~ロンと雪遊び1~
冬休みに入る前。
私は兄にスキーに誘われた。
スキーは兄の大学の人と一緒だと聞いて、少し腰が引けたけど、ロンも一緒に連れて行けると言われて私はすぐにOKした。
そしてロンと二人だけだと心もとないので、私は里沙を誘った。
スキー当日、兄が運転する車の後ろ座席には私と里沙と、その間にロンがいた。
前の座席には運転する兄と、助手席に座る彼女さん。
「先に行っていてくれ」
インカムで兄が他の車でスキー場に向かう友達と連絡を取っていた。
車は公園の駐車場に止まり、私たちは車を降りた。
「うわ~、さすがに寒いね!」
白い息を吐きながら里沙が言った。
「向こうの山、真っ白だもん」
ロンのリードを持った私が、お散歩道具の入ったトートバッグを上げて山を指さす。
時間はまだ朝の7時。
ロンを散歩させ里沙とおしゃべりしながら、私の目は公園の反対側を仲良く歩いている兄たちが気になってしかたがない。
兄の彼女さんの名前は伊藤美樹さんと言って、兄と同じ大学の同級生。
前から思っているけれどすごい美人で、やっぱり秋子お姉ちゃんに似ていて優しい。
どうして私と里沙が行くことになったのかというと、女子で参加するのが美樹さんだけだったので、彼氏の妹である私に白羽の矢が立った。
そして私も一人だけ年下なんていやだったから里沙を誘った。
ロン?
ロンは単なる お・ま・け。
ロンのためのお散歩休憩も終わり再び車に乗ってしばらく走ると頂の白い山が目立つようになった。
「雪だ!雪だ!!」と里沙は大喜び。
私は一緒になってはしゃぎながらもロンに説明してあげた。
「あれが雪山で、この道に積もっているのも雪。そしてこれから行くところは雪がたくさん積もっていて、とっても寒くて足元が滑りやすいところだから走っちゃだめよ」とロンを抱きかかえるように膝の上にのせて雪を指さしながら教えていた。
横で見ていた里沙ちゃんが「千春って、良いお母さんになりそう」と、少しからかうような口調で言うと、前の座席に座っていた美樹さんも後ろを振り返って「本当。旦那さんにも優しいし」と言って笑った。
私は美樹さんの言葉の語尾が気になって、まだ結婚もしていないのに『優しいし』なんて断定しないでくださいと注文を付けた。
「えっ!ロンとまだ入籍済ませてなかったの?」って里沙にまたからかわれた。
「もー!結婚なんてしていないし、私もロンもそのうち良い人(犬)見つけるんだから!」
そう言っていると、ロンが不思議そうな表情で私の顔を見上げていた。
ロンと目が合って、急に恥ずかしくなった私はロンだけに聞こえるように小さな声で『そうなるように頑張ろうね!』といってロンにウィンクすると、ロンは私の胸に頭を押し付けるようにして甘えてきた。
しばらく走っているとスキー場の近くにあるペンションに到着した。
駐車場から玄関にかけてきれいに除雪されていたけれど、周りの景色は圧巻の雪化粧。
車から降りると、雪の高さは低いところでも私の膝くらいあった。
いつもと違う景色がロンの好奇心に火をつけたのか、車から降りた途端に勢いよく走り出す。
「ロン!あんまり走ると転んじゃうよ!」
ロンは当然防寒用の靴も履いていなくて、素足なのでしもやけにならないか心配した。
私たちみたいに雪用の溝の深い靴じゃないからすぐ転んでしまうとも思った。
だけどロンは私の心配なんかおかまいなしに飛び跳ねるようにふかふかの雪の上を走って、リードを持ちながら「気をつけて!」とか「滑るよ!」とかロンに注意するように声をかけていた私のほうが滑って転んでしまった。
雪の中にうつぶせに転んだ私のそばに慌てて駆け戻ってきたロンは、わざわざ雪に埋まった私の顔を掘り当てて顔をなめた。
起き上がった私を見て、みんなが笑いながら「大丈夫!?」って声をかけてくれたけど、あれだけロンに注意していた私が、自分の口から出た言葉どおりに滑って転んでしまうなんて……正直無視しておいてほしかった。
それにしても、ロンのこのはしゃぎようっていったいなに?
あとで、しもやけがかゆいとか言っても知らないからね!




