第64話 桃花パパへの報告
そして俺は修二との久方ぶりの昼メシを食べ終わると――引き留めようと全力を尽くしてくる修二をなんとかなだめすかして納得させて――すぐに桃花の実家へと向かった。
そして桃花と桃花のお父さんに、プレゼンが成功してライオネル・グループ総帥の父さんの協力を取り付け、ダーダネルス電機による買収工作の魔の手からこの町工場が完全に解放されたことを改めて伝えた。
「――というような感じです。具体的な金額や今後の詳細はまだですが、すぐにライオネル・グループの担当者から連絡があるはずなので、まずはそれを待ってください」
「わかりました」
桃花のお父さんが大きくうなずいた。
「ここから先は俺の手を離れますが、ライオネル・グループ総帥である父さん肝いりの案件なので心配は要りません」
もちろんここまで付き合った以上は、もし万が一にでも何か問題が起こればすぐに親ガチャSSRパワーで介入させてもらうがな。
だが、まずもってそんなことは起こり得ないだろう。
なにせこの件はライオネル・グループ総帥直轄の案件なのだ。
ライオネル・グループの誇る超エリート社員が事に当たるのは間違いない。
「何から何まで面倒をみていただき、本当にありがとうございました。獅童くんにはなんとお礼を申し上げたらよいものか、言葉もありません」
桃花のお父さんが深々と頭を下げてくる。
「どうか頭を上げてください。俺は俺のしたいようにやっただけですよ」
「ですが――」
「そもそもの話、この取引はライオネル・グループに大きな利益をもたらします。ゆえに両者は対等かつwin-winの関係です。俺は父さんにそのお得な話を伝えただけです」
だから突き詰めれば、礼を言われる理由はないんだよな。
ありがとうと言うならそれこそお互い様だ。
「巨大なライオネル・グループのトップと直に話を付ける……それがどれほど難しいことか」
「そこはそれ、ライオネル・グループは俺んちで、総帥は父さんですから。桃花が桃花のお父さんと話すのと何も変わりません」
「それはそうなのでしょうが……」
さっきからもうずっと恐縮しきりの桃花パパだ。
その気持ちがほぐれるように、俺は少しいたずらっぽく言った。
「それにあの黒田って奴にはケンカを売られましたからね。個人的な感情もありありでした。あんまり舐めるなよ、と」
「売られたケンカは買わないとだよね〜。シュッシュッ! 倍返しだ!」
神妙な桃花パパとは打って変わって、桃花は口で風切り音を発しながら謎のへなへなシャドーボクシングを見せる。
楽しそうな姿はもちろん可愛いんだけど、桃花って意外と好戦的なのかな?
「だよな、売られたケンカは買わないとだよな」
「うんうん! っていうか正道くん!」
「なんだ?」
さっきから桃花はテンションがかなり高い。
その理由が明らかになる。
「100億円ってヤバくない? だって100億円って100億円って意味なんだよ?」
「そうだな、100億円は100億円だよな」
それ以上でもそれ以下でもない。
俺のお小遣いなら1000カ月分。
実に83年と4カ月分に相当する大金だ。
「でしょ!? ちょーヤバいよね! 金額が大きすぎてまったく想像できないんだけど……!」
まぁそれはそうか。
俺は一瞬、思案すると具体例をあげた。
「例えば1万円札の厚さが0.1ミリ、100万円で1センチだから、100億円を1万円札で積み上げたらちょうど100mになるな」
「ごめんね正道くん。すごく真面目に説明してもらったのに悪いんだけど、1万円札の厚さで言われても、ぜんぜんピンとこないかなぁ……」
桃花がショボーンとした顔で申し訳なさそうにつぶやいた。
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