて大人のかたちをしていた。
体の線も私たちに比べてメリハリがあって”おとなの女性”だ。
意識してみると、髪の毛の一本一本から、手のかたち、指のしなやかさ、二の腕の柔らかさ、腰の括れからお尻の張り、細い足、整った足の指。
頭の先から足の先まで大人の魅力に溢れていて、勝負にならない。
これじゃあロンが浮気しちゃうのも仕方ないなと、湯船から体を洗っている美樹さんを観察しながら一人で落ち込んでいた。
お風呂から上がると、宿の人が用意してくれた浴衣に着替えて、いったん部屋に戻る。
里沙と私は髪を乾かしながら、美樹さんが軽い夜用の化粧をするのを興味津々で見ていた。
「美樹さんそのままでも美人なんだから化粧なんてしなくてもいいのに」
里沙がそういうと、お肌のケアは若い時からきちんとしておかないと後々たいへんになるのよと、私たちの顔にも化粧水を塗ってくれた。
お風呂上がりで火照った顔にひんやりと気持ちいい。
「スキーの時は雪で反射した紫外線も浴びるから特にお肌のケアには気をつけないとね」
言いながら急に私のほっぺを摘まんで「このハリがうらやましいぃ~」と言われて驚いた。
だって美人の美樹さんに、うらやましがられる何物も持っていないと思っていたから。
3人で食堂に行きペットルームを覗いてみると、ロンが壁の隅に体を張り付けるようにして困った顔をしていた。
『おやっ?』と思ったけど、原因は直ぐに分かった。
オーナーさんの飼っているミニチュアダックスが2匹、ロンと遊びたいのか、しきりにチョッカイを出していた。
ロンはミニチュアダックスに噛まれたこともないし、何倍も大きいのに何故かこの犬種だけ怖がる。
里沙ちゃんが「大きい犬なのに確りしろロン!」
なんて言って笑っていたけど、私はちっとも笑えない。
だってロンが困っているんだもの。
私は柵の扉を開けて中に入るとミニチュアダックスたちが私に集まってきた。
その都合上、ダックスたちを引き連れてロンの傍まで行くことになるけど、まさか彼らを蹴散らすわけにもいかないので、怖がるロンを抱き上げてペットルームから助け出した。
「あー重かった!」
ロンを降ろすと、その場にしゃがみこんだ。
ロンと私が柵の外に出たのが気に入らないのか、ミニチュアダックスたちが吠えたのでロンは慌てて私の陰に隠れた。
食堂に行くとオーナーさんがロンの夕食を用意してくれていた。
「エサ」ではなく「犬用の夕食」だ!
「すごい!すごい!」
「おいしそう!!」
「良かったねロン!」
私たち女子三人が口々にロンの夕食を囲んで感動していたら、兄たち男組もすぐに来て同じようなことを言っていた。
中でもいつも私の前ではクールな兄が子供のように喜んでいるのが印象的で、ひょっとしたら男の人って好きな女子の前では子供になっちゃうのかな……って、兄と美樹さんの顔を交互に見ていた。
食事が終わってみると、ロンがいないことに気が付いた。
兄と美樹さんもいなかったので、きっと散歩に連れ出したのだろうと思って和室にあったこたつに足を突っ込んだ。
「!?」
なにか、ざらざらするものに舐められた気がして布団をめくり上げると、ロンがこたつの中で丸くなっていた。
童謡「雪」の中では犬は喜んで雪の中を駆け回るけど、こたつで丸くなるのは猫じゃなかったっけ?
私はこたつの中に顔を突っ込んでロンの鼻先をツンツンして尋ねたら、ロンは困ったような顔をして私の指をペロッと舐めた。




