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花をあげよう  作者: 花咲 匠
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第十四話 アルバイト発見! Part,2


 「いらっしゃいませ~」


 「ようこそ、花屋ギフトへ」


 店の中からは男性店主の優しげな声と、緊張しているのか、新しく雇い始めたアルバイトの女性店員の堅い声が響く。

 男性客からはその女性店員の声が美声だと言うコトを聞いた優は積極的に美咲を店に出しているのだ。


 「いらっしゃいませ~。 あ、この間はどうも、ありがとうございました。 おかげで助かりましたよ」


 「いいのよ、あれくらい。 アレ、優さん新しくバイト雇ったんですか? 全くあんな可愛い女の子を雇うなんて隅に置けないわねぇ」


 常連の女性のお客さんが優に気さくに話しかける。

 そして、店にいる美咲を見てそんなことを言う。


 「そうなんですよ~。 ホント、よく働いてくれるのですごい助かるんですよ」


 心からの賞賛を惜しげもなく口にする優を見て、美咲は店の奥で恥ずかしそうに顔を赤くする。


 「自分がちゃんと働かなくちゃダメじゃない。 ほら、早くあの子を見習いなさい」


 気を紛らわすためにせっせと動き出す美咲を見たお客さんが優をからかうように言う。


 「そうですね~。 あ、いつもの花でいいんですか?」


 そんな言葉に気を悪くする素振りも見せない優は、ちゃんと自分の仕事を始める。


 「ええ、いつもので頼むわ。 それと、あの液体肥料もくださいな」


 いつも自分が買っている花の苗と、店先に置いてある液体肥料を指差して優に注文する。


 「はい、わかりました。 それでは、お会計の方お願いします」


 そう言って、店の奥にあるレジに商品を運ぶ優。


 「美咲さーん。 レジ、お願いします」


 店の奥にいた美咲にレジを任せ、自分は他のお客さんのところに行く優。


 「はーい。 こちらのお買い上げで間違いないですか?」


 商品を確認しながら、手元にある値札がいっぱい書いてある表からバーコードを探し始める。


 「ええ、それでお願い。 ねぇねぇ、あなた優さんとはどんな関係なのよ、付き合ってたりするの?」


 目を悪戯っぽく輝かせながらそんなことを聞いてくるお客さんの言葉に、美咲は手元にある値札表を危うく落としそうになった。


 「ち、違いますよっ! た、ただのアルバイトです、私はっ!」


 動揺した声でどもりながら否定する美咲。

 そんな美咲を見て、嬉しそうに笑うお客さん。


 「へぇ~、そうなんだ? じゃあ、これで会計お願いね」


 「なんでそんなに笑顔なんですか!?」


 お客の嬉しそうな笑顔を見て、素っ頓狂な声を上げる美咲。

 そして、そんな声を聞いて優が不審そうに声を掛けてくる。


 「美咲さん、大丈夫ですか?」


 「ええ、大丈夫です! 問題ありませんっ!」


 不審げな顔の優に速攻で返す美咲。

 そんな美咲を見て、すぐに引っ込む優。

 なにか、強い意志を感じ取ったのかもしれない。


 「さて、じゃあ私は行くわね」


 「……またのご来店をお待ちしております」


 会計を済ませて買った品を持ってレジを離れるお客さんの言葉に、堅い声で返す美咲。


 「優さん、たまにはあの子も気にかけてあげてくださいね」


 「はい? なんのコトですか?」


 「いいえ~。 いいのよ、別に」


 店を出る間際に優に声をかけたお客さんだが、優は言葉の意味がわからず聞き返す。

 だが、ふんわりとした笑顔で立ち去るお客さん。


 「はて? 私、また何かやらかしましたっけ?」


 しばしの間、店先で考え込む優だったが、心当たりがないのでそこで考えるのをやめた。


 「さて、美咲さん。 そろそろお店を仕舞しまいますか」


 日が傾き始めており、夕日が差し込む店内に声をかける優。

 時計はすでに18時を指しており、いつも5時に閉店している「ギフト」にしては長丁場である。


 「はーい、わかりました。 じゃあ、レジに鍵かけちゃいますね」


 「はい、じゃあ私はここの花たちをしまいますかね。 あ、シャッターも閉めていいですよ」


 店先に出ている棚に乗っている花たちを店の中へと入れながら美咲に指示を出す優。


 「はーい。じゃあ、閉めますよ?」


 「ええ、どうぞ」


 電動式のシャッターを閉めるため、店の奥の壁にあるスイッチのところまでパタパタと小走りで行き、確認を取る。

 美咲がアルバイトを始めてからの恒例になっている。

 いつも一人で静かに黙々と準備や片づけをしていた優にとっては、話すヒトがいるというのはとても嬉しいことであり、密かに感動していたりもするのだ。


 「……ホントに、助かりますねぇ」


 小声でそう独白し、顔に微かな笑みを浮かべる。

 傍から見たらそうとう頭のおかしいヒトだが、幸い誰も優の顔を見ていなかった。

 美咲は看板のライトを消すために、店の裏手に行き、電源を落としているトコロなのだ。


 「優さん、終わりましたよ。 今日はこの後、残業しますか?」


 全ての片づけをパッパと終わらせた美咲がこの後どうするかを聞いてくる。

 残業とは、花束をあらかじめ作っておくコトを指していて、主に仏花などを作るのだ。


 「んー、今日は残業はなしでいいですよ。 昨日作った分が意外と余ってますし。 おなかも空いたので、早く夕飯を食べてしまいましょうか」


 仕事を切り上げて、夕食を提案する優。

 もちろん、それを否定するわけのない美咲が嬉々として頷く。


 「はい、そうしましょう! 今日は何を作るんですか?」


 「どうしましょうか? まぁ、冷蔵庫の中身で決定しますか」


 まだ作るモノが決まってない優は、まるで主婦のようなことを言い、仕事を終えた身体を階段のほうに向ける。


 「冷蔵庫の残り物でもお店に出せるレベルの料理が作れるんだから、スゴイわよね……」


 素直な感嘆を秘めた声で美咲がそっと呟く。


 「ふふっ、ありがとうございます。 じゃあ、腕によりを振ってじっくり作りますね」


 「いや、じっくり作らなくていいですよ! 簡単なものでいいです! 優さんのつくるご飯はなんでもおいしいので」


 清々しいほどの笑みをしながら、恐ろしいコトを言う優。

 この間、じっくり作るといってローストビーフを作り始めた優が、そのまま10時間以上も調理をしていたのを美咲は鮮明に覚えている。


 「優さんのじっくりは一般人の常識を超えてるんですよっ!」


 すかさずツッコミを入れる美咲を残念そうな顔で見る優。


 「そ、そんな顔をしても、ダメですよ! ここの雇用条件は食事付きなんですからね!」


 「はーい、わかりましたよ。 では、作りますか」


 階段を上がっていき、手を洗うとすぐに調理を始める優。

 小刻みに聞こえてくるリズムのいい音を聞きながら、美咲は店にある椅子に腰掛ける。


 「私って、なんて幸せなんだろう……」


 今の状況を思い起こして、しみじみとつぶやく。

 もたれた椅子をゆりかごのように揺らしながら座る美咲を、沈みゆく紅い太陽が照らしていた。


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