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花をあげよう  作者: 花咲 匠
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第十三話 アルバイト発見!

 買い物を終えて、優の家でステーキを焼いて、付け合せを作り、食べている途中で美咲が感極かんきわまった様子で言う。


「このお肉、おいしいわね……。 優さん、これは買って正解だったんじゃないかしら?」


 その問いに対し満面の笑みで優は頷き、しみじみと呟く。


 「そうですねぇ。 やっぱり、こういうおいしいお肉はシンプルなステーキが一番、味が出ておいしいですね~」


 おいしいを連呼しながら自分の言った言葉を確かめるようにまたステーキを一切れ口に運び、咀嚼そしゃくする。

 そして、満足そうな笑顔を漏らす。


 「……優さん、ホントにおいしそうに食べますね。 見てるこっちが清々しい気持ちになってきますよ」


 優の満足げな笑顔を見ながら、美咲はそうどこか達観したように呟く。


 「昔から美味しい食べ物と、美しいモノはヒトを自然と笑顔にするものなんですよ。 美咲さんだって、そうでしょう?」


 「確かにそうですけど、私はあんまり顔に出さない方ですし」


 優の言葉に肯定しながらも自分のコトを例に挙げて言う美咲。


 「そうですねぇ。 確かに美咲さんはあまり顔に出さないですよね。 というか、私が感情豊かなんですかね?」


 「感情豊かというか、いつもニコニコしてますよね優さんは。 それが感情豊かと言うかはわかりませんけど」


 自分のコトになると鈍さを見せる優のくせに、自分は感情豊かでは?という疑問を投げかけてきたので、美咲はなげやりに返す。

 そんな美咲の思いなど全く知らずに、優はいきなり話題を変える。


 「そういえば、美咲さんって今、高校3年生ですよね?」


 「? えぇ、そうよ。 それがどうかしたの?」


 急に投げかけられた言葉に首を傾げて不審に思いつつも、素直に答えるが疑問をていす。


 「そうなんですか……バイトとかってしてるんですか?」


 「バイトですか? いや、してないですけど。 勉強とかが不安になるのでなるべくしないようにしてるんですよ」


 「そうなんですか……」


 勉強の話を出されてしまったので、バイトの話を持ち出せなくなった優は目に見えるくらい落ち込んでいた。


 「でも、バイトはしたいと思ってるんですよ。 大学に入る前に社会に出ておきたいので。 でも、なかなか自分に合いそうな職場が見当たらないんですよね~」


 笑いながら軽いカンジでそう言う美咲。

 そして、優はその美咲の手をガッチリ掴み、目を輝かせて言う。


 「じゃあ! 私と一緒にココで働きませんかっ!?」


 「え? ええっ!? それ、本気で言ってます? 冗談ではなくっ!?」


 鬼気迫る勢いで言葉を発する優の言葉に最初は困惑していたが、言葉の意味を理解した瞬間に目を見開く美咲。


 「ええ、本気ですとも。 ぜひとも、ココで働いてくれませんかっ!」


 美咲が、優の言葉が本気かどうかを確かめるが、即答で返事が返ってくる。


 「……私なんかでいいんですか? まだ、一度も働いたコトないですし、花の知識もそんなにないですよ?」


 優の言葉が本気だとわかった美咲だが、能力的に自分では心配なのでそんなに早く決心がつかない。


 「それは後々覚えてくれればいいですよ! それに、美咲さんはけっこうこうゆう仕事が似合ってると思いますし」


 「でも、やっぱり私には荷が重いですよ……接客業なんてしたことないんですよ?」


 当然だとは思うが、未だに渋っている美咲に優は雇用条件を提示することにした。


 「ココで働けば、食事は私が出しますよ? まかないということで給料からは引きませんし。 それに、学校の勉強も教えられます。 一応、教員免許は持ってますし」


 「うっ、優良物件すぎる。 ……わかりました、親に聞いてみます。 それで許しが出たらここで働きますよ」


 優の熱い勧誘(というか、好条件で釣ったような気がするが)に根を上げた美咲は優の誘いを受ける。

 親に聞くまではわからないが、陽気な両親なので、快く承諾してくれるだろう。


 「ホントですか、ありがとうございますっ! では、早速来月から入ってくれますか?」


 「いいですよ。 あ、その前に学校の試験があるので勉強を教えて貰ってもいいですか?」


 嬉しそうに顔を輝かせながら感謝を述べる優。

 だが、その前に雇用条件の一つである勉強を教えるというコトを早速利用する美咲。


 「早速ですか……まぁ、いいですケド。 何の教科が試験あるんです?」


 「えーと、数学と英語と国語ですね。 英語と数学が苦手なので、それを教えてください」


 優が何の教科があるか聞いて、それに答え苦手分野を伝える美咲。


 「え? 全部教えますよ。 私、これでも大学教諭の免許まで持ってるので、ほぼ全ての主要科目は教えられますよ」


 サラリと言う優の言葉に驚きを隠せない顔でおそるおそる尋ねる美咲。


 「……それって、そうとう頭が良くなくちゃ取れないヤツですよね? 優さん一体どこの大学卒業したんですか?」


 「アレ、言ってませんでしたっけ? 私は某有名なこの国で一番頭がイイ大学を卒業したんですよ」


 「ええ!? そうだったんですかっ!? 前から、頭がいいなとは思ってましたけど、通りでっ!」


 これまたサラリと言ってのける優に対し、密かな疑問の裏付けが取れた美咲は頓狂とんきょうな声を上げる。


 「そんなに驚くほどじゃないですよ。 同窓だけで何百人もいるんですから、意外と多いですよ。 狭き門であるのは間違いないでしょうけど」


 某国立大学に入学したくせに、そんなコトをほざく優。

 それに対し、やはり呪詛の声が返ってくる。


 「私なんかこんな郊外の公立学校で学年順位5位をキープするのが精一杯だって言うのに……嫌味ですか?」


 「いえいえっ! 違いますよっ! 私が言いたいのは、この私でも受かったんだから美咲さんでも受かる可能性はあるってコトですよ! 実際、そんなに勉強量は多くないですしね、よほど剣術の練習のほうが時間は多く使ってますし。 要するに、自分に合うその方法さえあれば、短期間で覚えることも不可能ではないですし」


 「言ってることが、頭良いヒトの理屈だ……私には理解できないわ。 ついていけないかも」


 珍しく長広舌ちょうこうぜつになったかと思ったら、中身はコレである。

 美咲がヤル気を失くすのも無理は無い。


 「さて、明日から学校でしたよね?」


 「ええ、そうよ。 それがどうかしたの?」


 「じゃあ、学校終わったら私のトコに来てください」


 「ほへ? なんで?」


 「明日から勉強を教えますから」


 「げっ! 明日からなんて、早くないですか!?」


 「持ち物は筆記用具と教科書だけでいいですよ。 ノートは私が用意しますから」


 「アレッ!? 私の話を聞いてないっ!?」


 「じゃあ、まずはご飯を食べちゃいましょうか。 話はその後で」


 そう言って、黙々とナイフとフォークを動かしステーキを食べ始める優。

 美咲は呆気に取られながらも、半ば無意識の内に食べ始める。

 これから始まるであろう猛勉強の日々に思いを馳せながら。


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