第4回 村人の話
「シスター、助けてください。」
村を視察していると、早速声をかけられた。
ここは、シスターらしく、
「どうしましたか?」
と優しく聞いてみた。
「畑にグランベアが出て、農作物を食べていくんです。このままじゃ、全滅です。どうか、助けてもらえませんか?」
グランベア?
それは、どんな生き物だろうか?
なんとなく、熊っぽい雰囲気だけど、私に退治できるスキルなどない。
解決するのは無理だと、素早く判断した。
「ごめんなさい、私にできることはなさそうです。」
きちんとお断りをして、次に進もうとした。
でも、ラスターが動かない。
「それは困りましたね。詳しく話してもらえませんか?」
村人の話をさらに聞き始めた。
え。
これ以上聞いても、意味がないんじゃ……。
そんな私をよそに、村人の話に、ずっと相槌をうっているラスター。
しばらくして話を聞き終えると、ラスターは村人に言った。
「では、あとはお任せくださいね」
笑顔で村人と別れるラスター。
村人の姿が見えなくなると、私は、ラスターの腕を掴み、道の端へ引っ張っていった。
「そんな簡単に引き受けて大丈夫なの?長々と話を聞いちゃって……。」
「できないことは、断ったほうがいいんじゃない?」
不安になった私を気にすることもなく、ラスターは言った。
「村人の要望は、シスターが請け負うことになっていますので。」
「それと、シスターシーナ。もう少し、村人の話を聞いてあげるようにしましょう。」
やんわりと注意された。
――それは、どうだろう?
効率よく仕事をするには、無駄な話は省くべきだ。
「……よくわからないけど、無駄は省いたほうがいいと思うわ。」
そう言うと、ラスターの目が少し険しくなった。
「無駄、ですか?」
「村人の話は、無駄なことではないですよ。」
「丁寧に聞くことによって、わかることもあります。なにより、聞いてもらえると、安心するでしょう?」
「シスターと、村人は、こうやって信頼関係を築くのです。」
一気に、言われてしまった。
そ、そんなに言わなくてもいいじゃない。
それに、私、シスターになると決めたわけじゃないのに。
でも……、
ラスターの言葉が、私の心のどこかにひっかかった。
なんでだろう?
私は、ひっかかった理由が知りたくて、自分の態度を思い出してみた。
毎日、自分の仕事で忙しく、余裕のなかった私。
話をゆっくり聞いている暇なんてないと思っていた。
だから、話を少し聞いて、無理そうだと判断すると、話をさえぎっていた。
そのせいだろうか。
最近、部下たちが、私に相談することが少なくなったような……。
とはいえ、私は、できないことは「できる」と言いたくない。
期待させて、できなかったら、そのほうが相手に迷惑がかかりそうだ。
もし、話を聞くことで信頼関係ができるなら、それはとても難しそうだった。
……まあ、今考えても仕方ないか。
とりあえず、この件については保留しよう。
私は、頭を切り替えることにした。
そして、また次の村人に会いに行くのだった。




