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第10話 火事だ!


「急ぎましょう」


声の方へ走る。


だんだん、焦げ臭いニオイがしてきた。


「あそこですね。」


ラスターが指差した先には、

人だかりができていた。


――ここは、確か食堂だったはず。


轟々と音を立てて、建物全体が赤い炎に包まれていた。


バケツリレーで、水をかけているけど、ほとんど効果はなさそうだ。


「シスター様だ!」


誰かが、私の存在に気づいた。


その声を聞いて、料理屋の店主が、私たちに駆け寄ってきた。


「助けてください!私の娘がまだ中に……」



反射的に、


「無理ですよ」


と答えそうになった。


でも――


もしかしたら、グランベアの時みたいに、何かできるのかもしれない。


私は、ぐっと堪えてから、


「ちょっと待ってください」


と答えた。


こっそり、隣にいるラスターを肘でつつきながら、


「ラスター、何かいい方法はないの?」


と小声で聞いた。


「そうですね……」


ラスターが考える。


その間にも、火の勢いは増していった。


「早く!」


私が急かすと、ラスターが顔を上げた。


「豪雨を降らしましょう」



――豪雨を降らす?


それはいいけど、生半可な雨では火は消えそうにない。


そんな雨、降るの?


半信半疑な私を、ラスターが、引っ張っていった。


人だかりから、少し離れる。


「豪雨を降らす呪文があります。これを使いましょう。」


ラスターが、鞄からミニサイズの本を取り出した。


「なるべく、大きな声で。私の後に続いて。」


「うん。」


大きく息を吸い、ラスターの後に続いた。


『ヴロヒ、ペセ・ディナタ!!』


……風が冷たくなってきた。


辺りが、とたんに暗くなる。


そして、ゴーッという音と共に、バケツをひっくり返したような雨が降ってきた。


まるで、1年分の雨が一気に降ってきたかのようだった。


見る見る火が小さくなっていく。



集まった人たちから、歓声が聞こえた。



「ラスター、火の勢いが弱まったわ!」



喜ぶ私にラスターは首を振った。



――そして、とんでもないことを言った。


「鎮火するまで、まだ時間がかかります」


「シスターシーナ。中にいる人を救出してください」





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