ここだけの話
「…………て、言うか、ここだけの話よ?ここだけの話、実際ヨルって。他の人としてみたいと、思う?」
「 いいや?」
「まあ、そうよね。………でも相手がアレだしなぁ。」
どうやら 静かなお茶の時間は
レナの爆弾発言で終わりを告げたらしい。
まあ
別に、そこまでの「爆弾発言」でもないけれど
新婚のレナがそんなことを考えていたとは些か意外である。
だけど、姉さん達の話も聞いているから。
もしかしたら そちらからの話かも、知れないけれど。
「………いや、基本的にお客様のことを言うのはナシだと思ってるけど、ヨルだから。うん、言わせて、なんか?実際知ってそうだし??」
「 アハハ、なんだかわかんないけど 大丈夫だよ。 とりあえずどうぞ。」
「うん、あのね。………姉さん達はまあ、そんな感じなんだけど、逆に、そっちのお客様とか、ラピスの方からとか。まあ、向こうの店で話を聞く事もあるんだけど、なに、その、別の人と?………うん、してみたい人が意外といるのよ。ほら、殆ど親が決めた人と結婚してるから。」
「 成る程? でも、実行には至ってない?よね ? まだ」
「…………まだ、なんだ。………ヨルの認識でもそうなんだったら、いずれそれはあり得ない事でもないのね。………そうかぁ。なんか想像できないけど。まあ、でも、愛が関係ないなら、アリなのか。」
「 う~ん、でも。 みんな、興味本位と言うか、やっぱり「そういう意味で愛されたい」?んじゃないかな?? なんて言うんだろう、「本当に好き同士」?「溶け合っちゃう」、みたいな感覚、味わってみたいんじゃない? 話には聞くもんね。そういう描写があったりするし ?ん?こっちにはないか? でも、まず 女性は自分からそんなこと言っちゃいけなかったから。余計にそうなんじゃない? 」
「…………そうよね。いや、勿論私は無いんだけど、意外とそういう願望漏らす人、多いのよね。それでまた、姉さん達の話も相まってなんか。こう、うん、好奇心?旺盛な人が多いんだなって。………いや、相手と合わないと感じてる?のかな、満足してない人が多いんだな…って。」
「 そうね。 私もそれはわかるわ。 いや、違う違う。 なんだっけホラ、いつぞや話したじゃん?、湖のところで。 記憶よ記憶。 」
「………はぁ、焦ったじゃない。…まあ別にヨルが今、そう思ってても悪いわけじゃないけど。なんか、いつもの感じを見てると………うーん、なんか気焔、凄そうだもんね。」
「 っ、 「凄そう」 フフ 」
彼の 「いつもの感じ」が どうなのか、
それは私にはわからないけど。
レナが一人で唸りつつも、なんだかんだ 納得していっている様子が 面白い。
「 体だけで、「合う 合わない」を探すのは難しいとも言えるけど、その求めること自体は良いことだよね。 自分に正直になってるってことだから。」
「………まあ。そうも取れるわね?」
「 うん、だから 「自分の欲しい感覚」、「足りないと感じるところ」を埋める為に、なにかを求めるのは悪いことじゃないし、普通のことでも あるんだよ。 だから今、そういう流れが来てるのは自然とも言える。 まあ、本人達がどこまで意識してるかは、また全然別の話だけど そういうことだね。 」
「…………ふぅん。じゃあ、別に「他の人としてみたい」って、思わない私は。運がいいのかしら。」
「 だと思うけどね。 ああ見えてあの人、かなりレナのこと好きだからさぁ。 たまに観えると面白いの。 なんか、ホント 私にちょっかいかけてたのなんて、冗談だったんだってわかるから。 全然違うんだもん、ウケる 」
「………コホン」
照れながらも考え込んだ彼女は
今度はどんなことを 話し始めるのか。
それを楽しみに待ちながらも、いろんな風に拡がる世界を想像して 「その展開」に制限を付けない様、自分で「スペースのいろ」に雑味がないかを 確かめ始める。
そうだよ ねぇ
うん
自分の「一番の欲望」を叶えること
「それ」が 「なに」であっても
真剣に追い求めれば
必ず「自分の道」へ近づくし
必ず「そのこたえ」に 納得できる。
ん? いや
「納得できる様になる」のか
まあ
それは いいと して 。
「 ふむ 」
「それならさぁ?もし、いろんな人と試してみて、「自分の求めるもの」?…それが、見つからなかったら、嫌よね。だってそれって感覚でしょう?実際、世界のどこかにはいるかもしれないけど、その人に巡り合って、それでまたやれるかどうかなんて。何分の一かしら。」
「 「やれるかどうか」。 うん まあそうね」
「………だって、そうじゃない。それこそ、奇跡…よね?」
「 そうね? そうとも、言うね 」
さっき「思わない」と言った私と
彼以外は考えられない、というレナ
じっと私を見ている彼女は「ここに奇跡が二つもある」、なんて 思っているのだろう。
しかし 実際「奇跡」とは
別に「滅多に起こらないこと」などではなくて。
発露が「光から」だと忘れてしまった私達に後付けされた、「普通に当たり前だった光景」であり
「決めてきたことをベストタイミングで踏んでいった時の 顕れ」である。
だから 二人とも「然るべき様にしてこうなっているし」、私達は収まるべきところに収まっているだけで。
本来、「奇跡」などではないが まあその話は今、置いておくとしよう。
「 えっとね、でも、そこで「巡り合わないから」、ラッキーなんだよ。そこから、始まるの。 「それってどういうことなんだろう」って、思うんだよ。 それは「いない」のか、「まだ出会っていないだけ」なのか、 それとも「自分が想像している感覚が 違うのか」。 そこからまた求めるものが変わったり、いろんな?が湧いてきて、それをずっと追っていけば、 「自分の必要」に巡り合う。 」
「「自分の必要」?………その、欲しいものとか、求めてる事じゃなくて?」
「 そうね。 それを、ずっと求めていくと。 手に入った場合、それが「物」だと それはそれで色褪せたり壊れたり、手に入れた後は放っておいたりして、なんか「手に入れた時の鮮やかさ」は、薄れて行くじゃない? 実際、アレだって 飽きるっていうじゃん。」
「…………確かに。………たまに姉さんが言ってる………。」
「 フフ。 物じゃなければ、余計に。 例えば愛情、だとしても ずっとずっと好きだって言い続けてくれる人、自分に対してずっと丁寧に愛を注いでくれる人なんて。 実際 何人いるか。」
「それ!それも多いわよね~。なんだかんだ、最初は仲良かった夫婦も多くて。話を聞くとね。だから余計に世知辛くなっちゃう。………つい、心配にもなるし。みんな、「男なんてそんなものよ」とか言うのよ。」
「 フフ とりあえずレシフェは心配ないでしょ。 そこは「意志」の問題だから。 あ、そうそう そういうこと、なのよ。」
「………ん?」
「成る程なぁ」、と ポンポン進む話の展開に頷きながら パクリとオヤツをひとつ、口に入れて
レナにもひと休みする様、手で促す。
段々真剣味が増している彼女は拳を握り締めていて、体が緊張してきているのが わからるからだ。
それに別に、これは「脅かされる的な内容じゃあない」。
多分、普段からレシフェに接している彼女は
私がこれから言うことが とても理解できるだろうし、レナ自身もそういうところがあるから共感できると 思うんだ。
さて して
その「意志」が 「交わることの云々」と
どう繋がっていくのか。
自分もわからぬまま、
はっきりと視えている糸だけを掴んで
話し始めたんだ。




