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第8話 シスターの存在意義


なんだかな……。


今日は、村をだいぶ回ったけど、村人の話は、そんなに重大な物はなかった。


雨漏りを直してほしい


とか、


猫が逃げてしまって見つからない


とか、


荷車の車輪が外れた


など、呪文の必要ない話ばかりだった。



「ねえ、シスターって、本当に必要なの?」

「ラスターがいれば十分じゃない?」


そう、細々とした仕事は、全部ラスターがやってくれた。



何でも屋さんのように、ラスターは色んなことができた。


私は、隣で見ているだけだ。


魔法を使って、解決するような依頼は、グランベア退治しか今のところない。


私の存在価値っていったい……。


もう、現実世界に帰ってもいいんじゃない?


そんな気持ちになった。


「ラスター、私がいる意味ってあるのかな?」


思わず、口にしてしまった。


ラスターは、なかなか返事をしなかった。


「そうですね……。」


「シスターシーナ。シスターは、いるだけで、村人の希望となります。」

「村人は、シスターがいるだけで安心するのです。」


なんだか、わかるような、わからないような言葉だ。


「ただ――いるだけでは、村人の心は、徐々に離れてしまうかもしれませんね。」


ラスターが、悲しげな顔になった。


心が離れてしまう……。


それじゃあ、現実世界と変わらない。


部下たちは、私を頼ろうとしないし、なんだか距離を感じていた。


「じゃあ、どうすればいいのよ?」


どこへ行っても、同じことを繰り返してしまいそうで、思わずラスターに聞いてしまった。



ラスターが、顔を上げた。


そして、言葉を選ぶように、ゆっくりと言った。


「シスターシーナ……。あなたは、村人の話を聞く気持ちはありますか?」



そう聞かれて、動揺した。


私は、毎回挨拶が済むと、離れたところからラスターが話すのを見ていた。


だって、村人の話は、長くて要領を得ない。

結末をラスターに聞いてから動いたほうが効率がいい。


それじゃあ、だめなんだろうか?


「そうですね……」


「例えばですが、シスターシーナが、体調を崩してお医者さまに診てもらったとします。」


「病気で、とても苦しい時に、辛い気持を聞いてくれずに、

『これを飲んだら治ります』と、薬だけ出されたらどうでしょう?」


「また、同じお医者様に診てもらいたいと思いますか?」


――私は、想像してみた。


たしかに、もっと私の話を聞いてもらって、辛かった気持ちをわかって欲しい、と思うかもしれない。


「もう、そのお医者さまに診てもらわないかもしれない……。」


小さな声で答えた。


「そうですよね。村人も、自分の気持ちを分かってほしい、と思っていると思います。」


「解決策だけを求めているわけではないかもしれないですね。」


――そうだったんだ。


みんな、結果だけを求めているわけではなかったんだ。


もちろん、結果を出すのは大切だけど、気持ちを汲んでほしいんだ。


話を聞くことの大切さを、ようやく少し理解した気がした。


「そうなんだ……。」


「はい。」


ラスターが、深く頷いた。


「せっかくなので、明日から実践してみましょう。」



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