第2話 ここはどこ?
――目が、痛い……。
閉じるのが少し間に合わなかったようだ。
少しずつ目を開けるけど、視界がぼんやりする。
徐々に、視界がはっきりしてきた。
あれっ、
ここは、どこ――?
まず、目に入ってきたのは、十字架。
そして、並べられた椅子と机。
もしかして、教会?
私には馴染みのない場所だった。
さっきまで、会社にいたはずだった。
なんで、こんなところにいるんだろう?
よくわからないけど、帰って寝ないと、明日も仕事だ。
きっと、外に出れば帰れるだろう。
私は、迷いなく扉を開けた。
「なにこれ……?」
扉の外は、見たことのない風景だった。
私は丘の上の教会にいるらしい。
なんとも、のどかな風景が、そこには広がっていた。
こんなところ、私は知らない――。
呆然として、その場に立っていると、
遠くのほうから声がした。
「シスターが復活されたぞ!!」
「本当か!?」
それをきっかけに、次々に集まる人、人、人……。
夜中なのに、みんなどこから集まってきたんだろう?
あっという間に、人でいっぱいになった。
そして、私を見つけると、喜びの声が上がった。
「バンザーイ!」
「よかった、シスターがきた!」
中には、涙ぐんでいる人さえいる。
――ど、どういう状況?
村人の一人が私の横に来た。
「シスター、あなたをお待ちしておりました。」
「どうか、この村をお導きください。」
期待に満ちた眼差しだ。
いやいや。ただの課長の私が、村を導けるわけがない。
何か、勘違いされているようだ。
……これは、早く誤解を解かないと、大変なことになる。
私は、即断し、
大きな声で叫んだ。
「待ってください! 私はシスターではありませんっ!」
――ピタッとざわめきが収まった。
効果あった?
これで、わかってくれたかな?
村人たちをそのままに、さっきの教会に入ろうとすると、
「お待ちください」
静かな声がした。
振り返ると、
杖をついた、どことなく威厳のある老人がいた。
もしかして、長老?
「驚かれるのも無理もない。」
老人が話し始めた。
「この村には、古くからの言い伝えがありましてな、
『シスターが亡くなってから、三年経つと、次のシスターが現れる。夜中に、その扉は開かれる』
と。」
「この村のシスターは、みな、突然この地に現れる。前任のシスターも、最初は戸惑っておられた。あなたもこれから、慣れていけばよい。」
その言葉に、うなずく村人たち。
「前任の方は、とても遠いところから来たと言っていた」
「シスターは、いつも俺たちのために働いてくれたよ」
「最初から、完璧な人はいない。
徐々に慣れていけばいいよ」
――完璧じゃなくても、いい?
そんなことを言われたのは、初めてだった。
案外、良い人たちかもしれない。
村人たちの言葉に、少なからず心を動かされた。
それに、前のシスターは、働いたことで感謝されているようだった。
私も、仕事をするなら感謝されたい。
でも――
ちょっと待って。
私がシスターなこと、決定してない?
「シスターよ、今夜はゆっくり休んでください。」
「夜ももう遅い。みんな、気をつけて帰るのじゃ。」
長老の言葉で、村人が帰っていった。
残った私は、長老に案内され、教会の横の小屋で休むことになった。
なんだか、とても疲れた……。
そうだ、私は一日働いた後だった。
早く寝ないと、明日に疲れが残ってしまう。
――この時の私は、明後日の会議のほうが気になっていたんだ――。




