世界と 私の様子
両手に包んだカップを 手で ふんわりと温める。
足の爪先から
頭のてっぺんまで
全身で保温できる様に、光達に頼んで体の中の 熱を集めて。
そうして、ゆっくりと体温に馴染んだお茶を入れながら この空気とこの時間、
レナが話そうとしてくれていること
そしてそれを耳にできる自分を 観る。
そもそも、私の足先は冷えやすいのだけど
こうして意識を意識的に通す様になってからは 大分改善されていて。
少しずつ 少しずつ
「せかいのチカラ」を上手く、持って来れている気がするんだ。
「微細な光を積むことで 可能性が育まれている」のを感じることも
「成る前のムズムズ」が 前よりはっきりと、
それに 気持ち良く感じられることも。
それはきっと、「せかい」を上手くこちらへ漏らせているからで 私は「その過程が視える様になってきた」のだ。
そう、いくら「繋げても」、自分が持ってきたその片鱗を感じられなければ それは
いつしか「夢想」と化す。
「ただ そうしているだけ」になり、「それを上手く使うこと」ができないのだ。
「今までの私」は中途半端に「その状態」であったと言えて、「出来ている時」と「出来ていない時」の差があったから 揺らぎが大きかった。
あの、「リズムの波の縦幅」が広かったんだ。
だけど 今はとても穏やかな波と共に流れているから、自分が積んでいる微細な光がムズムズと育成されて
「何かに成ろうとしている」まで わかる。
それはこうした、「穏やかな時間の中」にも確実に流れていて そういう意味で言えば「世界は揺籠」であり
優しく穏やかに育めば育む程、「生まれるもの」は「せかい」に近く成るんだろう。
「 まあ、「生まれるものも、優しく成る」んだろうけど。 それは、そうなんだけど 多分「せかい成分を多分に含むから」、そう成るし 「優しい」というよりは「どちらでもある」んだろうな 」
「…………13、14、15。うん、大丈夫ありがとう。で?そろそろ整ったかしら?」
「 ん? いや、いつでも大丈夫だけど?」
「………。まあいいわ。それで、どこから話そうかしら。」
どうやらレナは 私がスペースへ行ってレナのことを待っている間に「納品の小瓶」を数えて待っていたらしい。
話が始まれば、直ぐに戻るのだけど
気を遣って 整うのを待ってくれた様だ。
だから、その優しさにニコリと頷いて
「なんでもいいよ」と茶の瞳を見て しっかりと待つ。
「………その、本の話は…まあ、いいわよね。そもそもそれが原因でこうなってる訳じゃないんだし。………でもねぇ…今回の原因は。やっぱり世界の矛盾だと思うのよね。」
「 ふん? 」
珍しくレナから「そもそも論」が出て、齧ろうとしていたクッキーをサッと下ろす。
ゆっくりとした彼女の話し方に油断していたけれど、この話は ただの報告ではなくて
「世界の根本が具体的に動き始めた話」だ。
そう、これは「結果」で「足跡」だから
「誰かからそれを聞いている時点」で
その糸は織り込まれていて 新しい部分が観れる。
「あのね。………今のヨルには話しても大丈夫だと思うんだけど…まだなんか抵抗があるわね?うん、姉さん達の話なんだけどね?」
「 ふふ。 うん、大丈夫だよ 」
「なんか、さあ。こう言っちゃなんだけど、祭祀前までは物凄く忙しかったの。それこそ、開店してからこんなに忙しかった事はない、ってくらいだったらしいわ。………なんて言うか、前はほら、お忍びで違う時間を楽しむ?みたいな所があったのよ。だけど段々、狂った様に溺れる人が増えていったの。そりゃ、乱暴な人は時々いたけど、そういうんじゃなくて、なに?なんだろう、怖いのよ。目とか。雰囲気が。」
「 まあ、執着でしょうね。 てか、そうか。 そういう「依存」、か。」
「…ああ、イストリアも確か「依存」って言ってた。ある意味病気みたいなものだって。でも、確かにそうなのよね。なんか、外で見ると完璧に普通に振る舞ってるのに、店に納品に行った時見た、あの目つきったら………」
「 ん? でも、祭祀後は変わったってこと ?」
「………冷静だわね?確かに神になっただけあるわ。」
話しながら思い出したレナは、自分の腕をゴシゴシ擦って。
その「ゾワゾワした感覚」を 落ち着けようとしている。
「 いや、冷静というか、なんというか。レナが「祭祀前は」って言ってたじゃん? だから、本題はそっちなのかなぁって思った。」
「流石の洞察力ね。まあ、それで姉さん達の傷も増えたりして、一時は大変だったのよ。でも逆に、他の扉と繋がり始めたお陰で、新しい女の子も来る様になった。………お陰で、って言っていいのかわからないけど、兎に角それでギリギリ店は回ってたのよ。」
「 うん」
「一部の姉さん達は館の部屋を借りて、休ませて。ほら、あそこ今は誰も来ないでしょう?丁度いいのよね。」
「 新婚の家は 」
「その話は置いときなさいよ。部屋は沢山あるんだから。」
「 はい」
「で、祭祀後なんだけど。ほら、光が降りたから。」
「 ああ。 そういうことか?」
「そう。後ろめたくなったんでしょうね。そういう奴は、全く来なくなった。でも、それで姉さん達の傷が言える訳じゃないから、感謝するのはヨルの光と、時間にだけだけどね。」
「 「時間に感謝する」ってのは いいね。」
「いや、ヨルの光にもよ?………確かにあれは、凄かったものね………。なんて言うの、たまに言ってるじゃない、スクリーンがなんとかって。それってアレの事でしょう?」
「 そうそう。 そんな感じ。まあ、私は現場で見てないけど。凄かったらしいね?」
「ああまで、まじまじと見せつけられちゃあね。もう二度と来れないだろうし、隣に奥さんがいたら………考えたくないわ。」
「 ふふ」
「笑い事じゃないけど、まあいい気味よ。それでね…」
「 うん?」
どうやらこの話はまだ本題ではなくて
彼女の「ほんとうに言いたいこと」は その先にあるらしい。
しかし確かに 「この話だけ」ならば、
単純に 予測できる結果だから。
「美しい結果」には物足りないし
ここから先が 「新しい」んだろう。
だからとりあえず 持っているクッキーを パクリと口に入れて。
お代わりを用意しようかと目論みながら
話の続きを 待っていたんだ。




