第36話 ピンクの花の髪飾り
「早く髪を乾かさないと、風邪をひきますよ。」
「シスターシーナ、今日は帰りましょう。」
理由をつけて、帰ろうとするラスターを、私は通せんぼした。
「ラスター、ここまできてそれはないと思うわ。」
「この髪飾りの意味はなに?」
ラスターは、しばらく黙っていたけど、やがて、観念したように言った。
「……その花は、」
「白の花は、未婚者を意味しています。赤の花は、既婚者です。」
「ピンクの花は……」
「……恋人がいます」
んん?
私に恋人?
なんで?
「ラスター、村人に嘘をつくのはよくないわ。私には恋人はいないわよ。」
ラスターは、下を向いた。
「お祭りは、たくさん人が集まります。」
「シスターシーナが、よからぬ人から声をかけられてはいけないと思いまして……。」
「我ながら、いい考えだと思ったのですが……どうやら、皆さんに勘違いされてしまったようですね。」
どうしましょうね、
と続けるラスター。
私は、頭を抱えたくなった。
もう、盛大に勘違いされている。
「おめでとう」と、何回言われたかわからない。
どうしましょうね、どころの話ではない。
「ラスター、明日からどうするのよ……」
うーん、とラスターはしばらく考えた。
「そうですね……。」
「では、私が責任をとります。」
ど、どういう責任!?
まるで、失敗した部下をフォローする上司みたいになっている。
「私、責任をとって辞任します。」
なんて、言い出しそうな雰囲気だ。
「ら、ラスター?無理しないでいいからね?」
真面目なラスターが、何をするのか心配だ。
ガタガタと体が震えたのは、夕暮れの風のせいだけではない気がした。




