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花をあげよう  作者: 花咲 匠
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第五話 ご馳走しますよ Part,2

 優は、洋食屋で働いていた時によく作っていた、お客さんに人気があったアサリの入ったパスタを作ろうとしていた。

 冷蔵庫の中に運よくアサリが入っていたので、丁度良いと思ったのだ。


 「あ、美咲さん。 そこにあるザルを取ってくれないですか?」


 「はーい、コレ?」


 「そうそう、それです。 ありがとうございます」


 金属製のザルを手で持って聞く美咲の手から感謝の言葉を告げて、受け取る。


 「それにしても、もうできるんですね。 手馴れてますね、やっぱり」


 パスタを茹でる為に湯を沸かしている間に、もうすでに下準備を終えて、パスタを鍋にいれる優をみて、感慨深そうに呟く美咲。


 「そうですかねぇ。 けっこう皆さんこんなものだと思いますけど。 そういえば、美咲さんは料理しないんですか?」


 その言葉に、声を詰まらせる美咲。


 「うっ、私……実は料理できないんですよ。 今、勉強中です」


 それを聞いて、朗らかに笑う優。 


 「アハハ、だと思いましたよ。 手付きが不慣れですもんねぇ」


 「そんなっ! バレてましたか……。 男のヒトから見て、料理できない女性ってどう思います?」


 料理の不慣れさを指摘されて、落胆した顔になりながら、さっきの優と似たような質問をしてくる。


 「んー? 私は別にいいと思いますけどねぇ。 まぁ、私が料理ができるので、私が作ればいいだけですかね。 世間一般はどうか、知りませんが」


 「なんか、微妙な答えですね」


 「はい、微妙ですね」


 訳のわからないやりとりをしつつ、互いの顔を見て笑い出す二人。


 「なぜか、会話が成り立ってないのような気がするんですが」


 「それは、私じゃなくて、優さんが原因でしょ!」


 まるで、漫才でもやっているかの問答にまた笑い出す二人。

 



 「はぁ~、おいしかった~。 こんなにおいしいパスタ食べたの初めてかもしれません、私」


 満足げに腹をさすりながら言う美咲。

 どこか眠そうな顔をしていて、料理を作る立場の優から見れば、とても心地良いものだった。


 「それは、良かった。 何よりの褒め言葉ですよ」


 心からの感謝の言葉だとわかったので、思わず微笑んでしまう。


 「こんな彼氏がいたら、最高なんだけどなぁ~。 ……ハッ!? 何でも、無いですよっ!?」


 おいしい料理によって、心が緩んだのか、心の声が思わず漏れ出てしまい、慌てて否定する。


 「美咲さんなら、きっと良い彼氏が見つかりますよ。 お皿、片付けちゃいますね」


 「あ、ありがとうございます。 あ、あの……」


 「はい? どうかしましたか?」


 「……いえ、なんでもないです……」


 美咲の言葉に気付いてか、気付かずか、食べ終えた皿を持って、その場を立ってしまう優。

 その未練なく立ち上がる姿を見て、気付いてはいないのだろうと思い、また溜め息をついた。


 (なんで、あのヒトは、こうも鈍いのかな……)


 そう思わずにはいられないほど、躊躇いのない行動だった。

 もっとも、コレは、優の周りにいる女性のほとんどが感じているコトなので優が悪いわけではない、ハズだ。

 いつも、どう話を切り出そうか悩んでいて、さっきのは、意図せずに口をついて出ただけではあるが、かなり直接的だったと思うが、それでも気付かないとは……。

 優の恋愛に対する、難攻不落さとあまりの鈍さに頭を抱える。

 そのとき、鈍い本人は頭を抱えている女性を見て、何か学校で悩み事でもあるのかな?などと見当違いのことを考える。

 案の定、本人は全く気付いていない。


 (なにか、悩んでいるようなので、お菓子でも出してあげますかね。 あ、そういえば昨日クッキーを焼いたんだ。 よし、それにしよう)


 長丁場に備え、皿洗いを終えた優は、クッキーを入れてある缶の容器を持つと、コーヒーの準備を始める。

 優がキッチンに消えて、ダイニングに残ったのはこれから、どうしていいのかわからない美咲とまだ残っている紅茶の入ったカップだけだった。

   



 その後、結局美咲は、優に流されるようにクッキーとコーヒーを貰い、おしゃべりに興じていた。


 「このクッキーもおいしいですね。 料理も作れて、お菓子までこんな上手に作れるなんて、スゴイですねっ!」


 クッキーをパリパリ食べながら言い、それに良く合うコーヒーを啜る。


 「クッキーぐらい誰が作っても似たような味ですよ。 よろしければ、今度作り方をお教えしますよ」


 「ホントですかっ!? 是非、お願いします! なんとか、友達達を見返してやりたいんですよ」


 気前良く、作り方を教えてくれるという優に、最初はただ嬉しさだけが篭った声音だったが、後からなぜか殺気の篭った声になる。


 「なにか、あったんですか? まるで、友達を親の仇みたいに……」


 「よくぞ、聞いてくれたわっ! ホント、亜紀ったらヒドイのよっ! 私が丹精込めて作ったチョコに対して、ヒトの食べ物じゃないとか言ったのよ!?」


 鬼気迫るその口ぶりに思わずタジタジとなる優。


 「そ、そうなんですか。 それを、他のヒトには食べてもらったので?」


 「ええ、食べてもらいましたとも」


 「……そしたら、何と仰ってましたか、そのヒト達は」


 聞くのが恐ろしく、少し間が空いてしまったがそれでも一応聞いてみる。


 「個性的な味だけどおいしいね、って言われたわよ。 その時は」


 (それは遠まわしにおいしくないと言ってる様なものでは?)


 心の中でそう思ったが、いくら優でも口には出さない。

 なんか、口に出したら、よくないコトが起こりそうなので。

 こういう危機的なモノのは気が利く優である。


 「そうなんですか、それは直接的ですねぇ」


 (あぁ、教えるなんて言わないほうが良かったかもしれませんねぇ。 味見するのは私ですしね。 それに、どうやったらチョコを不味く感じさせることができるのか不思議だなぁ) 


 「でしょでしょっ! もっと、こうオブラートに包んで言ってもいいと思わない?」


 「ええ、そうですね……」


 まだ見ぬこの先、開催することになるであろうお菓子作り伝授教室(仮名)に対し、戦慄する優であった。


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