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第9話 良い人そう


「それでね、娘がね……」


長い。


とても長い。


ラスターに教わって、話に合わせて相槌をうつことから始めたけれど、これは、なかなか大変だ。


話を聞くことは、意外と集中力がいる。


しかも、自分があまり興味がない話を聞くのは疲れてくる。


何か依頼することは無さそうだけど、娘さんのこと、自身の病気のことなどを私たちに話した。


かれこれ、30分くらい話しただろうか。


道具屋のおかみさんは、安心したように微笑んだ。


「新しいシスター様。あなたが来てくれて、本当に嬉しいわ。」


「前任の方も、いい人だったけど……、あなたも良さそうな人ね。」


「これからよろしくね、シスターシーナ」


な、名前を呼ばれた!


それに、『良さそうな人』だなんて……。


そんなこと、今までの人生で言われたことがあっただろうか?


「では、また。神のご加護を」


挨拶し、ラスターと歩きだした。


「ねえ、ラスター」


「はい。」


「話を聞くって、すごいわね」


「私、良い人そうに見えるらしいわよ。」


ラスターが頷いた。


「そうですね。」


「今日のシスターは、よく話を聞いていたと思います。」


「まずは、それで大丈夫だと思いますよ。」


よかった。認めてもらえた。


「ただ……」


「なによ?」


「良い人そうなのはどうでしょう?グランベアが出た時、私を置いて逃げようとしてましたよね?」


ラスターの影が、ユラリと揺れた気がした。


「な、何言ってるのよ!そんなことあるわけないじゃない!」


「……そうでしょうか?」


ジトッと、私を見るラスター。


これは、もしかして……、


案外根に持つタイプなのかもしれない。


以後、気をつけようと、私は密かに決めた。


「じゃ、じゃあ、次の家にいきましょう。」


ラスターを促がそうとした、


その時。


――火事だ!!


緊迫した、村人の叫び声が聞こえた。





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