第40話 実践しましょう
シスターミッチーの手紙は、共感することしかなかった。
ミッチーは、元の世界に帰ろうと思っていたのに、帰らなかったんだ……。
やっぱり、元の世界に待っている人がいない、というのが大きかったようだ。
それに、手紙に書いてあるように、村の人たちは良い人ばかりだ。
だからこそ、よけいに帰りづらくなる。
――この手紙、もっと早くに読みたかったな……。
『村に馴染んでしまう前に、早めにお帰りになることをおすすめいたします。』
本当に、その通りだ。
でも……もう、早めに、ではなくなってしまっている。
私は、村に居場所ができてしまった。
シスターの仕事を分担したこと、
時間をかけて準備した村祭り……。
それに……、ラスター。
思い出とともに、村人の顔が浮かんでくる。
――私は、どうしたらいいのだろう?
手紙をしばらく眺めていると、
――バンッ
ドアが開いて、ラスターが帰ってきた。
私は、急いで手紙を隠した。
あ、ラスターは、日本語読めないっけ。
でも、なんとなく、目に触れないようにしてしまった。
「シスターシーナ、聞いてきましたよ。」
「何を?」
「ジュリアさんと、食堂の主人に、話を聞いてきました。」
……あっ、ラスターは、『恋人の定義』を聞きにいったんだっけ。
シスターミッチーの手紙で、すっかり忘れていた。
「あ、そうだったわね。」
「……で、なんて言ってた?」
ラスターは、鞄からメモを取り出した。
まって、わざわざメモしたの!?
「ええとですね、」
「食堂の主人は、そのままでいいと言われていました。あと、信頼関係も、大切だそうです。」
――食堂の主人、ありがとう。
よかった、変なことを言われなくて。
「そして、ジュリアさんですが……。」
ここで、言葉に詰まった。
あれっ?
めずらしく、ラスターが言いにくそうにしている。
「まあ、そうですね。」
「私には、ちょっと早いかもしれませんね。」
と言って、ノートをパタンと閉じた。
なんだか、ラスターの顔が赤い。
ジュリアさん、ラスターに何を言ったの!?
「さっそく、明日から実践していきましょう。」
ラスターが、すました顔に戻った。
実践って……。
恋人って、こんな感じだっけ?
恋人(仮)だからかもしれないけれど、何か違う気がする。
ラスターの言葉に、授業を受ける生徒のような気持ちになってしまった。




