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お花摘みと実験

恋愛の勝者は場数。美咲は、模試会場で美しい少女「サクラちゃん」と会い、少しづつ距離を縮ませていく。そして、千代田女学園へ特待受験。美咲は無事、千代田女学園での百合生活を送ることができるのか!(これには前の話があります。出来たらそちらも読んでいただけると嬉しいです)

模試会場の中には裕福な豚たちと可憐なお花たちが居座っていた。


すみれのように、小さいけれど、その存在で周りを癒してくれそうな子。


薔薇のように気品高く、裕福な豚に近いが、そのツンデレさにはときめきを隠せなくなりそうな子。


ひまわりのように明るく、どう見ても非の打ちどころがないような子。



そして、猫じゃらしやシロツメクサのように、どこにでもいて、顔は覚えられる。だけど、先方よりは魅力が少ない「大多数」の子達。


私が望んでいるのは大多数じゃない。確かに、多くの人の心を掴むには大多数のものたちの動きを理解しなければならない。しかし、そのような容易いことはわざわざ彼女たちと付き合わなくてもすることはできる。それに、私の望む運命の相手は、決して大多数ではない。だから、狙いは・・・


「ッカーン……」


突然、静寂な会場内に甲高い音が鳴った…

ペンケースが落ちた音。受験生にはあるまじき行動だ。ペンが散乱したのだろう。周りの豚たちがクソみたいに嘲笑している。大多数の花たちは、見て見ぬ振りをする。助けるのではなく、こいつみたいにはならないというオーラを醸し出している。


ペンケースを落としたお花は、サクラのようだ。美しい。この子を実験体にしたい!

サクラはおそらく、横から1列後ろに2列の位置にいる。近い…!

美咲は一瞬、にやっとするとすぐに立ち上がり、サクラの元に行った。


「大丈夫?手伝ってもいいかな?」


少し、声のトーンを上げ、仕草をふわっとさせる。それだけで相手からの見え方は格段に変わってくる。

急に、名前を言って仲良くなれるのは、せいぜい幼稚園児まで。ここでは最初から名前を言ってはいけないはず…

でも、こういけば、小学生相手はちょろいはず!

「そのキーホルダーってもしかして、髭ワニかな?私も髭ワニ好きだよ。ほら!」


美咲は髭ワニのキーホルダーをサクラに見せる。すると、サクラの焦っている顔も少しづつ直っていく。

この髭ワニのキーホルダーは1ヶ月前に実験体への接触のために買ったものの一種だ。接触の仕方も考えておく。それが、マドンナとしては王道だろう。


少し、距離も縮んだことだし、ここで名前を言ってもおかしくはないはず!


「私、たかはっ…」 


「友達になってくれませんかっ……!こういうところで……仲間を作りたくって…!」


私より早かった…

私の自己紹介を遮って、自分の名前も言わずに…友達になって欲しいと……小さいけれど、芯がある声で


はい、堕ちた…!


「私、高橋美咲って言うんだ。なんて、呼んでもいいよ。あなたのことはサクラちゃんって呼ぶね。」


「あの…!美咲ちゃん……私は、私の名前は…ゆう」


「まぁまぁ、そこは気にしないでもいいんじゃない?だって、私たちはもう友達なのだからね」

誰が、仮の実験体を名前よびするものか…あのこが可愛いのは認める…緊張していたのも認める…


でも、ペンケースを落とすような子、きっと千代田女学園までは来れないと思う…

私の望んでいる完成体の花ではない「サクラちゃん」じゃなくてまるで「モモちゃん」ね…


「サクラちゃん、まだ少し時間あるみたいよ。お手洗い行こっか」

試験開始まであと20分。早めに来て悪くなかった。


手洗い所は早めに来たからかあまり混んでいなかった。ここなら、モモちゃんの人間性を見つめることができる。


手洗い所でのモモちゃんの視察の結果、モモちゃんは実験体に合っていた。ハンカチは持っている。

自信も持ったのか、他の緊張している受験生を励ましていた。素晴らしい。やっぱり、私の目は間違っていなかったか。手洗いから試験会場に戻る時、モモちゃんは胸を張っていた。


油断してる。これなら行ける。


試験の休み時間の間にもモモちゃんのケアはじっくりした。モモちゃんは算数がいつも通りにいかなかったらしい。算数は、簡単な図形と計算のみ…そんなに難しかっただろうか…

試験が終わったあと、モモちゃんに紙を渡した。電話番号と少しの言葉。


あとは電話が来れば……とりあえず誘導して付き合うか……


「プルルルルルルルル…プルルルルルルルル……」


モモちゃんかな?電話番号は、「0XXー1XXXーXXX5」 

「一応調べよ…」


数分後…美咲の心の中は険悪だった。


「え?なんで?なんで迷惑電話なの?モモちゃん!絶対堕とせたと思ったのに!!なんでだよ!」

美咲の声は大きかった。多分、リビングまで聞こえてる。


まずい…母親にバレる。百合人生のために女子校目指してるってことがバレたら、もう受験なんてさせてもらえなくなる!!そんなんじゃ、今日、豚どもの中にいるのを我慢していた意味もなくなる!どうしよっ……

こめかみが熱くなっていた。前に泣いたのはいつだっただろう。もう、覚えていないほど遠い昔のことだろうな……


「プルルルル……プルルルr…」


「また、迷惑電話?もうやめてよっ……」


嗚咽の少し混じった声。でも、諦めず1%の希望を頼りに…!!


「もしもし?サクラちゃんですか?」


電話先からは安堵の混じったため息が聞こえる。よかった。モモちゃんだ。


「美咲ちゃん。電話、やっと繋げたよ!変な人にかけちゃったりもして、心が折れかけてたよ」

模試会場で会っただけの存在。話しただけの存在。心が折れかけている状態でまだ、電話がかけられるのか、この子は。いける、余裕で!


「サクラちゃん。せっかくの機会だし、受験のそれ以上の戦友(パートナー)にならない?」


沈黙が続いた。


やばい。やばい。やばい。これぐらいでダメだったら、女子校の花なんて付き合えるはずがない!


「美咲ちゃん、いいの?やったーー!おかあさーん。私、受験の戦友ができたよ!!ありがとう。美咲ちゃーん!!」

想定外の反応だった。


こんなにポジティブな反応で帰ってくるなんて…


まぁ、こっちの方が楽に進めることができるよね。


それから、私とモモちゃんはカフェでの勉強、ひとときの散歩デートなどを通して、愛を育む実験をした。そのうちに、モモちゃんも「百合」ってものを知ったらしい。最初は自分に彼女がいるという事実に戸惑っていたらしいが、1週間もするとその事実に逆に喜んでいた。


やっぱり、天性のお花はすごいな……


それから数ヶ月…


今日は、受験の結果発表の日。


モモちゃんは、私の学校より、少しレベルの低い幼稚な共学に受かったらしい。できたら、監視下に入れておきたかったんだけどな……



事務室の先生方が発表場所に紙を持ってやってくる。


昨日行われた数百枚のテストの採点という地獄的な時間を過ぎた先生たちは、異様に元気だった。


「現時刻から、千代田女学園特待 合格者を発表します」


発表されるなり、その場は笑顔と嗚咽がまみれる地獄絵図と化した。

それは、あの美咲にも訪れないとは限らない。


「ない…私の番号が…ない……どうして?……」

美咲の番号「315」はなかった。受かっていたのは、「280番、345番、452番」この3名のみ。他は落ちた。美咲もその大多数に入った。久しぶりの屈辱だった。手に持ったスマホを握り潰せそうなくらい強い思いが湧き上がってきた。


その時だった。


「高橋さんですか?学園長が会いたいと申しております」


「はい…」


どういうこと?私は受かるのですか?神様、どうなのですか?はぁ…怖い怖い


さすが、名門私立… 学園長室は美しい建築で出来ていた。

「来られましたか、受験番号315番。高橋美咲さん。学園長の清水美琴です」


清水美琴、日本の教育の第一人者で、その名は教育関係者以外にも伝わっている。


「私に何のご用でしょうか。私は…こちらの学校には落ちてしまいました」


「早速ですが、あなたは何を受験中に読まれていたのですか?」

急すぎる!え?百合漫画好きだったのバレた?最悪。ガチで無理なんだけど!!ここは王道でこう答えるのが正解だろうな。

「物語系です。好きな物語は、チャリティーショーのチョコレート工場です。」

どう返ってくるんだ?


「そうですか、いい話ですよね…私も好きです…あなたの国語の記述は素晴らしい感性で溢れていた…あなたのような人材をこの学校に置かないわけがない…」


「つまり…?」


「もちろん、特待入学です。生徒代表でね」

「ありがとうございます!!」


今までで一番の嬉しい気持ちの充満した体で千代女の門を潜って、美しい歩き方で家に向かった。携帯からは「モモちゃん」からの無数の着信音。あの子は好きだったけれど、所詮は実験体、別れよ。


美咲は「モモちゃん」の連絡先を消した。


「次は、誰に好かれるかな?」

よんでくれたひとがい

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