表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

2話

「くぅ……」


 熱い体に、アルコールが染み渡る。

 私はお酒を飲みながら、ゆっくりと帰宅する。

 私が住んでいるのは、アパートのワンルーム。財布から鍵を取り出して、鍵を開ける。


「ただいま」


 買ってきたお酒とスイーツを冷蔵庫に入れる。

 飲み掛けのお酒を一気に飲み干して、シャワーを浴びた。

 下着を着て、大きめのTシャツを着る。

 夏場の超ラフな格好である。


「お腹空いた……」


 冷蔵庫を開けて、食材を確認する。

 うどんがある。茹でればいいか。棚を見るとレトルトのミートソースがある。パスタは無いからうどんにかけるか。

 ミートソースうどんを作り、私は食べた。


「うーん、悪くは無い……けど、普通にパスタが良い」


 食べ終わり、食器を水に浸ける。

 冷蔵庫からケーキとシュークリーム、お酒を取り出す。

 私はスイーツとお酒の組み合わせが好きなのだ。

 至福の時間を過ごしていると、スマホが震えた。


「雪か……」


 高校時代の友達、雪からのメッセージだった。

 内容は今度の土曜日にランチをしようとの事。

 私の会社は休みはシフト制だ。幸いにも土曜日は休みだった。

 私は雪に承諾のメッセージを返した。


***


 土曜日。

 電車に乗り、待ち合わせの場所に向かう。

 待合せ場所は街の中心部にある駅。


「……」


 駅内で空調は効いているが、人混みのせいで体力がゴリゴリと削られていく。

 私はジーンズとTシャツのラフな格好。

 一方、雪の方は白のブラウスに、黒のロングスカートといった大人っぽいコーデだった。


「あ、美咲!」


 私に気づいた雪が、花が咲いたような笑顔を向けて、私に手を振る。

 私も小さく手を振って返した。


「久しぶり、雪」

「久しぶりね。あまり変わって無くてびっくりした」

「……そう」


 まあ、高校生の頃から服装や身嗜みなどは無頓着で最低限しかしていない。


「雪は……綺麗になった」


 高校生の頃も綺麗だったが、まだあどけなさが残っていた。


「あら、嬉しいことを言ってくれるわね」


 雪はそう言って、長い黒髪を靡かせる。ふんわりと香水の香りが漂ってきた。


「美咲も……綺麗になったわよ」


 一瞬間があった後、雪は笑顔でそう言った。


「お世辞は良いよ。どこかお店に入ろう」

「……そう。私、行きたいお店があるの」


 と、雪の提案で、お店はイタリアンになった。

 高級なとこではなく、雑居ビルの一階にある小さなお店。価格も安くて、千円台でランチが食べられるようだ。

 私達はそれぞれパスタと、大きめのピザを一枚頼みシェアする事にした。

 食事が進む中で、雪は真剣な表情で口を開いた。


「起業するわ」

「……起業、て……会社作るの?」

「ええ」


 私には縁がない話を理解するのに少し時間が掛かった。


「IT系の会社を作るつもりよ。詳しくはーー」


 雪は私に説明してくれるが、よく分からない。

 分からないまま、聞きながら頭では別の事を考えていた。

 雪が起業か……。

 思い返せば、雪は高校生の頃から行動的な人だった。欲しいブランドのバッグがあれば、学校終わりに毎日バイトをしていた。人の上に立ってみたいと言う理由で生徒会長に立候補してみたり、結果は落ちたけど。

 雪のエピソードを上げるなら、両手の指では足りない程である。


「美咲。私の話聞いてる?」

「ん?」


 私は頬張っていたピザを呑み込むと、答えた。


「聞いてる」

「そう。じゃあ、どんな話をしてたのか答えて」


 雪がジト目を私に向けてきた。

 私はゴホンと咳払いをすると、胸を張って答える。


「私の力を貸して欲しい、てことでしょ」


 ここまで、長々と話したのだ。話の内容は全然頭に入ってこないけど、私の力を借りたいから長々と話をしたに違いない。

 私の答えを聞いた雪はドンッとテーブルを叩いた。


「全然、違うわっ!」

「え?」

「第一、美咲っ! あなたパソコン使えないでしょ? どうやって私の仕事を手伝うの?」

「そ、それは……」


 言い淀みながらも、頭を回転させる。


「笑顔」


 頬を引き攣らせ、笑顔を浮かべる。ついでにウインクもしてみる。

 雪の額に血管が浮かび上がる。それを見て、私の頬に汗が垂れた。


「笑顔……? それって、あなたが今している変顔の事かしら? 後、頬にチーズが付いているわよ」

「……」


 精一杯作った笑顔が変顔と酷評され、胸がズキリと痛んだ。頬に付いたチーズはティッシュで拭う。


「はぁ……まあ、良いわ。あなたには難しい話だと思っていたもの」

「……私がバカみたいじゃないか」

「えっ、あなたはバカよ」

「……」


 すごく泣きたくなってきた……。


「バカにするために呼び出したんなら……帰る」


 家でスイーツのやけ食いをしてやる! カロリーなんて知ったものか!

 私は立ち上がろうとテーブルに手をついた。


「美咲。それは誤解よ……ただ、友達と久しぶりに会ってお話ししたかったの」


 雪は僅かに頬を赤らめると、それを隠すかのようにコーヒーを飲んだ。


「そっか……」


 私はテーブルから手を離す。赤くなった雪の顔を見ていると、私の顔も自然と赤くなっていく。

 コーヒーに追加で砂糖を入れて、一口飲む。


「そういえば……美咲は何かやりたいことはないの?」

「やりたいこと……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ