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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~ロンの去勢2~

 小学生のときも何度かロンに押し倒されたことはあったけど、それはロンが私のことを好きと思ってくれているからだと思っていた。


 押し倒されるのは小学生のときも決して少なくはなかったが、それにしても中学になったこのころは、ロンはひんぱんに私のことを押し倒そうとしてくる。


 しかも、私が小学生だったころよりも、もっとはげしく。

 とても暴力的にも感じられる。


 そしていったん馬乗りになられたら、お母さんの力ではなかなか離れてくれなかった。


 そればかりか小学校の時は制服がなくいつもGパンを履いていたので気にならなかったけれど、中学生で制服のスカートになったとたんロンは私の足を目掛けてしがみ付いてきてリフティングをする。


 これが人間ならそっこく蹴飛ばすところなのだけど、ロンは可愛いし、きっと私のことが好きで彼女だと思ってくれていると思うと無下にも出来ないでいた。


 その日も、私の足を目掛けて飛びついてきた。


 あわてて逃げようとしたけど結局いつものように前足で足に抱きつかれてリフティングされた。


 いつもなら私がキャーキャー言ったり足をバタバタさせたりしていると直ぐに止めてくれるのだけど、その日はいつまでたっても止めない。


 兄とお父さんはまだ帰って来ていなくて、お母さんは買い物に出ていて今はいない。


 困っていると急に、ふくらはぎに生暖かいものがかかったような気がして、それがとても気持ち悪くて強引にロンを引きはがすと、思った通りなにかの液体があしについていた。


「なにこれ!?」


 私はびっくりして、その場にしゃがみこんで泣いてしまった。


 直にお母さんが買い物から帰って来て、泣いている私に気が付いてくれたので事情を話し、そのあと直ぐシャワーを浴びた。


 家族がそろったときお母さんが今日のことを話してくれると、兄は言いにくそうに女性になった私の匂いをロンは敏感に感じて感情が抑えきれなくなったのだろうと言った。


 つまり発情しているのだと。


 発情期は周期によってやって来るものだから毎日ではないが、ロンの体重はもう20キロもあり、もし気が立って暴力的になってしまえば手が付けられないから去勢させたほうがいいと兄は言った。


「去勢って、男の子じゃなくなることでしょ!それなら私はがまんする」


 私が驚いて言うと、兄はもし散歩中によその犬にリフティングをしてしまい、それでその犬を妊娠させてしまったときに、どう責任を取るつもりなのかと私に聞いた。


 ごめんなさい。で済むような問題ではないことは、中学生になったばかりの私でもわかる。


 そして散歩中というシチュエーションだと、さらに気まずい。

 ロンの散歩だって行きにくくなるだろうし、家族だって近所を歩けなくなるかもしれない。


 そして一番つらい思いをするのは、おそらくお母さん。

 やさしいお母さんに、そんな辛い思いをして欲しくはなかった。


 結局私もロンの去勢に賛成した。



 手術の日、学校から帰ってもロンは玄関に居なかった。


「今日は病院にお泊りか……」


 ロンの居ない寂しい玄関でひとりつぶやいた。

   登場人物の紹介

挿絵(By みてみん)

   鮎沢 駿

 千春の兄。

 年は8つ上で、現在国立大学に通っている。

 音楽はしていなくて、ラクロス部に入っている。

 年が離れているので、千春とはやや距離を置き気味だけど、何かと優しい。

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