繋がる先は 同じ
おかわりに置いてあるクッキーは
まだ 数枚しか減っていない。
熱々のカップも
既に室温と馴染みゆったりと鎮座していて、
「私達の話題」以外は。
相変わらず リラックスの空気が流れている、
可愛いらしい レナの控え室。
この、「空気の差」を感じながら
「さっきまでの話題」と「レシフェの芯」、それを二つ並べてみると 「この状況」と「それ」はとてもよく似ていて、やはり 世界はフラクタルなのだなぁと
スペースの景色を観て 納得する。
でも、私は今 納得だけしていれば良い訳じゃなくて、それを彼女に伝える為に ここにいるのだ。
そういうこと よね。
だから チラリと私のことを見た、その瞳を捉えて
きちんと 話を始める。
「 あのね、 じゃあなんで。 レシフェは「変わらないだろう」って、言うのかって いうと。」
「う、うん。」
なんか レナの返事が。
いつもの私みたいになっているから、笑いそうになるけれど 彼女は真剣である。
だから 私もきちんと姿勢に筋を通し 直して
しっかりと茶色の瞳を観ながら
もう一度ゆっくりと 口を開く。
「 レシフェは、「もう見つけてるから」なんだよ。 「自分の目的」を。 「やること」、「やるべきこと」?「人生をかけてやる、なにか」を。 それが、レナとか 今、彼がやってることとかなの。 ほら、よく私達「落とし前をつける」って言ってたじゃない? それって、「自分なりのこたえ」なのよね。 彼は私が出会った頃から、それを追ってたし だから今、私達を率先して手伝ってくれてるし、あそこにいても誰も文句を言わないんだよ。 」
「………………………なるほど。」
ゆっくりと しかし畳み掛ける様に
私が「彼の芯の話」をするから。
レナと共に 「シン」とした部屋は
「今ここ」にも一本筋が通ったことを 現している。
「 うん。 かっこいいよね。」
「…………言わないでよ?私も、言えないもん。」
「 んー? もしかしたら私はどっかで言ってると思うけどな? でも、ずっと前だよ? レシフェ時々カッコいいのは事実だよね。 てか、そうかぁ レナ、うーん 確かに言えないのか。 うん、これを機会に言えばいいんだよ。 何事も 素直が一番。」
「………いきなりなに?ってなるじゃない。それに、時々じゃなくて。…いつもカッコいいわよ。」
「 それ、言わなくてどうするんですか レナさん。」
「無理無理無理。今更だもん………言えそうなら、言うけど。」
「 そう、その意気よ。 そう言ってくれれば、もっと世界は輝くわ。」
「ちょ、冗談はいいとして。………でも、なんかヨルの言いたい事は分かった。」
「 うん? ほんとうなんだけどな 」
多分 冗談抜きに
レナが日々、正直に彼を褒めれば。
レシフェには もっとチカラが漲るから
実際それで世界がもっと上手く廻る。
人間のモチベーションとはそういうもので、彼女は彼の光を増幅することができるのだ。
それは「お互いが相手を尊敬と尊重しているから」に他ならなくて、あの二人はこれからのいい見本にもなるだろう。
そしてまた、再びそれを受けて考え始めているレナを観ながら 私も順調にクッキーを減らすことに専念する。
まあるいかたち
しかくのかたち
花形っぽい なにか
そんな「いろんなかたち」を楽しみながら、
そろそろ手を伸ばすのを止めよう、そう思っていると
再び「基本的な疑問」が 返ってくる。
「でも、さぁ?………それなら、なんで「する」んだろう?「愛」も関係ない、勿論「子供云々」はあるけど、そもそも貴石なんて。………それは除外して存在してるじゃない?………えっ、てかやっぱり「娯楽」?…なの?んん~?」
「 そうね 」
確かにこれは基本的な疑問だが
そもそも「この世界の設定がずれてる」から
この疑問は 起こる。
そう、さっき 私が一人でぐるぐるしていた様に。
そもそもの そもそも
「私達が どういう存在か」、それを考え直さねばここは超えられぬ山であるし そろそろそこへ着手せねばならない。
多分、この質問は そういうことなんだろう。
だから レナの「微妙な?顔」を観ながらも
スペースのなかみを整列させ、「今 一番通りやすい順」に並べながら 口を開いていく。
「 あのね。 それは「そもそもがずれてるから」、なんだけど。」
「うん。そもそも?」
「 そう。 実際さあ? 所謂、なんで奥さん以外の人としちゃいけないのかって言えば、子供のことがあるからでしょう?まあ、「公の理由は」、だけど。 血縁がどう、とかで。 」
「うん。」
「 でも、先ず、 そもそも「愛が必要で」、更に「奥さんとしかできない」なら、政略結婚は成り立たないワケ。」
「ほう。」
「 ふふ。それに、「種の存続」、「家の存続」だけが目的なら、別にそれは誰としても、いい訳じゃん?」
「…………ふうん?」
段々と 丸い瞳が更に丸くなる様子と
「私」っぽくなっている、レナの返事がツボだけど
今は真剣な話をしているから 笑ってはいけない。
「 それで、 他の動物とか、まあ 植物、いろんな生き物達が「そうやって増えるやつもいる」から、「私達もそうだ」と思い込まされている? そう教えられてきた? まあ、「そういう風になっている」から、「そういうもんだと思ってきた」んだよ。 ほんとうは、そうじゃなくても。」
「…………なる、ほど?」
「 うん。 てか、その有り余る矛盾に誰も気づいてないワケ。 いや、気付いてないって訳でもなくて、気付いてるけど 覆せなかった?のか。 ほら、自分の考えを貫こうとして「いなくなった人達」のこと。 聞いたことない?レシフェとかから。」
「………彼からは、無いけど。エルバからなら、「そうかな」って思うのは聞いたことあるかも。」
「 そうね。 姉さん絡みのこともあったかもね。 まあ、でもそうやって 長いこと「これ」は 古く重い箱の中に入っていた。 自分がそうだったから、よくわかるけど 「触れちゃいけないこと」、じゃない。 大っぴらには。」
「まあ、そうね。真っ昼間から広場でする様な話じゃないのは、確かよ。」
「 ふふ、 時と場合を選んだ方がいいのは、そうだけど。 扱いが「タブーの域」に入ってる。 ホントはそんなものじゃないのに。 そういう空気を創り上げてきたのよね、そうしたい人達が。 まあ、隠しちゃえば都合がいいこと、いっぱいあるじゃない?」
「うん。」
「 それが積もり積もって、周りに回って、「今」なワケだけど。 で、質問に戻るんだけど「なんでするのか」は、人によって違うと思うから なんとも言えない部分でもあるよね。 その、自分が培ってきた「人生の中」で、 何がどう影響するかは人によって違うから。 でも 足りないものを埋める為に「それを利用してる」のは、そうだと思う。」
「ああ、それはなんか。分かる。」
彼女は 私よりもずっと沢山、この世界で「そんな場面」を観てきたんだろう。
納得の滲んだ瞳はもう、揺れておらず
落ち着いた様子でカップを手に取り 手で温めている。
だから 私もまた、「その納得」が 成るのを待って。
ゆっくりとお腹を摩りながら
ただ 空を観ていたんだ。




