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花をあげよう  作者: 花咲 匠
16/22

第十五話 迎えにきました

 「ねぇ、美紀。 これから優さんのお店に行かない?」


 閉店した店の中で帳簿をつけながら、美紀に話しかける優衣。

 今日は営業時間が17時までなので今からでも遅くはあるまいと思って優衣は声をかけたのだろう。

 現に時計は17時20分を指してる。


 「え、これからですか? まぁ、いいですけど。 でも、優衣さん、どうして急にまた?」


 一応、了承はしたもののいぶかしげな声音で優衣に問う美紀。


 「……別になにも企んでないわよ。 ただ、さっき優さんから連絡があってこの間、約束したから今夜にでもウチに来ませんか?ですって」


 怪しんだ様子の美紀に、警戒しながらことさら普通の声音で応える優衣。

 だが、美紀は優という言葉が出た瞬間、目を輝かせながら、

        

「優さんからのお誘いっ!? これは早く行かなければっ!」


「ちょっと待って。 ちゃんと、帳簿をつけてからにしてちょうだい。 明日に回すと厄介やっかいなんだから」


 すぐにも、帳簿を片付けて帰り支度をしようとした美紀に優衣が冷静に制止する。

 それを聞いた美紀はものスゴく嫌そうな顔になりながらも、ちゃんと自分の仕事に戻る。


 「はいはい、わかりましたよ。 あ、でもバスの時間があるから早く行かなきゃじゃない?」


 わかったと言いつつも、バスの時間を気にして早く行こうとする美紀に優衣は溜め息を漏らす。


 「バスで行かないから大丈夫よ。 それよりも早く仕事を終らせないと」


 そんな期待した様子の美紀にバスでは行かないと言う優衣。


 「バスで行かないって、じゃあどうやって行くのよ? 歩きだと20分はかかるわよ。 嫌よ、そんなの。 歩きたくないもん」


 当然の如く美紀からは文句が出る。

 それに優衣は言いたくなかったが仕方なく答える。


 「優さんが車で迎えに来てくれるってさ。 だから、大丈夫よ。 あと10分くらいで来るハズだから、それまでに終らせないと」


 それを聞いた途端に、目を輝かせる美紀。


 「それを早く言いなさいよねっ!」


 そして、作業効率が途轍もなく上がり、今までで一番の速度でどんどん仕事をこなしていく。

 優衣が自分の仕事を忘れて思わず見惚れるほどである。


 「……私もそうだけど、恋する女の子って強いわよねぇ。 美紀を見てると心からそう思えるわ」


 感心しながら呟く優衣の言葉に気付いてか、気付かずかわからないがそこでちょうど美紀の仕事が全て終わる。

 そして、何も言わずに帰り支度を黙々と始める。

 そんな美紀を呆れた様子でしげしげと眺める優衣だったが、やっと自分も仕事にとりかかり、程なくして全ての仕事を終らせた。


 「さてと、私もそろそろ準備をしようかしら」


 事務室の椅子から立ち上がり、自分のロッカーに向かい、帰り支度を始める優衣。


 「ちょっと、優衣さん! 早くしてくださいよ。 優さんが来ちゃうじゃないですかっ!」


 今にも待ちきれないといった風の美紀が優衣を催促する。

 そんな美紀を見て優衣は、


 「そんなに急いでどうするのよ? どうせ、優さんが来なきゃ行けないんだから、ゆっくり待ってたら?」


 冷静な声音で子供みたいに言う美紀に、優衣は言うが、理不尽な言葉が返ってくる。


 「何を言ってるんですか! 優さんが来るんだから店の前で待ってなきゃダメでしょう!?」


 (そんな、アイドルの出待ちじゃないんだから……)


 そう思わずにはいられない優衣だった。

 そんな美紀に声をかけようとしたが、そこで店のチャイムが鳴った。


 「あっ! 優さんが来た!」


 幼い子供みたいに声を弾ませてドアに走って近付いていく美紀。


 「全く、子供なんだから……」


 そう言いながら、自分も小走りにドアに近付いていく優衣。

 美紀がドアを静かに開けると、そこには待ち受けていた人物がいた。


 「やぁ、こんにちは、お嬢さん方。 お迎えに上がりました」


 かしこまった様子で、おどけたように言う、待ち受けていた人物もとい優。


 「優さん、こんばんは。 今日はお誘いありがとうございます」


 「アハハ、優衣さん。 そんなにかしこまらずに。 いつも通りでいいですよ、いつもどーりで」


 頭を下げて礼を言う優衣に軽いカンジで返す優。


 「じゃあ、優さん。 行きましょうよ!」


 明るく美紀がそう言い、部屋を出る。

 そして、その後に優衣も続き、鍵を閉める。 


 「じゃあ、行きましょうか。 あ、車は駅前の駐車場に停めたのでついてきてください」


 そう言って先導する優の両脇に二人が並び、優は女性二人に挟まれる形になる。

 全くイヤなカンジはしないが、周囲の会社帰りであろうサラリーマンも目がやけに険しいように感じる。


 「まぁ、こんな美人二人と一緒に男一人で歩いているんですから無理もないですかねぇ」


 そう小さな声で独白するが二人には聞こえなかったようで、楽しそうに話している。


アレ、この流れはもしかして修羅場突入なんじゃないか?


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