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狂特戦隊-シーズン2(前日譚)  作者: portanlo
今シーズンの特殊編
32/34

【 オークの随扈特殊篇:自信と傲慢(二)】

 数日が経過した。かつての同胞たちからの軽蔑に晒され、片腕を失った傲慢なオークは、魂の抜けたような姿でハイエルフの陣営に留まり続けていた……。


 ハイエルフたちが大規模な工場の建設を開始する中、傲慢なオークは、建設計画のためにやって来たドワーフたちに頭を下げ、卑屈な態度で運搬工の仕事を乞い、手に入れた……。


 喧噪渦巻く酒場の中。カウンターに一人座る傲慢なオークは、左手で酒杯を握りしめ、なみなみと注がれた強い酒を一気に喉へ流し込んだ。


「もう十分飲んだだろう、オーク」カウンターに立つエルフのバーテンダーが、手元のグラスを拭きながら言った。連日のように店へ現れては泥酔し、右腕の半分を白い包帯で巻いた傲慢なオークを、彼はじっと見つめていた。


 泥酔に耐えながら、ハイランドオークは酒杯をバーテンダーの前へ押し出し、数枚のコインを放り投げた。「放っておけ。金ならある、もっと並々と注ぎやがれ」


 エルフのバーテンダーはボトルから酒を注ぎ、見かねたように余計なお節介を焼いた。「聞いた話じゃ、お前は工事現場で力仕事をしてるそうだな。将来のために少しは金を残しておいたらどうだ……」


 バーテンダーの何気ない一言。傲慢なオークの脳裏に、かつての仲間たちが浴びせてきた冷酷な蔑視がフラッシュバックする。「将来……ハハッ! 大した将来だなぁ! 将来に向かって乾杯だ!」


 活気に満ちた酒場。その外に広がる漆黒の通りには、身長も体格も大きく異なる二人の人物が佇み、ガラス越しに中の様子を眺めながら言葉を交わしていた。


 エルフ議会長は眉をひそめ、隣のオークの酋長に怪訝そうに尋ねた。「本当に、あの男を私に推薦なさるのですか?」


「エルフの議長殿よ。あれは元々、わしの誇りとする戦士だった。だがわしの教育が至らず、あんな姿にさせてしまったのだ」酋長はガラス越しに、男の寂しげな背中を見つめ、深いため息をついた。「彼の以前の傲慢な態度に、あなたが強い不満を抱いているのは承知している。だがオークの酋長として、あいつが磨けば光る『原石』であることは、このわしが保証する」


 酋長は感慨深げに続ける。「そなたたちの領地は我がハイランドの隣だ。我が一族に根付く絶対的な文化はご存じのはずだ。腕を一本失えば、オークの社会において実質的に『失格者』なのだ」


「ですが……なぜ?」エルフ議会長は酋長の視線に合わせ、男へと目を向けた。


「各族がすべての偏見を捨てて手を携えること――その道が極めて険しい茨の道であることは、わしも百も承知だ。あなたには慧眼があるが、他の異族たちがあなたのように稀有な存在であるとは限らんのだ」酋長はエルフ議会長を厳粛に見つめた。


「俺は酋長として同胞たちの前で実力を証明してきた。奴らは俺に逆らわん。だが、お前たちは違う」酋長は酒場の中の傲慢なオークへと静かに視線を戻した。「あいつを救うことは、あなた自身を救うことにも繋がるのだ」


 エルフ議会長は伏し目がちにしばらく考え込んだ。やがて、彼女は手を胸の前で重ね、酋長に向けて深くお辞儀をした。「……分かりました。寛大なるお心配りに、心より感謝いたします」


 酋長は温和な微笑を浮かべ、エルフ議会長の肩を軽く叩いた。「お嬢ちゃん、お前のその慧眼には、それだけの価値がある。あいつを頼んだぞ」


 買い物袋を抱えて家路を急ぐ獰笑ゴブリン。彼は鍵を取り出し、ビクビクと左右を警戒しながら扉を開けたが――その瞬間、何者かに強引に家の中へと押し入られた。


 自宅の椅子へと組み伏せられ、冷や汗を滝のように流す獰笑ゴブリン。傍らに直立するエルフ近衛兵たちを視界の隅で見つめていると、そこへ、幾分気まずそうな表情を浮かべたエルフ議会長が客間へと入ってきた。


 ゴブリンは必死に恐怖を抑え込み、視線を落として口を開いた。「よォ……。見間違いじゃねぇよな? 俺を捕まえにきたのか? それとも別の用か?」


「折り入って頼み事があり、お忍びで伺いました」エルフ議会長が傍らの近衛兵たちへ視線を送ると、二人はそれを察し、静かに部屋を退出していった。


 近衛兵たちが去るのを見届け、ゴブリンは心の中で安堵の息を漏らした。エルフ議会長へ視線を向け、問いかける。「へぇ……。高貴なるエルフの最高指導者が、わざわざ身分を落として、俺みたいな嫌われ者のゴブリンに会いに来るとはな」


「私の前で取り繕う必要はありません。本日はあなたの不法行為を取り締まりに来たわけではないのですから」エルフ議会長は足を組み、淡々とゴブリンを見据えた。「お聞きしたいのです。腕を失った者を、再び『蘇らせる』手段をお持ちですか?」


「ほほう……。あの清廉なエルフにも裏の顔があるってわけか。そいつは傑作だ」ゴブリンは慎重に言葉を選んだ。「失った程度と、後はそれに見合う『価格』を提示できるか、によるな」


「資金に問題はありません。必要とあらば、最高の学者たちをそちらに回すことも可能ですわ」エルフ議会長は鋭い眼光を向けて答えた。


「面白い……。取引成立だ」


 ベルの音が響き、傲慢なオークが扉を押し開けた。カウンターが客で埋まっているのを目にし、猫背になった男は、隅の席へと黙って腰を下ろした。


 椅子が温まる間もなく、対面に一人の女性が腰を下ろした。背を丸めた傲慢なオークは虚ろな目を向け、何か言葉をかけようと顔を上げた、その時――。


「割のいい仕事はいかが? 少なくとも、その安っぽい寮生活からは抜け出せるはずですわ」


 傲慢なオークが口を開くより早く、対面の女性は一枚の契約書を差し出した。


 差し出された紙面――随扈の契約書を見つめ、男はぼんやりと呟いた。「……護衛の仕事か? 何でもいいさ、酒を飲む金さえ手に入ればな……」


「契約成立、ですわね……」


 女性が言い終えた瞬間、オークの視界は急激に暗転し、深い闇へと沈んでいった……。


 オークの随扈が意識を取り戻した時、ひどいめまいに襲われた彼は、無意識に右手で額を押さえた。その瞬間、手のひらに伝わる冷たい金属の感触に激しい違和感を覚える。感覚を失っていたはずの右腕を持ち上げ、目の前にかざして見つめた。


 目に飛び込んできたのは、無機質な金属の掌。その冷たい金属は腕の中ほどまでを覆っていた。オークの随扈は激しい衝撃を受け、恐慌に陥って絶叫した。「あ……、あああああーーーっ!!」


 極限の恐怖の中、右手の機械の掌がカチリと音を立てて内側へと反転し、大口径の『ハンドキャノン』へと姿を変えた。オークの随扈はさらに声を張り上げ、まるで屠殺される豚のように絶叫した。「うあああぁぁぁーーーっ!!」


「うるせぇ! この筋肉バカが!」獰笑ゴブリンが、即座に強力な麻酔銃の針を男の頸動脈へと突き刺した。


 どさりとその場に昏倒するオークを見届け、ゴブリンは嫌そうに耳を揉んだ。「耳がキーンとするぜ。起きるなり咆哮を連発しやがって……」


 再び目を覚ました時、男は豪華な部屋の、柔らかなベッドの上に横たわっていた。上体を起こした彼は、自身の身体を支えているのが、あの右手であることに気づいた。


 現実か夢かも分からぬまま、オークの随扈は呆然と機械の右手を掲げた。自らの思考と完全にシンクロし、指の一本一本が滑らかに動く。まるで、最初から右腕を失ってなどいなかったかのように……。


「……馴染めそうですか?」


 聞き覚えのある女性の声に、オークの随扈は顔を上げた。ベッドの足元に立ち、胸の前で腕を組んでこちらを見つめているエルフ議会長の姿があった。


「これは……」オークの随扈は視線を落とし、自らの生身の左手と、金属の右手を交互に見つめた。


「身体に問題がないようなら、ついていらっしゃい。仕事の内容を説明しますわ」


「王座に即いたか否かにかかわらず、試練が勝敗によって終わることはない。自信は常に傲慢へと堕ちんと、絶えず蠢き続ける。ただ合格せし者のみが、我が子嗣なり」――オークの戦神。

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