第13話 揺れる心
今日のお昼は、ご馳走だった。
部屋の中に、いい匂いが広がっている。
教会のキッチンで、食堂の店主が、火事の時のお礼にと腕をふるってくれたからだった。
どの料理も、とても美味しい。
お店がまた開店したら、絶対に食べに行こう。
私は心に決めたのだった。
「あの時は、本当にありがとうございました。」
「娘も、お陰様で、元気になりました。」
「メアリ、ほら。」
名前を呼ばれた女の子が、店主の後ろから出てきた。
「お姉ちゃん……、ありがとう。」
ペコリと頭を下げる。
「どういたしまして。元気そうでよかったわ。」
助けた時は、ぐったりしていて心配だったけど、もう大丈夫そうだ。
「やっぱり、シスターが村にいらっしゃると、安心感が違いますね。」
「シスター、これからもよろしくお願いします。」
店主に、ガッチリと握手をされた。
そんな店主に、私は、上手く返事ができなかった。
――――――――
「ラスター。」
お昼ご飯の後。
私はラスターに声をかけた。
「なんですか、シスターシーナ。」
書類を見ていたラスターが顔を上げた。
「今までのシスターの中で、もとの世界に帰った人って、いたの?」
火事の時から、気になっていた事を聞いてみる。
「そうですね……。」
少し考えるラスター。
「私は、シスターミッチーと、シスターシーナしか存じませんが……、」
でも、とラスターが続けた。
「少なくとも、私が知る限りでは戻られた方はいませんね。」
……思った通りだった。
こんなに、村人に頼りにされては、
戻りたくても戻れなくなる。
ちょっとしたら帰ろう、なんて思っていた私ですら、今、心が揺れている。
帰ったら二度とこちらに来れないし、次のシスターが現れるまで三年もかかることが、ますます判断を難しくしていた。
どうしたらいいんだろう?
前任のシスターミッチーに、どうして元の世界に戻らなかったのか聞いてみたい気持ちになった。
――でも、彼女はもういない。
この気持ちを、相談できる人は、この世界にいないんだ……。
なんだか、言いようのないモヤモヤが、心に広がるのを感じた。




