第47話 桃花パパとご対面(2)
もちろん桃花のお父さんは、ライオネル・グループでもなく、父さんでもなく、俺を見ているんだろう。
だがこれまでの経験が俺にそう思わせてしまうのだ。
「ですがいくらなんでも、無利子・無担保で5000万円ものご融資をいただくというのは――」
「融資という形にしたのは課税対象にならないようにってだけで、実質は贈与と思っていただいて構いません。なので返す必要はありません。とはいえ年に1万円でも返済実績があった方が、税務署が余計な口出ししにくいでしょうけどね」
なにせダーダネルス電機ほどの大企業が欲しがる町工場だ。
他の誰かが融資したっておかしくはない。
「ですが――」
申し訳なさそうな顔で、なおも言葉を続けようとする桃花のお父さんの言葉を遮るように――少し失礼なのは承知で――俺は言った。
「この際だから正直に言います。俺は見ず知らずの町工場を助けたんじゃなくて、クラスメイトの桃花さんを助けたくてやったんです。だからこれは全部、俺のエゴであって、桃花さんのお父さんが気に病む必要なんて――」
俺がさらに説明を続けようとしたところで、ここまで俺たちのやり取りを静かに眺めていた桃花が、突然プッと噴き出した。
「ちょっとちょっと正道くん。さっきから桃花さん桃花さんって、なに? お父さんの前だからってカッコつけなくてもいいんだよ? お父さんも妙に他人行儀だし。もっと普通に話そうよー?」
笑いながら茶化すように言ってくる。
「カッコつけてるわけじゃないよ。これは目上の人に対する礼儀だ」
「桃花、お金を融資してくれるということは、とても重い意味を持つことなんだよ」
「そうかもだけどー。でもわたしのお父さんなんだから、正道くんにとってもお義父さんみたいなもんでしょ? な、なんちゃって!? えへー♪」
「……なに言ってんだ? や、意味がちょっとわからないんだが?」
「べ、別に何も言ってないですぅ! ふーんだ!」
「なにキレてんだよ……?」
桃花がぷくーと顔を膨らませる。
わけのわからないことを言っておいて逆ギレする桃花に、俺は小さく肩をすくめた。
しかし桃花が茶々を入れてくれたおかげで、硬かった空気が一気に緩む。
「桃花とは仲が良いようですね」
「はい、とても仲良くさせてもらっています」
家事やらなんやらしてもらってるしな。
桃花には本当に良くしてもらっている。
「桃花と仲良くしていただいて、ありがとうございます」
そこには金貸しにへりくだる事業主ではなく、娘想いの優しい父親の顔があった。
「こちらこそ高校でも人気者の桃花さん――桃花と仲良くできて、毎日楽しく過ごせています」
だから俺も思い切って「桃花さん」ではなく、いつものように桃花と呼び捨てる。
堅苦しい話は終わりにしようとい、俺なりの意思表示だ。
「この子は昔から一人で抱え込みやすくて。今回のことでもかなり気を使わせてしまいました。もし獅童くんが何か桃花のことで気が付いたら、少しだけ気にかけてやってくれると親としては嬉しいです」
「わかりました。こう見えて気は利く方なんです」
俺がうなずくと、
「人気者だなんてそんなぁ~」
にぱーとまんざらでもなさそうに桃花が笑う。
そんな桃花に微苦笑すると、俺はそろそろ前置きはいいだろうと判断して、今日の本題を切り出した。




