第11回 いってくる
「シスターシーナ。中にいる人を救出してください」
ラスターが、また無茶を言った。
私は、元救急隊員でもなんでもない。
「そんなこと、できるわけないじゃない。」
「鎮火に向かっているとはいえ、まだ燃えているのに。」
人のために、命まで投げだしたくはない。
「シスターは、バリアが張れるのです。」
「バリアを張れば、火は熱くありません。その中に、救助する人を入れてくればいいのです。」
簡単そうに言うラスター。
いやいや、普通に怖いよ?
行き渋る私に、食堂の主人がすがりついてきた。
「シスター、お願いです!どうか、どうか娘を……」
顔を涙でぐちゃぐちゃにして、訴えてくる。
私ではない、誰かが助けられないだろうか。
……いや、この場にはいない。
この場で娘さんを助けられる可能性があるのは、私だけ、か。
それならば、仕方ない。
私は、覚悟を決めた。
すうっと、息を吸うと、ラスターを見て言った。
「ラスター、早く呪文を教えて」
「はい!」
ラスターが、勢いよく返事をした。
さっそく、ラスターの後に続いて呪文をとなえると、薄いピンクの膜が私を覆った。
「……この膜は、十五分しか持ちません。もし、消えてしまった場合は、先ほどの呪文を、もう一度唱えてください。」
十五分?
それは、救助するのに足りる時間なんだろうか?
私は、冷たい汗が背中を伝うのを感じた。
――こうしている間にも、救助できる可能性が低くなっていく。
大急ぎで、呪文を繰り返して覚えると、私は歩き出した。
「ラスター、いってくる。」




