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花をあげよう  作者: 花咲 匠
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第四話 ご馳走しますよ

 美咲を家に上げて、優は紅茶などを出して談笑していた。

 二人はリビングにあるダイニングチェアーに向かい合って座っていて、最初に家に上げたときは、物珍しげにいろいろ物色されたので、ここで落ち着いてもらうために、ここに座ってもらったのだ。

 部屋は十分きれいにしてあると思うので、恥ずかしくはないハズだ。

 そして、今は、美咲の学校生活の愚痴を延々と聞かされている。

 嫌な気は全くしないし、普段は接客業務に追われてあまり長話などできないので、むしろ楽しかったりもする。

 いつもなら仕入れた花を並べたり、店先に置く花を決めたりといろいろと準備をしたりするのだが、今は客人をもてなすことに精一杯でそれどころではなかった。


 (紅茶なんか出してみましたけど、これでいいんですかね? 女子高生ならジュースとかのほうが良かったですかね?)


 などと、客人に対してはいつもこんなカンジで内心冷や汗をかいているのである。

 美咲は、優に出されたものなら別になんでもいいのだが、本人がそれを知る由もなく言葉に出してしまう。


 「お口に合いますか? なにか、他のほうがいいですかね?」


 唐突に優に言われ、キョトンとした顔になった美咲だが、すぐに出された飲み物のコトだと気付き、スゴイ勢いで首を振った。


 「いえいえっ、とんでもないです! すごくおいしいですよ、この紅茶。 私、けっこう紅茶好きなので嬉しいですっ!」


 「そうですか、それは良かった。 ジュースとかの方がいいかとも思ったんですがねぇ」


 捲くし立てる美咲の言葉に安堵したので、つい思ったいたコトが口をついて出てしまった。


 「……私は小学生かなんかですか? もう高校生ですよっ!」


 「アハハ、すいません。 いや、なかなかどうして客人を家に招くなんてあまりしませんから、私。 どうにも、勝手がわからなくて」 


 若干、憤慨しながら言う美咲に、実に素直に告げる優。


 「あまり、ヒトを家に上げないんですか?」


 「ええ、そうですね。 家族は来ませんし、友達も家には上げないですからねぇ」


 「……優さんって、彼女とかいないんですか?」


 優が家にあまりヒトを上げないと聞いて、一瞬迷ったものの、意を決して聞く美咲。


 「彼女ですか? ええ、いませんね、全く。 女性とは縁のない生活ですので」


 気負いせずに言い切る優。


 (あぁ、こんなに言い切れるほど、女性関係には縁がないなんて……)


 自分で言っておきながら、その言葉に傷つく優。

 その言葉を聞けば、安心する女性が自分の周囲にはいるとは夢にも思っていない。

 そして、ここには安心している女性が一人いるのだが、その女性は平静を装うのに必死だった。


 「そ、そうなんだ。 ……良かった」


 「はい? 今なんて?」


 「いえいえ、なんでもないですっ! そういえば、もうこんな時間ですね。 私はそろそろ昼食なので、帰りますっ!」


 思わず心から漏れ出た言葉を優に聞かれてしまったので、急いで退散しようとする。

 実際に、時計はもう12時を指していたので、上手に言い訳ができたと思ったのだが……。


 「あぁ、それなら、このまま私の家でお昼を食べていきませんか? もちろん、私が作るので、それで良ければですが」


 優の予想外の言葉を聞き、その場で固まる美咲。

 なかなか、固まったまま動かないので声を掛ける。


 「あの~、美咲さん。 聞いてます? 食べたくないのなら、それはそれで別にいいのですが……」


 「ホントに、お昼をご馳走になってもいいんですか?」


 どこか夢見心地な声音で尋ねる。


 「ええ、いいですよ。 一人分作るのも、二人分作るのも大して、変わらないので」


 普段通りの声音で言う優。

 女性関係に対して、気負いが全く無いのがこの男の長所なのである。


 「あぁ、私は基本洋食しか作れないのですが、それでもいいですか?」


 「ええ、ぜひ、お願いしますっ! 私、洋食大好きなのでっ」


 顔を輝かせて言う言葉に、思わず微笑む優。

 内心、断られたらかなり傷つくなぁ、とマイナス妄想どっぷりだったので安心した。


 「では、パスタでも作りますか。 あ、キライな食べ物とかありますか?」


 「え~と、実はきのこが苦手なんですよ。 あと、トマトも」


 椅子から立ち上がり、キッチンへ向かいながら聞く優に、素直に応える美咲。


 「あ、奇遇ですね。 私もきのこ嫌いなんですよねぇ。 どうも、あの食感が好きになれないんですよ」


 「やっぱり、そうですよねっ。 それと、味もなかなか好きになれなくて……」


 妙なところで意気投合して、笑いあう二人。


 「あ、手伝いますよ、優さん」


 「じゃあ、そこのパスタ茹でてもらえます? それにしても、洋食屋で働いている時以来ですね、ヒトにご馳走するのは」


 健気にも、手伝いをすると申し出た美咲を追い返さず、簡単な仕事を任せる。

 ご馳走してあげるのに手伝わせるのは気が引けたが、美咲は言っても気かなそうなので、楽なものをやってもらう。


 「優さんって、洋食屋で働いてたんですか?」


 「ええ、高校を卒業してから、この店を開けるまでですから、3年ぐらいですかね。 若輩ながら、厨房を任せてもらっていたので腕に自身はありますよ」


 驚いたようすの美咲に胸を張って応える。


 「へぇ~、花について詳しくて、さらに料理も出来るなんて女子力高いねっ」


 「アハハ、だから彼女出来ないんでしょうか、私。 女の子って、自分より料理とかできる男性ってどう思うんです?」


 「う~ん、私はイイと思うけどなぁ。 結構、惚れ直すよ?」


 「そうですか? 美咲さんにそう言って貰えるなら、いいですかねぇ」


 料理をしながら、楽しそうに話す二人。

 美咲は今までなら赤面しそうな場面でも、自然体で話せるようになっていた。

 キッチンに二人で立つその姿はとても、お似合いであったがそれを指摘する者は誰もいなかった。


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