キナリノの宿
114話 キナリノの宿
「村の通りであらくれどもをこてんぱんにしたのはあんたらか?」
「もう、ひろまってるのか。向こうが言いがかりをつけてきたんで。仕方がなく相手したんだ。泊めてくれないのか?」
「いや、そんなことはない。スカッとしたよ。奴ら公衆の面前で叩きのめされたんだ。当分おとなしくしてるだろうよ。わしは嬉しいんだ。今夜の食事はサービスだ金はいらねぇ」
良かった。騒ぎを起こして喜ばれるとは。
夕食は、またあの食堂へ行こうと考えてた。
女将も娘も感じが良かった。
「今夜は大物が捕れてな。サモのナベ炒めだ」
「あ、こいつ食堂で食べたヤツだ」
「あっちでも出たか。で、味はどうだ? お嬢ちゃん」
「どっちも美味しい」
「俺はこっちの味付が好きだ。煮たのより好みなんだよなー。おやじ、うめーぞ」
「あんたらがボコったあらくれどもは村オサ衆の連中でな」
「村長の?」
「村長の手下があらくれ者ってなによソレ。村長ってみんなで決めたんでしょ」
「いや、奴は金で村長になった男での、村を牛耳ってる大バカ者た。村のもんで好いてる奴などおらんよ」
「村長の地位を金でだと。そんな奴もいるんだな」
「あのヤロー根は臆病者でな。金にものを言わせて、あらくれ共を雇っていやがる。まあ長続きせんだろうと思ってたが、あの村長になってから随分たった。今度の事、誰もあんたらのコトを攻めても怒ってもいないよ」
「その村長はどうなんだ。怒ってんじゃねーか。また来るかも」
「奴ら、けっこうひどくやられたそうじゃないか」
「ああ、悪さ出来ねぇよーに腕や脚を二、三本折ってやった」
「あいつらバカだが、何度もやられに来ないじゃろう。しばらくおとなしくしてればいいが」
「バカは、何度も来るんだ。来ないのは利口な奴だ」
「なるほど、そうだなハハハハ。さあ食ってくれ。コレは裏の畑で採れた芋だ」
村の宿も思ったより大きい。
あの食堂も宿も旅人で稼いでるのだろうが、なら川に橋をかければ、もっと旅人が増えるだろうに。
例のイカダは川岸に残したままだ。
いつものようにグッピーとオレが二人部屋。アニタ姉妹とエスタ。リンダとティアーナ。ミシェールとメラルダ。4部屋とれた。
夜。
グッピーのイビキが聞こえだした頃、ノック音が。
「誰だ?」
「ロラン?」
「エスタか、どうした」
「開けて」
ドアを開けると下着姿のエスタが部屋に入り、オレのベッドへ。
「どうしたエスタ」
「一緒に寝よ」
「あ、よした方が、ルルにどやされるぞ」
「寝よ。一緒に。前みたいに」
「前みたいにって、オレは……」
人の身体になったエスタとは一度も添い寝してはいない。
あの像だった時の記憶が、あるのか?
「ゴクリ」
誘惑に負ける。
オレは、初めて人化したエスタを抱いた。
「ウッゴホンッ」
えつ、グッピー! おきた。
「おい、別にエスタとなにしょうが、かまわねーけどな。この部屋は俺も居るんだ」
「あ、すまん。こ、これは……」
「いいよ、アアーア。ちょっくら、夜の散歩でもしてくるか、じゃあーな。朝まで帰らねぇからよ」
グッピー。朝までって。
ああーあ。エスタ。
手を握ってた時は人形とつないでるような気でいたが、抱いてみると身体は柔らかで暖かい。
本当にこの体は人間のソレとは違うのか。あのエルフは凄いな。
「ロラン、好き」
つづく




