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宿にグッピー

116話 宿にグッピー


『あなたが、セルマ。あの、顔を、よく見せてください』


『あなたは……』


『あたしはメラルダよ。メラルダ! セルマ・クンの娘よ』


『お嬢さん、人間違いです。私には子供はいません……』


『あ、待って! 母さん……』


「どうしたんだ? オレには言葉がわからん。リンダ、わかるか?」

「少しなら。あの庭から出て来た女性は、メラルダの母親と同じ名だが、子供は居ないと」


『と、いうことだ。同じ名の人間なんていくらでもいるよ。こんなトコで騒がれては迷惑だ。旦那様に叱られる。帰ってくれないか』


 メラルダはふさぎ込んで馬車に戻った。


「あれは母さんだった……事情があるんだ」

「お母さん、元気そうじゃないか。それだけでも……」

「そうね……亜人の子を産んだとか、ああいうお屋敷で働いてたら言えないよね」

「そういうもんなのか。西方では、亜人と人の家族が普通に暮してたぞ」

「ええ、そういうトコもあるわね」


 メラルダが伯母の所へ行った時、母親は伯母宛に手紙をメラルダに持たせた。

 それにはいろいろ事情が書いてあったと。

 伯母が亡くなって、その手紙を読みメラルダ真実を知ったそうだ。


「あんたの母親もつらいだろうね。娘が来たのに……。私にも娘がいたんだ」


「リンダが母親だったのか。いたんだって今は?」

「私は盗賊の娘でさあ。他の盗賊の男と子供がデキたんだ。それから数年後亭主になった男は何処かの女と逃げたんだ。娘は馬車に跳ねられてね死んだんだよ」


 リンダにそんな過去が。


「夜逃げる亭主を見つけた娘は止めようとして馬車の前に」


「旦那の馬車に跳ねられたのか……旦那は?」

「何処に行ったのかねぇ。娘はアニタよりちょっと下だったかな……」


 それでアニタを。


「みんな、いろんなあるんだよな。ロラン帰ろう女神のトコに」


 市場の五人。


「ナニ、コレかわった形の……木ノ実?」

「それはナババという果物。まだ青い黄色くなれば甘くて美味しい」

「ミシェールは食べたことあるんだ」


「アニタ、あっちのは黄色い!」

 

 ルル姉が5本買ってきて、みんなで食べた。


「ホントだ美味しい。ミシェールはドコで食べたの?」

「この国。昔来た」

「ミシェールってさ、いろんなトコへ行ってんのね。東方の果の島にも居たって、ミシェールって若く見えるけどホントはいくつなの?」

「そんことは、あなたの見た目で決めて」

「はあ〜ロランよりちょっと上で、グッピーよりちょっと下かなぁ」

「お姉ちゃん、それだとミシェールとティアは同じくらいだ」

「う〜ん。ミシェールとティアーナか……どっちが上だ?」

「あたいだ」

「それでいい」

「でも、なんかしっくりこないなぁ」


『そこのねいちゃんたちオレらとイイ事しない』


「またよ。なんであたしたちよく、変なのにからまれるのかしら。言葉はわからないけど。誘ってるのよね」

「アニタたちがカワイイからだ」

「ヤローどもが女に飢えてるからだ」


『あんたら、外国人かな。ことばわかる?』

『ねぇオレと子作りしよう。俺のでっかいんだよ』

『バカ、なに言ってんだよ』

『大丈夫だ、ことばわかんねぇみたいだし』


 男の一人は腰を前と後ろにふってナニか言ってる。


「なに言ってのこいつら。誰かわからない?」


「イヤらしいこと言ってからかってる」


「ミシェール、わかるのね通訳して。バ〜カベェ」


 と、言って舌を出したルル姉。


『おい娘が、舌を見せた。しやぶらせろって言ってるぜ!』


「ルルレット、舌はダメだ」


 男の一人ががズボンのヒモを解き出した。ナニする?


『オレのナババは美味いぜ』



「逃げる!」


 ミシェールがアニタとルル姉の手を取り走り出した。


「あ、エスタ!」


「ありゃりゃ逃げちゃたよ。ミシェール」


『おい、なんでこいつら逃げないんだ?』

『いいじゃねーか。オレ、小さい方が好みだ』

『大きい方だって中々美人だぜ』


 ヤローたちがニヤニヤしながら迫って来る。


「エスタ。おまえなんだか知らないが、あたいのマネ上手い。あたいに見せてみろ」


 エスタの背腰の短棍棒取って渡した。


「ヤレ、エスタ!」


 エスタは胸を触ろうと来た男の手に短棍を当てた。


「よし、左手、そしてツネだ!」


『てっ、このガキっおたっ!』


「そうだ。イイぞ」


『バカヤロー小娘だと思って油断すっからだ。ホレ、こいつを使え』


 男が竹ざおを持った。



 町の女神像の前。


「遅かったな」


「あんたたちが早いのよ」


「エスタとティアーナは?」


「おいてきちゃた」

「あの二人なら大丈夫」

「って、ナニがあったんだミシェール」

「また、からまれたのよ、なんだってもーあたしたちになんにも悪いことしてないのにー」

「助けに…」

「あ、来た! 二人は無事だ」


 まあティアーナと一緒なら。


「おい、早いな。なんで逃げた。あんなのたいしたことなかったぞ。なあエスタ」

「エスタ強い!」


「無事ならイイ、グッピーを捜しに行こう。まずは……」


「あそこの大きな宿は? アニタ乗りな」


 リンダは馬車を動かした。


 さすがに大通りの宿はいっぱいでグッピーも居なかった。それから4軒まわったがグッピーは居ない。


「あっちの裏通りはどうだ、まあろくでもない店しか並んでないが」


「あーゆートコの方が祭りの時は混まない?」


「いや、あーゆートコに行くようなヤツは宿なんか泊まらないよ」


 裏通りの路地の前に宿の看板が。


「見てくるよ」


 宿の前に椅子に座ったグッピーが居た。


「遅かったな、待ちくたびれたぜ」

「ココ大丈夫なのか?」

「旅慣れた俺が見たんだ大丈夫だ。ただ二部屋しか空いてなかった。両方四人部屋だ」

「とれただけましだな」

「おまえら何か騒ぎ起こさなかったか? さっきあらくれ共が、仕返しするって誰かを捜しまわってたぞ」

「ティアーナたちかな…」

「やっぱりな」

「グッピー、こっちの言葉がわかるのか?」

「宿の主人が教えてくれた。こんな宿でもな、外国人を相手にするんでこっちの言葉が話せる」

「奴ら相手が外国人だから宿を見てまわってるんだと」



 部屋はオレとグッピーとリンダとティアーナで一部屋、あとの女たちはもう一部屋。


「女部屋はひとつベッドが足りないわ」

「誰が床で寝るしかないな」

「アニタが、床で寝る。硬いほうが好きだ」


「エスタ、ロランと寝る」

「ダメよ!」


「アニタ、私と寝よう」


「リンダ……いいの」


「よし、部屋わり決まったらメシ食いに行こうぜ。待ちくたびれて腹減った!」


               つづく


 


 

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