第6話 桃花の身の上話と、正道の親ガチャSSR(すごい)
「わたしっていうか、わたしの家の問題なんだけどね」
「家? ってことは桃花自身に何か大変なことがあったわけじゃないんだな?」
「うん。だからわたし自身が何か酷い目にあったとか、そういうのじゃないの」
良かった、とはもちろん言わない。
だけど桃花の身に何かあったわけでないのは、不幸中の幸いだった。
物なら後で取り返しがついても、命や身体は取り返しがつかないから。
「桃花の家が大変なのか? その、親の勤め先の会社が倒産したとか?」
「えっとね、順々に話すね――」
桃花の話を要約するとこういうことだった。
桃花の家はいわゆる町工場をやっているのだそうだ。
そして長年の取引先の大企業から、取引を増やすから設備投資をするように言われ、工場の土地・建物を担保に銀行から融資を受けて設備投資をしたのだが。
なんとその取引先は発注量を増やすどころか、逆に減らしてきたのだという。
残ったのは設備投資で過剰になった生産設備と、銀行から融資された5000万円――つまりは借金だった。
「典型的な下請けいじめだな。いや、これは町工場の乗っ取りか」
大口の取引をエサに、取り込みたい相手に融資(借金)で設備投資をさせる。
しかし設備投資をしてからも取引は増やさずに、融資を焦げ付かせ、融資の返済を肩代わりする代わりに相手を子会社化する。
すると相手が本来得るはずだった利益や保持している技術が、そっくりそのまま自分たちのモノになるというスキームだ。
大昔からある下請け乗っ取りの古典的手口である。
俺もいつだったか、父さんからそういう話を聞かされたことがあったので、すぐにピンときた。
一応言っておくと、俺の父さんがそういう下請けいじめをやってきたわけではない。
もちろん世界で商売をやっている以上、父さんだって完全に清廉潔白とは言わないだろう。
だが少なくとも父さんは意図的に相手を陥れるような理不尽は、絶対にしないタイプだった。
おそらくだが桃花の実家の町工場はその取引先にとって、非常に有用な何かしらの技術を持っているに違いない。
それを奪おうとしているのだろう。
(両社の企業規模が違い過ぎるので、経済的利益の簒奪という可能性は極めて低い)
「それにしても5000万円か。結構な額だな」
俺のお小遣いの5か月分だぞ。
「うん、結構な額なの。それで最近ちょっと物思いしちゃうことがあってね。もしかしたら高校も辞めないといけないかもだし」
それはつまり5000万の借金を返すために、桃花が学校をやめて働きに出るということだろうか。
高校中退=中卒の女の子にできる仕事なんて限られている。
稼げる額もたいした額じゃない。
桃花が辛い目に合うことは想像に難くなかった。
「そういうことだったんだな。ごめんな、しんどい話をさせちゃって」
「ううん、正道くんに話を聞いてもらえて、気持ちがちょっと楽になったから。ありがとう、話を聞いてくれて。こんなの学校の誰にも話せなかったからね」
そう言って、桃花が笑う。
だけどそれがやせ我慢だと、俺はすぐに気付いてしまう。
そりゃあそうだろ?
5000万円の借金が急に実家に降って湧いたら、普通の高校生が冷静でいられるわけがない。
放っておけなかった。
桃花が辛い思いをすることが我慢できなかった。
クラスメイト一家が、大企業の自己中心的な論理で泣かされようとしていることが許せなかった。
そして俺にはなんとかするだけの力があった。
力というか、金だけど。
親ガチャSSRなことを今ほど力強く思ったことはない。
俺は桃花の家の借金を肩代わりすることを今この瞬間、決めた。
「俺がなんとかするよ」
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