第29話 異世界のカフェ
ラスターに案内されたのは、かわいらしい雑貨が店内に飾ってあり、観葉植物が置いてある、落ち着いた雰囲気のカフェだった。
ふーん、いい場所知ってるじゃない。
もしかして、ルシファーさんと来たのかな?
女性が好きそうなところを知っていることを、ちょっと意外に思った。
メニュー表を開くと、やっぱり読めない文字が並んでいる。
「ラスター、この字は読めないわ。どれがおすすめ?」
「そうですね……。」
メニューを見て、考えるラスター。
「村では、あまり食べられない物を頼んでみるのもいいと思います。」
「これは、ここでしか飲めなくて、おいしいようですよ。」
なんでも、南でとれるフルーツの生搾りジュースらしい。
「じゃあ、それにする。」
ラスターも同じ物を頼んだ。
店員さんが運んできたグラスには、紫色の液体が入っている。
えっ、紫?
南で取れるフルーツのイメージで、黄色を予想していた。
大丈夫かな?
どんな味がするんだろう……。
飲むのを躊躇していると、
「うん、おいしいですね。」
ラスターが飲み始めたので、私も恐る恐る飲んでみる。
「あ、おいしい!」
濃い紫色からは想像できない、サッパリした味がした。
ブルーベリーとか、ラズベリーに似た味かもしれない。
「よかったです。」
ラスターが、ニッコリした。
ん、ニッコリ?
ラスターがニッコリした??
「ラスター、ラスターって、そんな顔もするのね?」
今まで、この表情を見たことあったっけ?
「なんですか。私だって笑いますよ。」
ちょっと、不満そうだ。
「でも……、」
ラスターが言葉を切った。
「シスターミッチーが亡くなってからは、笑うことが少なくなっていました。」
「シスターミッチーは、私のことを、まるで孫のように可愛がってくれたので、いなくなってしまったことが、とても寂しかったのです。」
「ところが、不思議なことに、最近は毎日が楽しいのですよ。」
「シスターシーナ、あなたが、こちらに来てからは。」
「色々なことを思いつくので、私は、飽きないですよ」
真っ直ぐな目で見られて、ぱっと視線をそらした。
私の思いつきを、「飽きない」、なんて……。
会社では、「生意気だ」、って言われていたのに。
「そ、そう。それは、良かったわね。」
「はい。良かったです。」
そう言うラスターの顔は、穏やかで。
そんな顔をされると、今までに感じたことのない、なんとも言えない気持ちが胸の中に広がっていくのを感じた。




