ある意味新しい展開
「…………なに、って言えばいいのか。あのね、そこから確かに「お客」は減ったんだけど、なんか違う客層が増えてきてるのよね。」
「 ん? 違う? 客層 」
「そう。なんだろう、シンプルに言えば「純粋にそれそのものを楽しむ」、って言うか。………それを突き詰めるって、言うか。なんての、ほら、アレよ。」
「 もしかして、「絶頂感」のこと ?」
「…………ヨルの口からそう聞くのはなんか、ある意味新鮮だわ。でも、そういうこと。」
「 ふぅん ?」
思うに 「これまで」は
「秘密の浮気」
「息抜きみたいなことを楽しむ人」が多くて。
きっと「純粋にその体験」
「体感」
「行為を楽しむ人」というのは
多くなかったに違いない。
レナの意外そうな口調からは「そういう色」が感じられるが、しかし それはそれで、「わからなくは ない」。
「 ? 」
だったら実際、レナが話したいことは
一体、どういう「なかみ」なんだろうか。
「あのね、それに合わせられる姉さんならいいんだけど、今までと方向性が全く違うでしょう?だから、なにか噛み合わないらしくて。」
「 ああ 」
「そういう意味で、揉めたり………まあ、ちょこっとだけどね?姉さん達側の心の問題?もあって、ほら、そうなると「馴染みの相手」って言うより「体の相性の良い相手」な訳じゃない。なんだろう、前とは違った、割り切った関係になるのかな。相手をコロコロ変えるわけだし。だから、心のバランスが人によってはガッタガタで。」
「 成る程? 確かにその急な変化について行ける人は多くないかもね。 今までが、今までなだけに。」
「そうなのよ…。だから体調、って言うより心の事なの。ほら、お客さんはさぁ、外から来る訳だから勿論違って当たり前なんだけど、こっちは違うから。いきなり時代が変わった?………なんだろう、別の所で店をやってるみたいな感じよ。まあ、側から見てるからそう言えるけどね、渦中の姉さん達はまだまだ混乱中。」
「 なるほどねぇ 」
「問題」というか なんと言うか
これは 流れの中で起こる「必然的なこと」だけれど
確かに当事者達にとっては辛い「こと」で、慣れるまでには ある程度の「時間」が必要だろう。
だけどその前に「慣れる必要があるのか」、
そして
「それをそのまま受け止めるだけで良いのか」。
その色々をきちんと見て、乗り越えなければならないが その為に必要な「チカラのサポート」が「この小瓶達」ということなんだろう。
「 でも、勿論 レナはマッサージ続けるし。 それでいいし、私もまた蜜を創るよ。それが、これまでは「体メイン」のアプローチだったけど。ここからは「心メイン」って感じになるってことだ。」
「…………そんな、単純にいく?」
「 行くよ。 まあ、それしかないとも言うけど。 心と体は繋がってるからね。 それに、以前から心も癒していたから店が続いてるんじゃん。」
「…………そうかなぁ。」
「 そうだよ。 だから、今度からはそれも意識して、そこから入っていけば繋がってるから大丈夫だと思う。 そう考えれば、レナがこうして店をやっててくれる、っていうのも計画の一部なんだろうな 」
「え?………どういうこと?」
「 うーん 」
それを 言葉で説明すると、こんがらがるかも 知れないけれど。
きっと「私の扱い」に慣れたレナなら上手く翻訳してくれるだろうし、
「この流れ」は「せかいの一部」だが
「その光を実際積んできたのはレナ」だ。
だから 感謝の意味も込めて、きちんと精一杯わかりやすく 自分のことばで語ってみる。
「 えっとね、まあ、ここから客層が変わった理由も徐々にわかるだろうし、姉さん達の苦労にも それはそれで、其々のこたえが出る時が来るのね。 その、時代が変わって行くことで見えてくるものがあるから。 で、その大きな流れの中で、私とレナは 出逢ってて。 そんで、結局レナは癒しの店をやりたいって夢を叶えて、そしてその形も世界の変化と共に変わって行くし、 だからそれは自然な流れなワケ。 「変わるのが普通」、というか 。」
「………うん。」
「 だけど、それが どう変わろうとも。 ここまでやってきた「レナの仕事が土台になってる」から、新しいことを始めても繋がってチカラは通るし、馴染みも いい。 流れとしては最高だよ。 先ずは体を解してから、なかみ? 心に行くのは順番として必要だからね。 ここまでは下準備みたいなもので、こっから本質に入って行く。」
「えっ、でも。心って、どう癒すの?マッサージは、体じゃない。」
「 まあ、 そうね 」
改めて「どう」って 言われると
改めて
「なに」って言えるものは 無いのだけれど。
それは「レナのハートとマッサージ」があればそう成るだろうし、実際「それ」もまた「出して見せれるもの」じゃないから 説明するのは難しい気がする。
「 う~ん、 えっと。 あー、そうか。」
そうなると ちょっとまた、「はなし」は変わっちゃうけど。
でも 結局は 「そういう話」、です よね ??
検索し始めた明晰君が
スペースの中で 視せている映像は。
「レナが 客層が変わった理由」を姉さん達に話しながらマッサージをしている場面なのだけど、それが実現するには「レナがその話をわかる必要がある」。
そう、少しずつ
少しずつ
「体を解しながら」「心にアプローチして」、
柔らかくしながら染み込ませていくのだ。
しかし、この方法を取るには ここから「私の言うそもそも論」を受け入れる必要が ある。
この「受け入れること」がポイントで、
本心から納得していないものは他人の心を動かさず、マッサージと共に発揮される筈の効果は期待できないからだ。
「 う~ん ?」
「えっ、ちょっとなによ。教えて?あるんでしょう?」
「 まあ。 ある、けど。 新婚さんに わかるかわかんない。」
「……………て、言うか。ヨルに分かるなら、私にだって解るでしょうよ。新婚みたいなもんでしょ、そっちだって。」
「 確かに。 そういう意味で、言えば ?」
「まあいいから話しなさい。聞いてから、考えるから。」
「 それはそうね。 じゃ、ちょっと待って? 纏めるから。」
「はいはい。」
そう言うとレナは、
最後の一枚のクッキーを 私の口に放り込み
新しいオヤツを調達しに 立ち上がって食器棚へ向かっている。
だから その後ろ姿を観ながら
どう話そうか
考えようとしたけれど、それも止めて。
先ずは ストレートに
正直に話すしかないと、腹だけ括っておいたのである。




