第65話 ダーダネルス電機の黒田が血相を変えてやってきた!
「だよな。俺も言ってからどうかと思った」
100mなら100m走とかもあるから具体的に想像できるんじゃないだろうかと思ったのだが。
たしかに積み上げて100mの高さがあるって言われても、あまりピンとは来ないよな。
これなら俺のお小遣いを例に出したほうが良かったかもだ。
……や、83年4カ月分ってのも、たいがいわかりにくいか。
なにせ額がでかいから。
それはさておき。
「っていうかね? 前から思ってたんだけど、正道くんってほんとどうでもいいこともよく知ってるよね。あ、今の褒めてるからね? すごいって意味だからね?」
「ははっ、サンキュー。すごいと言えば、桃花はこれから資産100億の社長令嬢になるわけだ。すごいじゃないか」
「えへへー、資産100億円の社長令嬢ってことは、資産が100億円ある社長令嬢ってことだもんね!」
「そういうことだな」
「ってことは……わたしは資産100億円のお嬢様ってことだよね!」
「100億円の資産があるんだから、そうなるな」
なんて、2人してトートロジーを煮詰めた小学生みたいな会話をしていると。
キキーッ!
町工場の入り口の辺りで車が急に止まる音がしたかと思うと、バン! とドアが盛大に閉められる音が続いて、
「花宮さん! これは一体どういうことですか!」
ダーダネルス電機の黒田が、血相を変えて乗り込んできた。
おいおい。
そんな必死な顔で駆けずり回ってちゃ、澄ましたアルマーニのスーツや格調高いロレックス・ダイナモが泣いちまうぜ?
せっかくのハイブランドなんだ。
身に着けるに相応しい優雅な振る舞いをしないと、逆にカッコ悪いぞ?
そういうのを世間じゃ成金って言うんだ。
「おや黒田さん、今日は面会の約束はなかったはずですが、そんなに慌ててどうされましたか?」
そんな黒田に、桃花のお父さんが素知らぬ顔で問いかける。
「どうしたもこうしたもありませんよ! この町工場がライオネル・グループと業務提携すると聞いたのですが? 実質グループ入りするのだと!」
「さすがは大手ダーダネルス電機のエリート社員さんですね。お耳がお早いようで」
「何を悠長なことを! よりにもよってうちの最大のライバルのライオネル・グループ入りなどと! そもそもこの町工場は、ダーダネルス電機が買収の話を持ち掛けていたはずでしょうに! それがこの結果とは、見損ないましたよ花宮さん!」
ピーチクパーチクと自分勝手な主張をわめき立てる黒田。
しかし桃花のお父さんはそれに釣られることもなく、とても冷静に言葉を返す。
「もちろん存じております。ですが選ぶのはあくまでこちらですので、総合的に勘案してよりよい条件の方を選ばせていただきました」
「うちもそれなり以上の額を提示していたはずです! それこそ小さな町工場なら2つ3つ買ってもお釣りがくる金額だ! なのにどうして――」
「まだそんなことを仰られるのですね。本当に残念です」
「え――?」
「だってあなた方が本当に欲しかったのは、うちの工場ではないのでしょう?」
「――っ」
この一言で、そこまでがなり立てていた黒田が言葉に詰まる。
取り繕おうとすぐに嘘くさい作り笑いを浮かべる黒田だったが、桃花のお父さんがとどめを刺すように核心の一言を告げた。
「あなた方が欲しかったのは工場ではなく、うちが持っていた特許ですよね?」
ついにざまぁの時がやってきました!
ブックマークへ&評価(☆☆☆☆☆)を入れていただけると嬉しいです(*'▽')




