表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/52

   ~全国大会に出られる確率~

 次の日、伊藤くんといっしょに朝練に向かっていると、美緒もあとから追いかけてきた。


「おはよー!」

「おはよー!昨日は、ありがとう」


 昨日、私の楽器を片付けてくれたお礼を美緒に言って、今朝は早いのねと聞くと、もう三年生と練習するのも最後かもしれないからと言って美緒は笑った。


 この週末には県大会があり、夏休み最後の週末には東関東大会が行われる。


 そこで勝てば十月に名古屋で行われる全国大会に出場することができる。

 高校だとほぼ毎年同じ高校が全国大会に出場しているから、高校の場合その出場常連校に入れば出場できる確率は高くなる半面、県立の無名校に入ってしまうと確率はほぼゼロパーセントだと言われている。


 中学の場合は私立の強豪校が殆ど無いので、確率は出場枠÷参加校となる。

 詳しい数字は分からないけれど、ネットで誰かが調べた結果だと、その確率は0.3パーセント。

 つまり三百三十三校の中でトップになった学校だけが、名古屋で行われる全国大会に行くことができるということになる。

 まだ私たちは相模原支部全九校の中から選ばれる三枠を獲得したに過ぎない。


 私はあきらめるつもりはないけれど、メンバーに入っていない以上、演奏に関してどうすることもできない。



 正門の前まで行くと、江角くんも来ていた。

「江角、おはよー!」

 伊藤くんはすっかり江角くんと友達になり、声をかけた。

 江角くんの鋭い視線が私を刺す。


 そりゃあ、片付けもせずに勝手に帰っちゃったのだから怒られても仕方がない。

 私はビビッて下を向くことで、その視線から逃げた。


 職員室で鍵を取って伊藤くんたちと別れ、私と美緒は体育館に行った。


 美緒が譜面台を取りに上がらないのかと聞いてきたので、パイプ椅子の背もたれを譜面台代わりにしていることを教えた。

「さすが、千春!」と美緒から褒められたが、正直に三年生から教えてもらったことを白状した。

 譜面台を取りに行く時間があれば、一回か二回余分に練習ができる。


 この日も二年生は来なかったけれど、三年生は増えた。

 美緒と私は三年生に混じって、八時まで練習してから音楽室に上がった。


 音楽室の扉を開けると、中は静かで楽器の音が一つも聞こえなかった。

 室内の雰囲気も暗く凍り付いている。

 どうしたのだろうと思って見ると、そのなかで福田さんが泣いていた。


 戸惑っている私たちのそばに三村さんが飛んで来て、わけを話してくれた。


 事の発端は、江角くん。

 放送室での朝練を終えた江角くんが音楽室に戻ってきた後、時間はだいたい七時五十分くらいに入って来た福田さんに江角くんが、メンバーに選ばれたのになぜ君は朝の自主練習に参加しないのかと少し強い口調で聞いた。


 答えられないでいる福田さんに、江角くんはメンバーに選ばれたから偉いわけではなく、もしもいまオーディション形式で人選した場合に君は選ばれると本気で思っているのかとまで言ったそうだ。


 朝礼に来た先生が上級生の部員からそのことを聞いて、江角くんと福田さんを職員室に連れて行った。


 三年生の春日部長が話をした。

 三年生は今年が最後だから頑張ろうと皆で決めていること。

 だから事情が許す限り、朝の自主練にも皆で参加するように努めていること。


 しかし吹奏楽は個人競技ではない。

 自主練習に関しては強制ではないのは確かだが、この夏の炎天下の中で午後に自主練習を行うことは体力的にもきついし、特に木管楽器は気温や湿度の変化に弱く、最悪壊れてしまう場合もあるから、朝の涼しいときに練習をおこなえることになったのは大変いいことだと思う。


 そして今回五十人の大編成枠をあえて使わなかった理由をここで話してくれた。

   江角くん

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ