第8話 校門で待ち伏せする系女子の桃花さん
第2章 クラスメイトの学園のアイドルが、俺のお世話をしてくれることになった件。
スタートです!
◇
土曜日は桃花の家の借金を清算して。
日曜日は季節外れのインフルエンザがピッチャー陣に蔓延した野球部の突発ヘルプに行って、先発6回3失点のクオリティ・スタート(可もなく不可もなく)で1点差の勝利に貢献した。
そして休み明けの月曜日。
俺はいつもと変わらない、早くもなく遅くもなくな時間に高校に向かっていた。
有名な童話スイミーのごとく、同じく高校へと向かう同じ制服を着たたくさんの生徒たちの群れに交じって歩く。
知り合いが見当たらなかったので残念ながら一人旅だ。
「投げた翌日は、さすがに肩がちょっとだるいなぁ……」
時おり、右肩を回しながら俺が通学路を歩いていると。
もう少しで高校に着くというところで、校門脇に咲き誇るアザレアの植え込みの前に、桃花が立っているのが見えた。
校門で友だちと待ち合わせでもしてるのだろうか?
そしてお相手が遅れてでもいるのか。
桃花はなんとも落ち着かない様子で、キョロキョロと生徒たちの流れに視線を向けている。
桃花に――というか高校の校門に――少しずつ近づいていきながら、なんとはなしに見ていると、バッチリと目が合ってしまった。
途端に桃花が「あっ」て感じの顔を見せる。
まだ少し距離があったんだが、ちょっと踏み込んだ話もしたクラスメイトの友だちとアイコンタクトしたのに、無反応は感じ悪いことこの上ない。
声が届かない距離でもない。
「よっ、桃花。おは──」
おはようと、俺が声をかけようとしたところで、桃花は短いスカートを翻しながら、登校中の生徒たちの群れを突っ切って俺の方へと向かってきた。
そして俺の目の前まで駆け寄ってくると、勢いそのままに言った。
「おはよう正道くん! それであのっ! 借金が全部なくなったって、お父さんが言ってたんだけど!」
桃花は俺と身体がくっつきそうなくらいに近い距離で、さらに背伸びをしながらズイッと俺に顔を寄せて、まくし立てるように言ってきた。
『お嫁さん検定1位』のプリティフェイスが目の前にあり、さらには石鹸に似た爽やかな匂いも漂ってきて、俺は思わずドキリとしてしまう。
なにせアイドル顔負けの美少女だ。
俺に限らず、世のほぼ全ての男子はそうなるだろうさ。
「借金がなくなって良かったな」
俺は上体を少し後ろに反らして、顔だけでも桃花との適正距離を取ろうとしながら答えた。
「もしかしなくても、正道くんがやったんだよね?」
しかし俺が距離を取った分だけ、桃花がさらにズイッと距離を詰めてくる。
そっちがその気なら、俺は役得なだけなんで別にいいんだけどな?
「約束したからな。俺が絶対になんとかするって。こう見えて俺は約束は守る方なんだ」
まだ高校生だし、そもそも完璧超人じゃないのでできないことも多いが、約束をしたら守る努力はする。
そして今回の件は、俺にできる範疇だった。
ただそれだけのことだ。
「この前のあれ、冗談じゃなかったんだ――」
「俺は他人の人生を左右するようなことで、軽々しく冗談は言わないよ」
「てっきり気休めで言ってくれたと思ってたのに。でもいったいどうやったの? だって5000万だよ、5000万! 5000万円!」
桃花がズイズイズイッとさらに顔を近づけてきて、まるでキスでもしそうなほどに顔と顔が近づいてしまう。
――と、そこで俺は、俺たちが悪目立ちしてしまっていることに気が付いた。
なにせ俺と桃花は、登校中の生徒の群れのど真ん中で立ち止まっている。
しかも校門のすぐ近くだ。
そうでなくたって高校で一番可愛いと評判の桃花だ。
登校中の生徒たちは足こそ止めてはいないものの、いったい何事かと興味深げな視線を向けてきている。
『朝からいったい何の騒ぎだ?』
『あれって1年の花宮桃花だよな? 「お嫁さん検定1位」の』
『うわっ、マジアイドル並みに可愛いな~』
『5千万とか言ってたけど、何の話してるんだろ?』
『ゲームかなんかじゃね?』
『花宮さんもゲームとかするんだ』
そんな会話が聞こえてきた。




