第26話 村祭りのお買い物
7/23 第2話〜、気になった話を、ところどころ改稿しています。
ニコライさんの返事を待つ間、村はいつも通り平和だった。
「暇だわ……。」
私は、机に突っ伏してつぶやいた。
「なんですか、シスターシーナ。」
ラスターが、振り返った。
「村の人たち、とても働き者じゃない?私の仕事、ほとんどないの。」
「シスターシーナ。そんなことはありませんよ」
ラスターが、不敵な笑みを浮かべた。
……なんだか、悪い予感がする。
「あー、そんなことなかった。あれをやらないといけなかった。」
「あれって、なんですか?」
すかさず聞くラスター。
「あれといったら、あれよ。ほら、シスターの仕事で、大事なやつ。」
……なんか、うちの部長、こんな感じだったな……。
まさか、真似する日がくるなんて思わなかった。
「……そうですか。」
ラスターは、意味ありげに「ふーん」とつぶやいた。
「では、『あれ』が終わったら、明日は私と一緒に来てくださいね。」
ラスターの目が、妖しく光った気がした。
明日?
いったい、何があるというのだろう。
それに、ラスターが妙に楽しげなのも気になった。
今まで、こんな表情、見たことない……。
何が待っているのか気になりすぎて、明日が不安でしかなかった。
――――――
「シスターシーナ、行きましょう」
次の日の朝。
ラスターが、迎えに来た。
あれっ?
いつもより、時間が早くない?
「ラスター、まだ準備ができていない。」
「大丈夫です。いきましょう」
何が大丈夫なんだろう?
髪くらい整えさせてほしい。
結局、少し待ってもらい、準備を整えた。
「準備できたわ。行きましょう、ラスター。」
でも、ラスターは、部屋を出ようとしなかった。
「シスターシーナ、今日は、ちょっと遠出をしようと思います。」
そう言うと、ラスターが魔法の本をとり出した。
「そのために、久しぶりに、魔法を使ってもらおうと思います。」
魔法を使うんだ!
私はちょっと嬉しくなってしまった。
やっぱり、魔法は特別感がある。
でも……、
どうして今なんだろう?
「魔法を使うのはいいけれど、何の魔法を使うの?」
ラスターは、あるページを開くと、こう言った。
「シスターシーナ。瞬間移動魔法を使います。」
「私と手をつないで下さい。」
そう言って、手を差し出すラスター。
えっ、ラスターと手をつなぐの?
少し動揺したけれど、ラスターは、いつもと同じ顔。
相手はなんとも思ってないようだ。
……これは、動揺したと思われたくない。
私は、すっと手を差し出すと、
「これでいい?」
ラスターの手を必要以上に、ギュッと握った。
「そうですね。もう少しですね。」
「大変なことになるので、くれぐれも、手を離さないでくださいね。」
念を押されて、手を絡めるようにして握りなおされた。
これは、いわゆる恋人繋ぎでは!?
「は、早く呪文を教えて!」
「では、お願いします。」
すました顔で、ラスターが言った。
「メタフォラー・スティン・ポリ!」
――――――――
気がつくと、賑やかな場所にいた。
――移動、できたのね。
私はあわてて手を離した。
道の両側には、たくさんのお店が並んでいた。
その光景は、まるで海外のマーケットのようだった。
「こんなところがあったのね!」
村とは違う、華やかな賑わい。
見慣れない建物。
まるで、旅行に来たようだ。
「はい。ここは、『ここに置いてないものは無い』と言われている、なんでも揃う巨大マーケットです。」
ラスターが説明してくれた。
「今日は、来月に行われる、年に一度の村祭りの買い出しをします。」
「シスターシーナのおかげで、ここまで一瞬でこられました。」
「毎年、一週間ほどの長旅でしたので、とても助かりました。ありがとうございます。」
そうだったんだ。
魔法の力ってすごい。
ラスターに感謝されてしまった。
「ま、まあ、いいのよ。」
「来月、村祭りなのね。何を買うの?」
私は、照れくさいのを隠して、ラスターに聞いた。
「そうですね……。」
ラスターが、リストを鞄から出した。
「出店や、飾り付け用に、色々買わなければいけません。」
「シスターシーナ、覚悟はいいですか?」
……え、なんの覚悟?
買い物に必要な覚悟って?
私は、ゴクリと唾を飲み込んだ。




