第44話 新たな問題
とまぁ久しぶりに帰った実家で、そんなことがあったのだが。
放課後に桃花と遊んだり、俺のタワマンで家事をしてもらったりして、一緒に帰るときにクラスメイトから冷やかされる。
桃花とのそんな友達以上の関係がこのままあと数ヶ月は続く――逆に言えば数カ月後にはこの関係は終わってしまう。
そのことを時々さみしく感じながらも、俺は今この瞬間を楽しんでいたのだが。
俺はここ数日の桃花の様子に、微妙な違和感を覚えていた。
何がどうってことはないのだが、時折、桃花の意識が違うところに向いているように感じられるのだ。
2,3日様子を見たもののそれが変わることはなく。
いつものように桃花が俺のタワマンに家事をしに来てくれた時に、俺は桃花に尋ねた。
「桃花、最近どうだ?」
「え、別に? 何もないけど?」
桃花は知らんぷりをしたが、俺もバカではない。
そもそも本当に何もないのなら、「何もない」ではなく「何の話?」とでも答えるべきだ。
俺の疑念は確信へと変わる。
「最近上の空が多いだろ?」
「そ、そんなことないし」
「そんなことあるさ。いつも一緒にいるんだから、それくらいわかる。それに桃花は隠し事をする時に、右の口元が少し上がるからな。今もそうだ」
俺の言葉に桃花は慌てたような口元を隠すように抑えかけて――、
「……今の、ウソでしょ」
不満げに頬を膨らませながらジト目で言った。
「ウソじゃない。カマをかけただけだよ」
しれっと答えると桃花がふくれっ面を向けてくる。
「うう〜! ああ言えばこう言う〜!」
「ものは言いようってヤツだな。そんなことより何かあったんだろ? 水臭いな、話してくれよ?」
「ぶー……!」
「怒った振りして誤魔化そうったって無駄だからな?」
「別にそんなんじゃ……」
図星を指されたからか、桃花の語尾は力なく消えていく。
「もし桃花に悩みがあるなら聞いてあげたいんだよ。話すだけでも結構、気は楽になるもんだぞ? な、話してくれないか?」
「……」
俺は根気強く何度も丁寧に言葉を紡いでゆく。
桃花が1人で抱え込む性格なのは、実家の5000万円の借金のことで橋の上で思い悩んでいたのを見れば嫌でもわかる。
だから少し無理めにでも聞いてあげようとアクションをかけるのが、今の俺のなすべきことだ。
「せっかく仲良くなったんだしさ。桃花が困っているなら、俺は手助けをしたいんだ。もちろん俺にできることならだし、桃花が望めばなんだけど」
「うん……」
「無理強いはしない。だけど聞かせてもらえたら俺は嬉しいな」
そして最後に自分の希望を伝えると、俺はそこで口を閉じ、桃花が話してくれるのを待った。
これ以上は本当に無理強いになってしまうから。
「無理め」と「無理強い」は決定的に違う。
俺の気持ちは全部伝えた。
あとは桃花の判断に委ねたい。
優しい笑みをことさらに意識しながら桃花を見つめていると、しばらくして桃花は苦笑しながら口を開いた。
「もぅ、正道くんって本当にお人好しだよね。しかも言うこと言ったらジッと静かに見つめてきてさー。そんな風にお願いされたら、話さないわけにいかないじゃん」
「話す気になってくれて、ありがとう桃花。じゃあ早速だけど、何があったかを聞かせてもらえるか?」
俺に促された桃花が、
「うん、実はね――」
今置かれている状況を話し始めた。
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