第59話 ついに全てが一本の糸でつながった。
「え、そうなの?」
「間違いない。レアアース代替技術の重要特許を抑えることができれば、市場で圧倒的な優位に立てる。特許訴訟で他社から莫大なライセンス料を手にすることだって可能になるし、なんならライバル社の製品を差し止めることだって可能だ」
もちろん期限切れが数年後に迫った古い特許ではあるが、現代社会の数年は一昔前の数十年に匹敵する。
期限切れを待っている間に、市場シェアは奪いつくされるだろう。
既存技術がほんのわずかでもこの特許にかすっていれば、ライセンス料や差し止めを要求する特許権侵害訴訟を起こすことができる。
他にも差し止め訴訟をちらつかせて相手の最新特許とクロスライセンス契約を結んだりと――かつて日本の家電メーカーが大々的にやられた――古い特許でも使い道はいくらでもあった。
「よくわからないけど、正道くんが間違いないっていうならきっとそうなんだよね。やったね、正道くん♪ ついに見つけっちゃったじゃん!」
ついに解決の糸口が見えたと理解った桃花が、満面の笑みを浮かべる。
「それにしても桃花のお父さんは、なんでこんな最先端の特許を研究してたのに、今は町工場をやっているんだ?」
「この町工場は職人だったお祖父ちゃんがやってたの。お父さんはそれを引き継いだって言ってたよ。小さい頃から工場に入りびびたってて、はんだ付けとか自然と覚えたんだって」
「門前の小僧習わぬ経を読む、か」
「磁力の研究の方は、お父さんが小さい頃に砂場で砂鉄集めするのが好きで。それで大学院で磁石とかの研究をしたって言ってたと思うよ。今もそうなんだけど、お父さんって好きなものにすぐ夢中になっちゃう人だから」
「たまたま好きでやっていた研究成果があった。これまでずっと眠っていたけど、今になって最先端技術として日の目を浴びたわけだ」
これはレアアースの供給不安がなければ、本来は必要のない技術だ。
だからレアアースが戦略物資となった最近になるまでは、誰も見向きもしなかったのだ。
桃花のお父さんも研究当時はあくまで磁力の制御に興味があっただけで、それがまさかレアアースの代替技術に使われるなんて思ってもいなかっただろう。
そしてダーダネルス電機は何も知らない桃花のお父さんに「この真実」を告げることなく、町工場を買収する名目でこの最先端特許を、はした金で我が物にしようと画策していたのだ。
だからエリート社員の黒田が何度も足を運んでいた。
この特許を手に入れるために。
いや順番が少し違うか。
おそらく黒田は200万ある特許からこの使われていないが特大の可能性を秘めた特許を見つけ出し、これを手中に収めることでダーダネルス電機の中で一気にのし上がろうと画策しているのだ。
黒田が「俺は将来の社長だ」だのなんだの言っていたのを俺は思い出す。
そのやり方がいい悪いはいったん別にすれば、黒田は本当に優秀なエリート社員なのだろう。
それはさておき。
ついに全てが一本の糸でつながったぞ。
そしてそれと同時に、これほどの大きな「果実」なら、父さんを説得できるはずだと俺は確信を抱く。
なにせレアアース代替技術は国策事業の一つ。
ライオネル・グループも当然のように参入しているし、他社としのぎを削っている。
父さんがこの話に乗ってこないはずがない。
ライオネル・グループの後ろ盾さえあれば、この町工場がダーダネルス電機に圧力をかけられることもなくなる。
いかにダーダネルス電機が大企業でも、ライオネル・グループの前では借りてきた猫に等しいからだ。
「すぐに桃花のお父さんにこのことを説明しよう」
「だねっ!」
俺は桃花のお父さんにこの特許の持つ特大の価値を余すことなく説明し、この後のことを俺に一任してもらう約束を取り付けた。
ここまでくれば話は早い。
俺は俺の持つ最強にして絶対の武器――親ガチャSSRを使うことを決めた。
俺は世話役の鹿島さんに連絡を取ると、父さんと会う約束をなるはやで取り付けてもらった。
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